渡辺直美さん、MIKIKOさんの演出案を「本当にかっこよかった」と語っていた。 “お蔵入り”報道めぐり声明も

MIKIKOさんが開閉会式の演出をめぐる報道を受け、声明を発表。出演予定だった渡辺直美さんは以前、「みんなに見てもらいたかったし、私も頑張ってやりたかった」と語っていました。
Open Image Modal
渡辺直美さん、MIKIKOさん
時事通信社

東京オリンピックの開閉会式の執行責任者を辞任した振付師のMIKIKOさんが3月26日、自身のTwitterで声明を発表し、辞任に至った経緯について説明した。開会式の演出をめぐっては、MIKIKOさんが演出チームから“排除”されたなどと週刊文春が報じていた

 

MIKIKOさんが声明 「道義にも反していると感じました」

MIKIKOさんは、2019年6月からオリンピック開閉会式演出の「執行責任者」を担当していた。

MIKIKOさんは声明で、2020年3月の大会延期決定前まで、「500名近くのスタッフ、キャスト、更にその先にいらっしゃる直接お会いすることは出来なかった数多くの関係者の方々の才能と時間をお預かりしておりました」と説明。その中にはタレントの渡辺直美さんも含まれていた。

しかし、延期が決まったことで、開閉会式の準備も「一時停止」すると告げられ、再開の際はMIKIKOさんに連絡がいくと伝えられたという。

MIKIKOさんは、「延期から約6ヶ月後の去年の10月、今後について皆様に何もご連絡できていない中で、これ以上お待たせするわけにはいかないと思い悩み、勇気を出して私から電通に問い合わせを入れました」と説明。そして、その際にすでに別の演出家がアサインされ、新しい企画を国際オリンピック委員会(IOC)にプレゼン済みだということを知ったという。

「11月になって新しい企画、新しい演出家のもとで改めてオファーを頂きましたが、その企画に一から関わっていない以上、責任が取れるものではありませんでした」

MIKIKOさんは自ら辞意を固めた理由について、こう明かしている。

「また、これまでの企画案に尽力してきていただいた皆様との関係で道義にも反していると感じました。世界中がコロナの恐怖と悲しみに包まれている中で開催されるオリパラのセレモニーのあり方を考えた時に、このような疑問を持ちながら参加するわけにはいかない、と悩み抜いた上で辞任の決断に至りました」

 

「何とか踏み止まってきましたが、叶いませんでした」

声明では、「延期前まで精魂込めてセレモニーに向き合ってきた方々としっかりコミュニケーションをとり、無駄のない前向きな新しい企画を全員の力を合わせて一緒に作りたかったです」と、後悔もにじませた。

MIKIKOさんは、2016年のリオオリンピック閉会式での引き継ぎ式の演出にも関わった。

「最後まで成し遂げたいと何とか踏み止まってきましたが、叶いませんでした。 この思いは今後の作品で形にしてお返しします」とつづり、「私たち世代が未来に残さないといけないものは何なのかを真剣に考えます」とコメントした。

その上で、「個人として、組織の一員として、あるいは組織そのものとして、それぞれのお立場での正義があるのだと思います」と言及。

「もうこれ以上の発言はせず、目の前の一つ一つの仕事に心を込めて向き合っていくことが、私にとっての正義です」とつづり、「ご理解頂けると幸いです」と呼びかけた。

 

佐々木さんは「白紙化した事実ない」と報道否定

週刊文春は、大会延期が決まりクリエイティブディレクターの佐々木宏さんが新型コロナの「緊急対策リーダー」に指名されたことをきっかけに、MIKIKOさんの企画案を白紙にしたと報道。MIKIKOさんは演出チームから“排除”されたと格好となったと伝えている。

佐々木さんは2020年12月、野村萬斎さん率いる演出チームの解散に伴い演出の総合統括に就任した。しかし3月18日、タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような企画を提案していた問題を受けて総合統括を辞任した。

辞任を発表する声明で佐々木さんは、「MIKIKOさんを中⼼に考えられていた開会式プランは、私が⽩紙化した事実はない」文春報道の一部を否定している

また大会組織委はMIKIKOさんが辞任した理由について、「自分が引き続きやっていくという考え方について、納得をされない何かがあるという趣旨だったと思います」などと説明していた

 

渡辺直美さん、生配信でMIKIKOさんの演出について語っていた

MIKIKOさんが中心となって進めていた演出は、「お蔵入り」となってしまった。

キャストとして出演予定だった渡辺直美さんは、3月19日に行ったYouTube生配信で、MIKIKOさんの企画案について「本当にかっこよかった」と話していた。

▼動画開始から17分ごろ

 

渡辺さんによると、2019年の年末に開会式の出演オファーがあり、MIKIKOさんを含む演出チームと打ち合わせをした。演出プランを聞いた時は、鳥肌が立ったという。

「開会式の演出プランみたいなのを聞いたのね。それを聞いている時に、めちゃくちゃ鳥肌。もうかっこよすぎて。まじイケてるし、これに私参加していいんですか?みたいな。めちゃくちゃありがたいです。みんながすごく熱くて最高の演出だったんだよね。それに参加できるというのも嬉しかった」

しかし、大会延期を受け、開会式の演出企画は中断に。その後、渡辺さんが動物のブタに扮する企画案がボツになったという報道が出たことで、困惑したと振り返っている。

「今回の報道で、ああいう私をブタに見立ててやるっていう報道がきた時に、あれ、みたいな。私が最初に聞いていた話と違うなと思ったし、多分きっと私の知らないところでいろんな事が起きて、そういう案が出てきてみんなが『それはナシでしょ』となった。これも私は一つの救いだなと思う。けど、どうしてこんな風になっちゃったのかな」

その上で、MIKIKOさんの演出プランを知っていたからこそ、海外で一連の問題が報じられていることについて「すごく悔しいなと思った」とも語った。

「海外にもこういうニュースが流れてしまって、私はすごく悔しいなと思ったんだよね。もともと聞いていた演出が本当にかっこよかったから。それじゃないもの、しかも却下されたものがこうやって表に出て。これが日本の全てって思われたくないなっていうのがすごく率直な私の意見で。ああいう風な演出はありえないってなったものが出てしまって、ニュースをちゃんと見ない人は日本は最初からそういう演出をしようとしていたんだとなってしまうのが、私の中ではすごくショックだなと思った。元々の演出を知っていたぶん」

「本当にかっこよかったからね。みんなに見てもらいたかったし、私も頑張ってやりたかったなというのはすごいあったかな。それの悔しさの方が結構今は大きい」

ネット上では、演出チームをめぐる一連の騒動を受けて懐疑的な意見や、「MIKIKOさんの演出を見たかった」と嘆く声が相次いで投稿されている。

 

MIKIKOさんの声明全文

MIKIKOさんが発表した声明全文は以下の通り。

2020年3月24日、新型コロナウイルスの感染拡大により、東京オリンピック・パラリンピックの1年程度の延期が決定しました。

延期前、私はオリンピック開閉会式の執行責任者として、500名近くのスタッフ、キャスト、更にその先にいらっしゃる直接お会いすることは出来なかった数多くの関係者の方々の才能と時間をお預かりしておりました。

その中には渡辺直美さんもいらっしゃいました。

開閉会式の準備も一時停止が告げられ、再開の際は連絡をいただけるとのことでした。

延期から約6ヶ月後の去年の10月、今後について皆様に何もご連絡できていない中で、これ以上お待たせするわけにはいかないと思い悩み、勇気を出して私から電通に問い合わせを入れました。その際、すでに別の演出家がアサインされ、新しい企画をIOCにプレゼン済みだということを知りました。11月になって新しい企画、新しい演出家のもとで改めてオファーを頂きましたが、その企画に一から関わっていない以上、責任が取れるものではありませんでした。形は変わったとしても従前の制作物で活かせる部分は有効活用すべきだと考えておりました。また、これまでの企画案に尽力してきていただいた皆様との関係で道義にも反していると感じました。世界中がコロナの恐怖と悲しみに包まれている中で開催されるオリパラのセレモニーのあり方を考えた時に、このような疑問を持ちながら参加するわけにはいかない、と悩み抜いた上で辞任の決断に至りました。

 

「もし時間が巻き戻せるなら、このコロナ禍のセレモニーで、何を伝えるのか、何が出来るのかを全員で話したかった」

オリンピック・パラリンピックのプロジェクトをサポートして下さっていたある尊敬するスタッフの方の言葉です。

延期前まで精魂込めてセレモニーに向き合ってきた方々としっかりコミュニケーションをとり、無駄のない前向きな新しい企画を全員の力を合わせて一緒に作りたかったです。

 

実際に手を動かして下さっていたスタッフ、キャストがしっかり輝いて、評価されるセレモニーにしたい。

4年に一度のこの舞台の為に、命を燃やしてこられた世界中のアスリートの方々を激励するセレモニーにしたい。

世界中からここ東京に集える奇跡を讃え合いたい。

その思いを胸に、2016年のリオ閉会式からこの案件に関わってきた人間として、最後まで成し遂げたいと何とか踏み止まってきまし たが、叶いませんでした。

この思いは今後の作品で形にしてお返しします。

私たち世代が未来に残さないといけないものは何なのかを真剣に考えます。

伝えたい人に届く方法を自分なりに前向きに探し続けて参ります。

 

個人として、組織の一員として、あるいは組織そのものとして、それぞれのお立場での正義があるのだと思います。

もうこれ以上の発言はせず、目の前の一つ一つの仕事に心を込めて向き合っていくことが、私にとっての正義です。

ご理解頂けると幸いです。

 

もし東京オリンピック・パラリンピックが開催されるのであれば、日本が世界に誇れる、子どもたちに誇れる、開催できた全てのことや全ての人に、感謝を届けるセレモニーになって欲しいと心から願います。

そして、国籍、性別、年齢、容姿に関係なくそれぞれが持って生まれた個性を尊重し喜び合える世界になることを祈っています。

 

なお、体調に関してはおかげさまで快方に向かっております。

ご心配の声を沢山頂いたのにも関わらず、すぐにコメントが出せず申し訳ございませんでした。

 

まだまだ寒暖差の激しい日々が続きますが、皆様何卒ご自愛ください。

                                                2021年3月26日 MIKIKO