米ディズニーは現地時間の4月13日、「ディズニールック」と呼ばれるテーマパークで働く従業員(キャスト)の身だしなみに関する規定を緩和することを発表した。
ダイバーシティやインクルージョンを推進する取り組みの一環で、緩和した後は一定のルールの下でタトゥーを許可し、好みの髪型にすることやアクセサリーの着用なども部分的に認める。
一方、米と同様に、身だしなみに明確な規定を定めている日本の東京ディズニーリゾート。アメリカの発表に呼応する形で、今後の対応に変化はあるのか。運営するオリエンタルランドの担当者に聞いた。
キャストの身だしなみ、海外ではどうなっている?米・ディズニーの状況と変更点
まずアメリカの状況から見ていく。米ディズニーのテーマパーク部門のジョシュ・ダマロ会長は公式ブログで、今回の従業員の身だしなみの規定の変更について、以下のように綴っている。
私たちの新しいアプローチは、ジェンダーインクルーシブな髪型、ジュエリーやネイル、衣装となるコスチュームの選択などに関連したパーソナルな表現の形という観点に、より大きな柔軟性をもたらすものです。加えて、適切に見えるものであればタトゥーも許可します。
私たちはこれからも、従来の規定を現代の職場に相応しい内容に改めるだけでなく、キャストのメンバーが、職場において自身がバックグラウンドとして持っている文化や個性をさらに表現できるようアップデートします。
米ディズニーの規定改定について、アメリカのオーランド・センチネル紙のWeb版は、「例えば、サイズに制限はあるものの、従業員は首から下にタトゥーを入れることができ、片耳に1つではなく2つの小さなピアスをつけることが許される」などと報じている。
米ディズニーでは2019年から、世界で働く従業員に積極的にヒアリングを行うなど組織として「インクルージョン」に注力してきた。
アメリカの経済誌・Forbesによれば、米ディズニーは2019年10月にもディズニールックの規定を一部変更していて、長さが1インチまでの髭やあご髭は許可し、1つのブレスレットやネックレスを身につけることもすでに認めていたという。
今回の変更は、カリフォルニア州のディズニーランド・リゾートとフロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールドの従業員に適用されるという。
アメリカでの規定変更に、ネット上では「日本はどうなるのか」「多様性が尊重される中、日本も規定が緩和されるべきでは」などと声が上がっていた。
日本の場合は...?
では、日本のディズニーのテーマパークでの場合はどうか。現状を見ていく。
東京ディズニーリゾート・キャスティングセンターの公式サイトによると、同リゾートでは、「あらゆるゲスト(お客様)に好感をもっていただける身だしなみを保つことを目的とした『ディズニールック』という基準を設けています」として、従業員の身だしなみに関し明確な規定を設けている。
男女共にポイントとなっているのは、「清潔感」があるかどうかだ。男女共通の規定としては「髪は肌、瞳、眉とバランスのとれた色」とするよう記述がある。
染髪は厳密には禁止されていないが、「髪を染める場合は、極端な色(明るすぎる茶色など)、ムラのある不揃いな色にすることなく、自然な仕上がりにしましょう。ドライヤーや日焼けなどで髪が傷んでムラになっている場合も同様に手入れしてください」としている。
米ディズニーで今回条件付きで認められたタトゥーについては、「いれずみ(タトゥー)をすることはできません」として、日本では禁止事項となっている。
これに加え女性の場合は、例えば、ネイルに関して「指の先端より3mmを超えない長さ」で「マニキュアやジェルネイルをする場合は、肌の色に近いものを選びます。パール入りやラメが入ったもの、アートやグラデーションは、色やデザインに関わらず一切認められません」と規定がある。
イヤリングやピアスは、「服装にあった色で直径2cm以内、耳に固定されるシンプルなデザインのものを1組に限り耳たぶの下方に着用できます」とある。
一方、男性では例えば、ひげについて「常にきれいに剃っておいてください。口ひげ、あごひげにかかわらず、ひげを伸ばすことは一切認められません」と記載があり、イヤリングやピアスについては女性と異なり、勤務中の着用はできない。
この日本の「ディズニールック」について、ネット上では「少々厳しすぎるのではという印象がある」「時代に合わなくなっているのでは」という声が上がる一方、「パークに行くたびに爽やかで誠実そうなキャストさんの身だしなみは印象が良い」「厳しい身だしなみがディズニーの世界観には合っていると思う」などの声もあり、賛否が分かれている。
運営会社オリエンタルランドの回答は?
ハフポスト日本版は4月15日、ディズニールックについて、同リゾートを運営するオリエンタルランドの担当者を取材した。
そもそも、日本での従業員(キャスト)の身だしなみの規定は、東京ディズニーランドが開園した1983年から続いているものだという。
担当者の話によると、規定については「同社の人事部で策定しているが、テーマパークの運営に関わることですので、米・ディズニー社と連携を取りながら、その国の文化や社会状況などを元に、それぞれ(の国)で決めております」という。
今後の改定の可能性については、「現在のところ、その予定はございません」とした上で、「ただし、これは身だしなみに限ったことではございませんが、ジェンダーに限らず、あらゆる社会の状況を鑑みた上で様々な判断を行なっております」と回答した。
例えば、同リゾートでは3月18日から、園内アナウンスの「Ladies and Gentlemen, Boys and Girls」という文言を「Hello Everyone」などに変更している。変更の理由は「全てのゲストのみなさまに継続的に、より気持ちよくパークでお過ごし頂くため」という。
「外国籍」の従業員への対応を尋ねると....
しかし、ダイバーシティやインクルージョンの観点から気になるのは、外国籍の従業員への対応だ。日本で定められた身だしなみ規定をそのまま彼らに当てはめてしまうと、止むを得ず逸脱してしまうケースも出てくる可能性もある。
この点について、「パークには外国籍のキャストもいると思うが、彼らにも同様の規定を遵守することを課しているのか、例えば、規定の例外措置はあるのか」と質問すると、別の担当者は「具体的な事は一切申し上げられません」と回答し、明言を避けた。
同リゾートでは、「日本に入国してから1年以上が経過していること」などを条件に外国籍の従業員の募集を実施している。
4月15日で東京ディズニーランドは38周年を迎えた。ウォルト・ディズニーは「ディズニーランドは永遠に完成しない」との言葉を残している。もちろん、それぞれの国の文化や社会の状況に合わせた適用が求められるが、時代に応じてより多様性を尊重するための変化は、今後も必要になるのではないだろうか。