薬物問題を抱える家族のうち、8割弱が逮捕や補導が問題解決に効果がなかったと感じているという結果が、関西薬物依存症家族の会のアンケートで明らかになった。
このアンケートは、厚生労働省が大麻取締法に「使用罪」を創設するかを含めた薬物規制の検討会をスタートさせたことを受け、3月23日〜26日に実施された。
なんらかの支援に繋がっている、薬物問題を抱えた家族169人を対象に、ウェブ上で答えてもらった。
依存症の当事者が逮捕、補導、収監された経験があると回答した家族は140人。そのうち、薬物問題の解決に効果があったかを尋ねると、「効果がなかった」が85人、「むしろ問題が悪化した」が25人で、依存症家族の約78%が効果を感じていないという結果になった。
「効果があった」と答えたのは17人で、全体の1割強だった。
「その他」と答えた10人は、次のような理由を挙げた。
・「逮捕後にリハビリ施設につなげる段取りをしたため、とても大変だった」
・「逮捕で家族は最悪の心境ではあったが少年院で出会った教官や本で当事者が回復施設などを知り、その回復施設から家族の相談や回復に結びつく事が出来た」
・「逮捕というよりその後医療に繋がったことで効果があった」
当事者の逮捕、補導、収監による家族の影響について(複数回答可)は、「うつ状態になった」(100人)、「人と会えなくなった」(93人)、「家庭内で争いが増えた」(78人)の順で多かった。
薬物依存症家族の会は、当事者の治療・回復を支援する立場から「薬物問題を刑罰によって解決しようとすることは当事者の回復や社会復帰を阻害するだけでなく、家族にも多大な影響を及ぼします」と呼びかけている。
大麻をめぐっては、欧米を中心とする「非犯罪化」の流れや、薬物規制の条約で大麻を「特に危険」とする分類から削除する国連勧告が可決された。
こうした潮流に逆行するとして、薬物依存症家族の会は大麻使用罪の創設に反対し、「偏見と排除を強めないで」と呼びかけている。
検討会の内容は?
1月にスタートした厚労省の検討会は、3月末で4回目を迎える。
「大麻使用罪」創設を含めた薬物規制のあり方ついて、今夏をめどに結論をまとめるという。
検討会のメンバーは、刑事司法や依存症治療の専門家、依存症の回復治療施設「川崎ダルク」支援会の理事長ら。
第2回検討会の配布資料の中には、大麻所持で逮捕された人を対象に「大麻使用罪」に対する認識や、使用罪がないことと使用との関係についての調査結果が記載されている。
2019年10月1日〜11月30日の期間に大麻の所持で検挙された人に聞き取りし、対象者は631人。そのうち使用罪がないことを知っていたのが472人。使用罪がないと知っていたことが、「使用のきっかけとなった」と答えたのが27人(5.7%)、「使用に対するハードルが下がった」は72人(15.3%)だった。
第2回検討会で、この点について次のような声が出た。
「使った人の中で大麻使用罪がないことを知っているという人は結構多いなと。一方で、使用罪がないことが使う理由になったというのは5%で、ハードルが下がったという人が15%この計2割という数字をどう見るか。意外と低いなというのが私の聞いたところの第一感でしたので、この辺をどのように考えるべきかを今後皆様と議論させて頂ければと思っています」
使用罪創設が必要かという議論の前提として「刑事手続に乗った場合、そこからどのように処遇とか教育とか社会復帰のほうに向けていくのかということをトータルして考えた上」といった意見も交わされた。
また「大麻を使うことを罪として罰するということであれば、治療をセットで議論しないといけないなと強く思っています」といった意見も出た。