「Clubhouse(クラブハウス)」を長野智子が使ってみたら、若者のニュースの飢えに驚いた

「この数日間、Clubhouse(クラブハウス)にほとんど住んでいます」という長野智子さん。若い人たちが「ニュースを理解できる場」にものすごく飢えていることに衝撃を受けたというトークルームでの体験について、ブログが届きました。
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爆誕した「Clubhouse(クラブハウス)」を数日間、回遊しております。というか、ほとんど住んでいます(笑)。

Clubhouseの使い方やメリット・デメリットについては、すでにハフポスト日本版をはじめたくさんの方が発信しているので、私は個人的Clubhouse体験について書いてみたいと思います。

20年以上ニュース番組を担当し、昨秋卒業した時に、テレビ報道という沼から陸に上がってきたような感覚がありました。というのも、テレビの世界は森羅万象すべてのことに取材を通して関わっている一方、忙しすぎるところも手伝って、狭い人間関係に陥りがちでもあるのです。

陸にあがってこれまでにあまり接点のなかった人ともいろいろ会ってみようと思ったものの、このコロナ禍でかなわず悶々と自粛生活を送っていたところ、突如降臨したのが「Clubhouse」というアメリカ発のアプリでした。

ものは試しとダウンロードして、まずはアメリカのトークルームをうろうろしてみると、アメリカの有名(らしい)音楽プロデューサーたちが、リズムにあわせてメロディと詞をつけていく「Beat Battle」を開催してアマチュアの人にアドバイスしていたり、「億万長者 VS オーディエンス」というトークルームでは超お金持ちの人たちが投資のことを伝授していたり…。なんだか面白そうです。 

 

盛り上がっていそうなトークルームに入ってみた

そこで盛り上がっていそうな日本の「ようちゃんねる(政治や社会をもっと身近に)」なるトークルームに入ってみました。入ってみるというのは、ずらりと画面に並んだトークルームのひとつをタップするだけです。

30代、40代の大人たちと20代のギャルのような女の子たちが、政治やSDGsについて関心のあることや、わからないことを楽しそうに意見交換している居酒屋感。しばらく「ながら聴き」していたら、ルームの開催者である斎木陽平さんと面識があったこともあり、突然「話しませんか」というお誘い通知が来て会話に参加することになりました。そう、スナックで隣のテーブルの話に聞き耳たててたら、「こっちに来て話そうよ」と誘われて「え、ではちょっと」な感じと似ています。

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Clubhouse(スクリーンショットや内容については参加者の許可をとって掲載しています)。
筆者提供

 ラジオに近い「平場感」が醍醐味

私にとってのClubhouseの一番の醍醐味はラジオに近い「平場感」でした。見た目の印象や先入観に左右されがちな映像メディアとは異なり、声だけの世界では、ギャルであろうが、政治家であろうが、私のようなアラ還おばさんであろうが、びっくりするほど壁なくコミュニケーションが成り立つのです。

テレビで長年ニュース番組をやってきた私は「なかなか若い人が観てくれない」「なんで若い人はニュースに興味がないのか」とずっと考えてきました。ところがClubhouse体験初日にして、私はこれまで話したこともないギャルや、ギター好きな学生さんたちと会話を楽しむうちに、彼らが「ニュースを理解できる場」にものすごく飢えていることに衝撃を受けたのです。

ちーまるちゃんという「全然ニュースわからない」という女の子が「ニュースをわかってみたい。そうしたらもっとたくさんの大人の人と話せるかも」と発言したのを聞いて、その日のうちに「Tomoちゃん、ちーまるのやりらふぃーでも語れる政治」というトークルームまで立ち上がりました。(え~、Tomoちゃんはちーまるちゃんが私をそう呼びはじめたのと、あと「やりらふぃー」は2020年ギャル流行語大賞だそうです。知らんがな、笑)

このトークルームで私が「官房機密費」だの「派閥」だの「通常国会」だの話しても、若い人たちがどんどん質問してくれるし、なんなら「きのこの山派」と「たけのこの里派」に置き換えたりと若い人たちと予測不能の議論になって、私にとっては大げさではなく目からうろこが落ちる時間になりました。

そうか、「なんで若い人はニュースを観てくれないのか」ではなく「なんでこれまで若い人たちのためのニュース番組を作ることができなかったのか」という思いです。

 

様々な立場の人の対話の場として

まだiPhoneユーザーしかアプリをダウンロードできず、招待制ということもあり、なんだか会員制ぽいのが感じ悪いという声も出ているし、それはそうだよなと思うので、早くアンドロイドも解禁になってほしいのですが、新しいSNSには使う人や使い方によって当然合う合わないがあることと思います。

ハフポスト日本版の記事にわかりやすいですが、先行したアメリカで起きているヘイトスピーチなどの課題も多くあります。

 これが一時の熱狂なのか、ゲームチェンジャーとしてSNSのプラットフォームに大きな変化をもたらし定着するのかは、正直始めて1週間しか経っていないので判断がつきません。

それでも個人的にはポッと時間が空いたときに、まるでいきつけのスナックにちょっと顔を出すように訪れて、これまでリーチすることのできなかった多くの人たちと雑談したり、真面目な話をしてみたりを可能にしたClubhouseは、コロナ禍という前代未聞な状況で生まれるべくして生まれたイノベーションのように感じます。

様々な立場の人がより生きやすい社会をつくっていく対話の場所として相性はよいように思えるのですが、さてどう使っていくか、Clubhouseでお話できたら嬉しいです。

(文:長野智子  編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)