こども六法「やめてを言えない自分、悪いとは思わなくていい」。著者が答える、学校内トラブルの対処法

「どこからがいじめですか」「やり返したら犯罪?」ベストセラー『こども六法』の著者の山崎聡一郎さんが、学校生活のトラブルをめぐる子どもたちの疑問に答えました。
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オンライン授業をする山崎聡一郎さん
HuffPost Japan

「どこからがいじめですか?」

「親が叩いた場合も、犯罪になりますか」

「やられてやり返したら、どちらも犯罪ですか」――。

ベストセラー「こども六法」(弘文堂)の著者で教育研究者の山崎聡一郎さんが2月23日、「学校内トラブル×法律」をテーマに子ども向けのオンライン授業を行なった。

子どもたちは、学校生活で起こるいじめやトラブルにまつわる疑問を山崎さんに尋ねた。

こども六法は、刑法や民法、少年法などの法律をわかりやすく解説する子ども向けの法律書。授業は、本の内容を引用しつつ進められた。 

山崎さんは、子どもたちから寄せられていた学校生活でのトラブルの例を紹介。

「嫌がらせをする目的で友だちの好きな人をばらしたら、名誉毀損罪に当たることがある」

「ペットボトルで相手の体を叩く行為も、暴行罪になる可能性がある」

など、刑法で犯罪となりうるケースを説明した。

 

やり返してはダメ

文房具を奪われたとき「友だちのいない時にこっそり取り返す」

殴られたので「殴り返した」 ーー。

山崎さんはこうした「やり返す」事例を挙げて、「自分が犯罪行為の被害を受けた時、相手への仕返しとか、自分の受けた権利の侵害を取り返すために犯罪を仕返すことは、自分も悪いことになってしまうので絶対にやってはいけない」と強調した。

「重要なのは、犯罪被害の対応で犯罪をしてはいけないということ。やられたら、まずは大人に相談して解決してもらおう」

嫌なことをされた時、「力づくではなく『やめて』と言ったらいいですか?」との質問もあった。

山崎さんは「『やめて』というのは基本的なやり方だと思います」とした上で、「ただ、『やめて』と言えないから言えない自分が悪い、とは思わなくていいです。『やめてと言わなかったんだからやられてもしょうがないよね』ということにはならない。そういう時は、大人に『やめてとは言えなかったけど嫌だった』と相談していいのです

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こども六法(弘文堂)
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どこからが「いじめ」か

「いじめたつもりがなくても、受けた側がそう思ったらどうなりますか」

「いじめはどこからがいじめになりますか」

授業では、いじめに関する質問も多く寄せられた。

山崎さんは「いじめ防止対策推進法」の定義を紹介し、「された方が嫌だと思ったらいじめです」と述べた。

いじめ防止対策推進法(第2条)

この法律において「いじめ」とは、子どもに対して、同じ学校に通っているなど一定の人間関係にある他の子どもなどが行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、対象となった子どもが心身の苦痛を感じているものをいう。

実際には、いじめの行為のうち、犯罪として処罰される行為は限られる。

山崎さんは「例えばみんなで無視することは、いじめではあっても犯罪にはなりません。それでも、犯罪にならないからやってもいい、ということにはなりません」と指摘。

「刑法とは別に、子どもたちをいじめから守るための『いじめ防止対策推進法』があります。犯罪だけを決めているのが法律ではなくて、いろんな仕組みをうまく駆使して問題を解決していく方法がある、ということを知っておいてほしいです

 

相手の権利を尊重する、ということ

いじめの加害者を犯罪として処罰してもらったり、学校内でのトラブルを裁判で解決したりすることはハードルが高く、負担も大きい。

山崎さんは「裁判は最後の手段で、まずは先生や親、弁護士、警察など周りの大人に相談してほしい」と話す。

「友だちも親も、隣にいる人は違う人。全然違う人間で考え方や感じ方も違うからこそ、もめ事がおきます。自分が権利を傷つけられた時は仕返しをするのではなく、法律で認められた方法で『権利を侵害されました、助けてください』と言える人が救われる世の中に(これから)なっていきます」

相手の権利を尊重することは、回り回って自分の権利を尊重されることにもつながる、ということを覚えておいてほしいなと思います」

授業は、子ども向けのオンライン授業の検索・予約サイト「キッズウィークエンド」を運営するキッズシーズ株式会社が開催し、約130人の子どもたちが参加した。

 (國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)