オーストラリアのシンクタンクに「中国のウイグル族の強制労働に関与している」と指摘された日本企業14社について、国際人権団体などが、実際に強制労働などがあったかどうか質問した結果が公表され、回答した企業の全てが否定した。
第三者による監査を実施した企業から、質問に答えないケースまであり、団体は「説明責任を果たすべきだ」などと勧告している。
■14社の回答は...
日本企業14社に質問したのは国際人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」と日本ウイグル協会。2021年4月8日に記者会見を開いて結果を公表した。
元になったのは、オーストラリアのシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」が2020年3月に公表した「売り物のウイグル族(Uyghurs For Sale)」という調査報告。ウイグル族が新疆ウイグル自治区から中国国内の他の都市に移動させられ、労働に従事していたなどと指摘した。
この中で、日本企業14社を含む83のグローバル企業がサプライチェーンなどで関与しているとされていた。
会見の発表によると、質問に回答した全ての企業が強制労働はなかったとした。このうち▽日立製作所▽ソニー▽TDK▽東芝▽京セラ▽良品計画は第三者による監査などを実施した。取引が存在しないか、指摘された中国企業の親会社との取引が見つかるなどしたという。京セラは取引停止も含めて検討すると回答した。
また、▽三菱電機▽ミツミ電機▽シャープ▽ファーストリテイリングはASPIに指摘されたサプライヤーとの取引自体がなかったと回答したという。
▽任天堂▽ジャパンディスプレイも調査を実施したが、団体は手法が明確ではないと評価している。
▽しまむらはサプライヤーに確認をした。▽パナソニックは回答しなかった。
日本ウイグル協会のレテプ・アフメット副会長は「第三者による監査の実施はかなり前向きに取り組んで頂いている印象です。一方で共産党政権下では、自由な社会で行われる透明性のある監査はできません」と指摘した。また回答がなかったパナソニックは「絶望的」と厳しく批判した。
一方、情報が統制されている中国では強制労働がされているか調べるのは難しいという事情もある。東京大学大学院の阿古智子教授(現代中国研究)は「企業は調査がなかなかできない現実もあると思います」と理解を示した上で「現地の地方政府や日本政府を通じて、しっかり調査させて欲しいと粘り強く働きかけをして欲しい。それ自体が圧力になっていきます」と訴えかけた。
「ヒューマンライツ・ナウ」と日本ウイグル協会は日本企業14社に対して、▽強制労働が指摘された中国国内の企業との取引関係を明らかにし、説明責任を果たす▽強制労働が明確に否定できない限り取引を断ち切る▽是正措置や再発防止策を策定し公表する、の3点を勧告している。