日本時間3月15日の夜にノミネートが発表された第93回アカデミー賞。
韓国からアメリカに渡った移民一家を描いた映画『ミナリ』(3月19日日本公開)で主演を務めたスティーヴン・ユァンが、アジア系アメリカ人の俳優として初めて、主演男優賞にノミネートされた。
韓国にルーツを持つスティーヴン・ユァンは、人気ドラマ『ウォーキング・デッド』や、ポン・ジュノ監督の映画『オクジャ/okja』、作家・村上春樹の『納屋を焼く』を原作にした韓国映画『バーニング 劇場版』などに出演。
『ミナリ』での演技は、多くの批評家から称賛されている。今回のノミネートは、長いキャリアを持つユァンと、これまで、映画やアカデミー賞において過小評価されてきたアジア系アメリカ人の俳優の両方にとって、大きな前進となった。
これまで、アカデミー賞にノミネートされたアジア系の俳優はほんの一握りだ。最後にアジア系の俳優がノミネートされたのは2017年で、インドにルーツをもつデーヴ・パテールが、『LION/ライオン』で、助演男優賞にノミネートされた。主演男優賞を受賞したのは、1982年の『ガンジー』に出演した、インドにルーツを持つイギリスの俳優、ベン・キングズレーだけだ。
また、今回のアカデミー賞では、『サウンド・オブ・メタル』のリズ・アーメッドが、ムスリムとして初めて主演男優賞にノミネートされるという快挙も果たしている。
『ミナリ』の快進撃
『ミナリ』は、2021年のアカデミー賞で話題を集めている作品の一つで、全6部門の受賞候補になっている。
主演男優賞の他にも、『ミナリ』は作品賞や監督賞、脚本賞などに名を連ね、また助演女優賞に、韓国の俳優ユン・ヨジョンもノミネートされている。
1980年代に農業での成功を夢見て、アメリカ南部アーカンソー州に韓国から移住してきた一家を描いた『ミナリ』は、リー・アイザック・チョン監督の自伝的作品。
作品の多くが韓国語だという理由で、アカデミー賞の前哨戦であるゴールデン・グローブ賞ではメインである作品賞からは外され、外国語映画賞の候補となった。アメリカの監督・会社が制作し、韓国からの移民が主人公の映画を「外国語映画」だとする見方は、差別的ではないかと波紋を呼んだ。
前回2020年のアカデミー賞では、韓国映画『パラサイト』が作品賞に輝いた。今年もまた、韓国にルーツを持つ一家を描いた作品の受賞の行方に注目が集まっている。
この記事はハフポストUS版を翻訳・編集・加筆しています。