川崎市立の一部の小学校で2021年3月、体育の時間に「肌着の着用を禁止」とする指導が行われていることに対し多くの批判が寄せられていた問題で、調査を行なった小学校114校のうち、34校でそのような指導が行われていたことが分かった。
同市の教育委員会が4月5日、ハフポスト日本版の取材に明らかにした。
「肌着の着用禁止」。そもそも、なぜ発覚?
児童やその保護者などから疑問や批判の声があがっていた「肌着の着用禁止」。
発端は、3月9日に開かれた川崎市議会の予算審査特別委員会の予算審議で山田瑛理議員が「多くの子どもが『嫌』と言っている」と言及したことだった。
市教委側は肌着着用禁止の理由について「運動後の汗などによって、体を冷やさない等の児童の健康面や衛生管理面の配慮から、主に低学年の児童に対して肌着を着用しないよう指導している学校が一部あることを確認している」と指導の事実を認めた。
これを受け山田議員は「健康面や衛生管理面の配慮でしたら、例えば体育後は新しい肌着に着替えるといった他の指導の仕方がある。肌着を脱がすことが唯一の指導方法だとしたら間違っていると思います。市内一律でやめていただきたい」と小田嶋満教育長に要望。
市教委側は15日、ハフポスト日本版の取材に対し「3月9日の市議会での質問と要望を踏まえ、12日から川崎市内の全小学校を対象とした現状調査を開始しました。各学校の状況を把握した上で、新年度に向けた見直しを行なっていきます」と回答していた。
この問題について、川崎市内の小学校の児童の保護者からは「時代にそぐわない」「逆に不衛生ではないか。明らかに間違った指導だと思う」「教育委員会を継続的に取材して欲しい」などとハフポスト日本版編集部にも意見が相次いで寄せられた。
川崎市教委「強制的な指導行ってない」としながらも...
3月22日には川崎市教委が「市立小学校における体操服に関する指導について」と題し、公式サイトで見解を発表。以下のように説明していた。
市立小学校における体操服に関する指導につきましては、運動後に汗で濡れたままの肌着を着用することによる健康面、衛生面への配慮から、主に低学年において体操服の下に肌着を着用しないよう声かけ等の指導を行っている学校があること、また、これらの学校においても、季節や児童の状況に応じて弾力的な運用を行っておりまして、肌着の着用禁止や強制的な指導などは行っていないことにつきましてもあわせて確認したところです。
今後とも、各学校におきましては、「肌着の着用を禁止している」などと児童や保護者の皆様に心配や誤解などを抱かせないよう、児童の気持ちに十分配慮した指導を行うとともに、健康面、衛生面への配慮につきましては、着替え用の肌着等の準備や速乾性の肌着の着用を推奨する等の柔軟な指導に努めてまいります。
発表文では、主に低学年で体操服の下に肌着を着用しないよう声かけ等の指導が行われていたことを改めて認めた上で、「強制的な指導などは行っていない」としていた。
114校中34校で“事実上”の肌着禁止だった。市教委の受け止め、対応に変化は?
新年度に入った4月、状況はどう変わったのか。ハフポスト日本版は4月5日、川崎市教委・学校教育部健康教育課を再び取材した。
市教委の担当者は「川崎市立の小学校を対象に調査を実施した結果、114校中34校で健康面・衛生面への配慮から、体操服の下に肌着を着用しないよう声かけ等の指導を行っている学校がありました」と調査結果を明らかにした。
川崎市では、約3割の小学校で肌着を着用しないよう指導が実際に行われていたことになる。
この調査結果を受けた新年度からの対応の変化については、「現在は各学校側から肌着の着替え等をご準備頂くようにするよう、周知を進めています」とした。
体育の授業時の「肌着着用禁止」は、川崎市だけの問題ではない。ハフポスト日本版編集部に匿名で情報を寄せた保護者からは、東京都の一部の学校や関西の一部(兵庫県、三重県)でも、同様の対応となっているか、過去になっていたとの報告や意見があった。
その保護者らに学校側に疑問を伝えられない理由について聞くと、「我が子の内申に影響が出るのではないかと不安になり、親である私から働きかけが出来ない」「モンスターペアレントと思われたくない」などと切実な声もあった。
九州でも、長崎県内の少なくとも37の小学校で、肌着などの着用を禁じる指導が行われていることが分かったとNHKニュースが4月1日に報じていた。
時代にそぐわず、意義が不明瞭な「ブラック校則」と言われる校則は、各地で見られている。対応の改善が求められる。