同性カップルの関係を公的に認めるパートナーシップ制度の導入を東京都に求める要望書が3月22日に提出され、小池百合子都知事が受け取った。
提出をしたのは「東京都にパートナーシップを求める会」発起人の3人。意見交換の場が設けられ、都民ファーストの会の都議員らも参加した。
同団体代表の山本そよかさんは付き合って10年となる同性パートナーと都内で暮らしている。コロナ禍において、当事者として不安を感じていることを小池都知事に伝えた。
「入院や手術など、病院で万が一の状況になった時に、人生で一番寄り添いたい相手と寄り添えないかもしれないという不安があります。制度としてそれが守られていない」と話した。
同性パートナーが医療機関で家族として認められず、病状を伝えられないといった事態は起きている。関係を証明する制度がないことで緊急時にパートナーと寄り添える保障もないことは、当事者らにとって大きな不安だ。
松中権さんは、コロナ禍において安全な人や場所と繋がりにくくなったことでLGBTQの若者が困難な状況にあることや、同性パートナーのいる社員の環境整備に独自で取り組んでいる企業にもできることが限られていると話した。
「パートナーシップ制度というのは、LGBTQユースにとって未来への希望、そしてポジティブなニュースになります」
「(企業で)全ての社員が安心して働ける場所としてカバーできないことがある。東京都としてサポートしてほしいという話をしました」
杉山文野さんは自身の家族を話をした。杉山さんはトランスジェンダー男性であることを公表していて、現在パートナーと、親友である松中さんの精子提供で生まれた子ども2児と暮らしている。
一方で、パートナーと戸籍上の性別が同性であるため公的に家族として認められていない。新型コロナウイルスの濃厚接触者になった際も、保健所やPCR検査を受けた病院で家族関係の説明が困難だったという。
「自分は家族の話をオープンにしていますが、実際にはオープンにしてない人の方がはるかに多い。パレードといったLGBTQイベントや、世論では盛り上がりを見せている一方で、当事者の実際の生活というのは課題が山積みだということを伝えました」
要望書を受け取った小池都知事は、東京都が取り組んでいる「3つのシティ」に含まれる「ダイバーシティ」を推進していくことや、調査などで当事者らの声を聞いていくこと、オリンピック憲章に基づく条例を制定しているなどと話したという。団体によると、同性パートナーシップの導入の実現をめぐる具体的な発言はなかった。
同団体はこの日、東京都にパートナーシップ制度を求める署名キャンペーンで集まった署名1万8077筆も提出。2021年3月に発足したキャンペーンは、現在も継続している。
また、同団体による東京都在住・在勤を対象としたアンケートでは、300人以上の約95%が「パートナーシップ制度が東京都に必要」と回答。万が一の時の不安や、関係を社会的に認められていない状況が苦しい、という声が集まっているという。
3月4日には東京議会に同内容の請願書を東京議会に提出した。公明党、都民ファーストの会、東京みらいの3会派から署名を得ており、都議会での付託を目指している。
同性パートナーシップ制度は2015年、東京都の渋谷区と世田谷区で初めて施行された。現在、都内の10の区や市で実現されている。
「自治体にパートナーシップ制度を求める会」によると2021年3月現在、同性パートナーシップ制度は全国79自治体、都道府県では大阪府、茨城県、群馬県で導入されている。