緊急避妊薬(アフターピル)の知識をすべての人に。啓発のためのクラファン、開始1日で100万円の支援集まる

「緊急避妊薬や予期せぬ妊娠に関する問題を女性の無知のせいと非難したり、自己責任とする社会を変えていきたい」。啓発活動のためのクラウドファンディングが始まっています。
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「緊急避妊薬(アフターピル)の知識をすべての人へ!」Ready Forより
緊急避妊薬(アフターピル)

避妊に失敗したり、性暴力を受けたりした際、72時間以内に服用することで妊娠の可能性を著しく下げる「緊急避妊薬」(アフターピル)。正しい知識をより多くの人に届けるため、啓発活動に支援を求めるクラウドファンディングが3月20日に始まった。

開始から1日で100万円以上の支援が集まり、反響が広がっている。

 

アフターピル、日本ではアクセスが困難

緊急避妊薬は、妊娠する可能性のある性行為から72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を防ぐことができる。性交後、早く飲むほど妊娠を避ける効果が高くなる。

世界約90カ国では薬局で入手できるが(ICECの公式サイトより)、日本ではアクセスの困難さがかねてより問題視されている。

緊急避妊薬を入手するには産婦人科などでの受診や処方箋が必要で、海外に比べて値段の相場が6000円から2万円と高い。

クラウドファンディング緊急避妊薬(アフターピル)の知識をすべての人へ!は、緊急避妊薬のアクセス改善を求める市民プロジェクトのメンバーが立ち上げたキャンペーンだ。

メンバーは、産婦人科の遠見才希子(えんみ さきこ)さん、性に関する正しい情報の啓発に取り組むNPO法人「ピルコン」理事長の染矢明日香(そめや あすか)さん、性に関する啓発を続ける「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子(ふくだ かずこ)さん。

3人は2020年6月、すべての女性たちが安心して緊急避妊薬にアクセスできる社会を目指す団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」を発足。同年10月には、薬局での販売を求める11万筆以上の署名と要望書を国に提出した

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(左上から)染矢明日香さん、福田和子さん、遠見才希子さん
「クラウドファンディング開始記念イベント!緊急避妊薬(アフターピル)の知識をすべての人へ!」より

 

目標は、すべての人にアフターピルの知識を届けること

クラウドファンディングは、緊急避妊薬のアクセス改善と啓発推進の一環として立ち上げた。

目的とするのは、「緊急避妊薬や性の健康についての情報をすべての人に届けること」

集まった支援金は、緊急避妊薬に関する情報などをわかりやすく伝えるリーフレットやマンガ、動画の制作、学校・医療機関などへの情報提供支援など、多様な啓発活動に充てられる。

メンバーの染矢さんによると、緊急避妊薬を必要とする当事者だけではなく、そのパートナーや薬剤師、学校の教員、支援者、保護者など、当事者を取り巻く周囲の人にも情報を届けていくことを目指すという。

「国が議論を進める中で、知識や性教育が足りないし、認知度が低いから(緊急避妊薬を)手に入りやすくするのは時期尚早だ、という意見がとても多かった。

情報提供や知識の普及というのはすごく大事になってくる。クラファンという形ではあるんですが、多くの方に関心を持ってほしいなと思っています」

クラウドファンディングの立ち上げを記念したイベントで、産婦人科の遠見さんはこう語っている。 

  

「知識が足りない」...薬局販売を阻む声。日本で啓発活動が必要な理由

緊急避妊薬のアクセス改善については、2017年以降、厚生労働省の検討会で議論がつづいてきた。

2019年7月には緊急避妊薬のオンライン診療が解禁となったが、3週間後の産婦人科の対面受診、薬剤師の面前内服などの要件がつけられた。

2020年12月に決定した第5次男女共同参画基本計画では、緊急避妊薬の薬局販売を検討する方針が盛り込まれた。しかし、2021年3月現在も、薬局販売について厚労省での議論は再開されていない。

アフターピルについての知識が足りない、性教育が足りていない、使用者が悪用・乱用するかもしれないーー。薬局販売をめぐっては、こうした懸念の声が根強く展開されている。

「緊急避妊薬や予期せぬ妊娠に関する問題を女性の無知のせいと非難したり、自己責任とする社会を変えていきたい」と染矢さんは語る。

「緊急避妊薬を薬局で安心して入手できるという、そう遠くない未来の実現のためにアクションの輪を広げていきたいと思います」

スウェーデンで公衆衛生について学んでいる福田和子さんは、スウェーデンの薬局で緊急避妊薬を見つけた時に衝撃を受けたという。「次の世代のために現状を変えなくてはいけない」と、クラウドファンディングへの参加を呼びかけた。

「妊娠が不安だけれど高くて(緊急避妊薬を)買えないという声をたくさん聞いてきた。日本にいるという理由だけでそれが実現できないのがすごく悔しくて、薬局で泣いた経験が忘れられません。そういう思いをこれ以上次の世代にしてほしくないですし、ここで変わることができるということを見せないと、女性のことは二の次だという社会が続いていってしまうと思います。ここで断ち切らないといけないという思いがすごくある」

 

1日で100万円の支援が集まる

クラウドファンディングが立ち上がると、1日で170人以上が参加、約110万円もの支援金が集まった。

染矢さんは、「応援コメントもたくさん寄せられていて、非常に励まされました」と語る。

「日本社会ってこうだから仕方ないよね、ではなくて声を上げていくことで少しずつ変わっていく。その希望を広げていくことができたらなと思っています」と話し、さらなる支援を呼びかけた。

実施期間は3月20日から5月10日まで。

3段階で目標金額を設けており、ファイナルゴールとして1200万円の支援金を集めることを目標としている。

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