「ガラスの天井は一枚じゃない」SHELLYがバラエティで声をあげる理由

「私はバラエティで目にする“うるさいおばさん”いじりを、笑いながら受け流すようなことはしたくない」と語るSHELLYさん。アンフェアな現実を変えていくためにテレビの世界で何ができるのか、本音を語りました。
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SHELLYさん
KAORI NISHIDA/西田香織

ガラスの天井は一枚じゃない。だから声をあげていくことが大切。   

タレント、子育て中の親、そして一人の大人として、「アンフェアな現実に声をあげていくことはすごく大事」と語るSHELLYさん。

ときにオールドメディアと揶揄されるテレビが抱える現状を冷静に見つめながらも、それでも彼女がバラエティ番組に出演し続ける理由とは?

そして、SHELLYさんが男性たちに「知ってほしい」と望んでいること、女性たちに「慣れてほしい」こととは? 全4回にわたるSHELLYさんへのインタビュー最終回です。 

 

若いタレントがテレビを離れる気持ちはわかる

テレビの業界、とくにバラエティ番組の現場にいると、まだまだ古い価値観が残っているんだなと感じる場面があります。

MCの言うことは絶対。先輩タレントが言ったことにはみんな笑う。男性タレントの不倫はいじってもOK…。

そういう空気が残っている現場では、既存の男尊女卑的な価値観に乗っかって、都合がいいおバカキャラを演じるほうがいいのかもしれません。

ただ、若くて聡明なタレントさんの中には、そういった業界の体質に見切りをつけて別のステージに移っていく人もいます。

上の世代と価値観のギャップが大きすぎて話が通じない。空気を読まない発言をすると編集ですぐに切られる。

そういう残念なことが積み重なって、若い世代が「もういいよ、別のメディアにシフトするから」となる気持ちは、正直すごくわかるんです。だって価値観の近い仲間同士でやっていくほうが、断然スピーディーだしストレスなく済みますから。

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SHELLYさん
AORI NISHIDA/西田香織

分断を食い止めるために 

でも、だからこそ、私はアップデートされた価値観をちゃんと持っている若い世代のタレントにこそ、テレビの世界に残ってもらいたいと思っていて。 

今のままだとテレビのバラエティ番組は、どんどん時代に取り残された古いメディアになってしまいます。

それぞれが自分の信じる価値観に従って、マイ・ベスト・ライフを追求していく。それ自体は素晴らしいこと。でも、それが行き過ぎると、違う階層や境遇にいる人たちのことがまったく見えなくなってしまう。

価値観を共有する人たちだけで集まっていたら、アメリカのように社会の分断がますます進んでしまう。

そういった社会の分断を食い止めるためには、自分とは異なる意見の人たちとオープンに話し合う場がもっと必要です。 

まったく違う立場の人、普段接することのない年齢の人、価値観が正反対の人の意見に、耳を傾けてみる。言葉を交わしてみる。オープンな場がテレビの世界でもっと増えていけば、社会も少しずつよい方向へと変わっていけるはず。 

 

バラエティの枠でどれだけ伝えられるか

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SHELLYさん
AORI NISHIDA/西田香織

テレビとYouTubeではそれぞれに違うメディアとしての特性がありますよね。テレビにはテレビの、YouTubeにはYouTubeの強みがあって、広く大勢に届くテレビのバラエティ番組だからこそ伝えられるメッセージもあるはずです。

テレビの世界は、大勢の人の関わりによって成り立っています。才能のあるタレントの方々、優れた技術でそれを支えてくださっている方々。その中には私と同じように、「今の社会を変えていきたい」と思っている人たちも絶対にいるはずなんですね。

ただ、それを表に出すのはやっぱりそう簡単ではない。それぞれの立場が違えば、いろんな事情やしがらみ、プレッシャーがありますから。

それでも、私は勇気を出して発信していきたい。

「バラエティという枠の中で、自分が言いたいことをどれだけちゃんと伝えられるか」は私のタレントとしての課題のひとつです。道のりはまだまだ遠いし、今は孤独にちょっとずつ毒抜きしているような状態ですけどね。 

 

「うるさいおばさん」いじりを笑い流さない

私のように女性がメディアで自分の意見をはっきり言うと、「うるさいおばさん」と揶揄されることもあります。

「うるさいおばさん」的ポジションを演じるのって、実は簡単なんですよ。男性からすればいじりやすいし、笑いもいっぱい取れる。そのキャラに徹したら仕事も今よりもっとラクに回るでしょうね。

でも、私はそういう「おばさん」いじりを笑いながら受け流すようなことはしたくない。

そんな風にいじられている私の姿を見て「私もああなりたい」と思う女性、いると思います? 逆ですよね。「あんな風に振る舞うといじられるんだ」「笑われるんだ」と若い世代ほど萎縮してしまうはず。

海外には自分の意見をはっきり主張して、フェミニストであること公言している素敵な有名人の女性が大勢いるし、私も彼女たちにはたくさん刺激を受けています。

日本の芸能界にはそういうロールモデルがまだいませんよね。だからこそ、「声をあげるおばさんは、いじってもOK」という安易な構図を私はなぞりたくない。

女性が受ける性差別や理不尽なことを、私がいろんなメディアを通じて繰り返し発信していくことで、若い層に少しでもポジティブな印象を与えられたらと思っています。

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SHELLYさん
AORI NISHIDA/西田香織

多くの男性に知ってほしいこと

日本のジェンダーギャップ指数は121位(2020年時点)。153カ国中ですから最低クラスですよね。先進国ではダントツの最下位。 

この結果に納得できない日本の男性は少なくないかもしれませんが、多くの女性は肌感覚で「そうだろうな」と感じているんじゃないでしょうか。

なぜ男女間でこんなギャップが生じるのかというと、やっぱり女性の生きづらさや男女格差が、男性にはなかなか見えていないからなんですね。見えていないから理解されづらい。 

私は女性が今の社会でどんな生きづらさを感じているのかを、男性にもっと知ってほしいと思っています。

たとえば生理について。毎月好きで生理になっている女性なんていませんよ。お腹が痛くなるのも、出血するのも、私たちが望んでそうなっているわけじゃない。 

生理についてオープンに話そうとすると、「そんなことを口に出すなんて、はしたない」とたしなめてくる人たちもいますよね。もちろん、そう感じること自体は否定はしません。その人たちはきっと「生理=秘め事」だと教わってきたのでしょう。 

でも、私はそうは思わない。私は生理についてオープンに話したいし、隠す必要はないと思っています。だからこそ、「はしたない」と感じている人たちとも、「なぜ、はしたないと感じるの?」と掘り下げながら、お互いの価値観をすり合わせていけたらと思っています。

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SHELLYさん
AORI NISHIDA/西田香織

ガラスの天井は一枚じゃない

男性たちには、まず女性が女性であるというだけで被っている不利益や理不尽があることを知ってほしい。

それと同時に、女性たちにはもっと声をあげること、声をあげることに慣れていきましょう、と伝えていきたい気持ちが強くあります。

アンフェアな現実に声をあげるのって、すごく大事なことですよね。だって声をあげないと何が問題なのか見えてこないでしょう? そうなると男女の格差だって、いつまで経っても埋まらないままです。

「ガラスの天井」って一枚じゃないんですよ。

バキンッと一枚割っても、その先にはまだ何重ものガラスがある。

今の世の中はすでに、男性が自分たちに都合がいいようにルールをつくってきた男性優位な社会なんです。そもそものルールからして、女性には不利にできている。男性たちにも認識してほしい部分ですが、変えていくためにはやっぱり女性自身がこのアンフェアな現実の問題点に声をあげていかないと。

何重もあるガラスの天井が残り続けるということは、次世代の女の子たちの可能性も潰され続けるということだから。

「SHELLYはなんでそんなに女性や社会問題に熱心なの?」とよく不思議がられるんですが、私はもうシンプルに「フェアじゃない」ことが悔しいんですよ。

女性というだけで不平等な目に遭うことが山のようにある現実が、悔しくて悔しくて納得いかなくて。だから言わずにいられないんだと思います。 

 SHELLY(シェリー)

1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。4歳と2歳の娘の母。若い世代に向けて性教育をテーマにしたYouTubeチャンネル「SHELLYのお風呂場」をスタートさせた。 

(取材・文:阿部花恵 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)