池袋暴走事故、電気系統のトラブルはあったのか。事故を鑑定した捜査員が証言【第5回公判・詳報】

これまでの公判で、検察側はアクセルとブレーキの踏み間違えを主張。弁護側は「電気系統のトラブルでブレーキがきかなかった可能性は否定できない」と訴えている。
|
Open Image Modal
池袋事故/現場に残された自転車と事故車両
時事通信社

東京・池袋で2019年4月、車を暴走させて母子2人を死亡させ、他9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告の第5回公判が2月1日、東京地裁であった。

この日は、事故の鑑定書を書いた警視庁交通捜査課の捜査員の証人尋問が開かれた。

弁護側はこれまでに、経年劣化によって「電気系統のトラブルでブレーキが利かなかった可能性は否定できない」と訴えている

捜査員はこの点について、事故前後の被告車両の状態が記録されたデータには、アクセルやブレーキの電気系統の故障記録が確認できないと主張。現場検証でも、事故で破損した箇所を復元するなどして被告車両を走らせたところ、ブレーキが利いたと訴えた。

被告車両には、電気系統に異常があった場合でも作動する油圧ブレーキが搭載されることに触れ、ブレーキペダルを踏んでいれば車は減速したはずだと訴えた。

さらに、事故車両のアクセルペダルとブレーキペダルで、一部だけほこりが拭われていた痕について「暴走事故でよく見受けられる痕だ」と説明した。

弁護側は反対尋問で、「アクセルペダルを踏むこと以外の要因で、モーターやエンジンを動かすための電気信号が送られることは全くはないのか」と追及。これに対して捜査員は「全くない」と返した。 

時事通信が報じた起訴状の内容によると、飯塚被告は2019年4月19日、ブレーキと間違えてアクセルペダルを踏み続け加速。赤信号を無視して横断歩道に進入し、松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(同3)をはねて死亡させたほか、9人に重軽傷を負わせたとされる。

亡くなった松永さんの夫・拓也さんらは、被害者参加制度を利用して公判に参加した後、司法記者クラブで会見を開いた。

拓也さんは、これまで証言などを踏まえて「(踏み間違えがなくて)加速することはあり得ないと思う。遺族としては本当にやるせない」と語った。

松永さんの父親、上原義教さんも「技術的なことに詳しいはずの被告が、このような主張で争っているのが悔しい」と訴えた。