2021年「冬ドラマ」面白いのはどれ? エンタメ好きの7人で語り尽くした【記者座談会】

『俺の家の話』『知ってるワイフ』『にじいろカルテ』『オー!マイ・ボス!』『天国と地獄』『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』…記者のイチオシは?2020年春以降のドラマも一気に振り返ります。
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「冬ドラマ」の出演者たち
時事通信社

2021年に入り、今年の冬も新しい連ドラの放送が始まりました!

数多くあるドラマ…どれを見ようか悩むこともありますよね。

そこで、ドラマをはじめとしたエンタメ、カルチャー好きのハフポスト日本版のエディター7人がオンラインで集まり、おすすめの「冬ドラマ」について語り合いました。

「まだ今年、連ドラを見られてないんだよね」という方も、この記事を読めば間に合うはず!

また、コロナ禍で影響を受けながらも、『MIU404』『半沢直樹』など話題作に恵まれた2020年度のドラマ界。今年度に話題となったドラマについても振り返ります。

<記事の主な内容>

・放送中の「冬ドラマ」記者のイチオシお伝えします

・『逃げ恥スペシャル』みんなは、どう思った?

・2020年度の推しドラマは? 『MIU404』『半沢直樹』それとも?

<座談会参加者>

安藤 健二「妻とのドラマ視聴が、子育て中の癒しの時間」

生田 綾「ドラマがジェンダー観をどう描いているかに注目してしまう」

小笠原 遥「実は…『半沢直樹』に出演してました」

毛谷村 真木「『MIU404』で綾野剛さんの魅力に目覚めました…」

湊 彬子「ドラマは衣装を見るのも楽しみ」

南 麻理江「『すいか』『最高の離婚』『タイガー&ドラゴン』が好き」

若田 悠希「おすすめドラマなら、何時間でも語れます」

 

『知ってるワイフ』『その女、ジルバ』『俺の家の話』…「1本だけ」おすすめするなら?

<放送中の「冬ドラマ」。ハフポスト編集部のメンバーが見ているのは?おすすめのドラマを紹介します!>

生田 今季は『知ってるワイフ』(フジ系、木曜22:00)にハマってます!ワンオペ育児の大変さに気が付かず「イライラしている妻と離婚したい」と思っている夫(大倉忠義さん)がタイムスリップをしたことで「自分が妻を追い詰めていたかも」と徐々に気づいていき、同時に視聴者も気づいていくという見せ方が上手。スピード感もいいし、みんなに見て欲しいです。

小笠原 私は男性ですが、いつの間にか妻役の広瀬アリスさんの演技に引きつけられ、妻側の目線で見ています。「そりゃこうなるよね…」って感じで自然に感情移入できることも多々あって、男性も見る価値がとてもあると思います。 

 若田さんに勧めてもらった『その女、ジルバ』(東海・フジ系、土曜23:40)は、中高年の女性たちが自分の人生を生きながら、恋愛でも家族でもない形の関係を築いていて胸を打つ。「女性は若い方がいい」という価値観は根強く社会にあるので、テレビがこういう作品を届ける意義は大きいと思う。

生田 ジルバは主人公役の池脇千鶴さんの役作りが話題ですよね。人生に喜びを見失いかけていた40歳の主人公が、仲間の女性たちの「女はシジュー(40歳)から」というセリフに励まされて、おしゃれやダンスを始める。年齢関係なく、いくつになっても新しい挑戦をしていいんだよ、というジェンダー的な視点は私も感じます。

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池脇千鶴さん
VCG via Getty Images

クドカン最新作は「介護」がテーマ。ドラマをきっかけに、両親と会話した

若田 ジルバは草笛光子さん、中田喜子さんら、出演者も力のある方ばかり。

山田裕貴さん主演のここは今から倫理です。(NHK、土曜23:30)も見て欲しい。教師が高校生の抱える問題に向き合う内容で、1話では性的同意をテーマとして扱っていた。

でも、もし「1本だけお勧めして」と言われたら『俺の家の話』(TBS系、金曜22:00)になるかなあ。介護がテーマのドラマで、プロレスラーの息子(長瀬智也さん)が、能楽の人間国宝である父(西田敏行さん)の介護のために実家に戻る話。

私は最近のクドカン(脚本の宮藤官九郎さん)作品のジェンダーの描き方に興味があって、今回は「男性が男性をケアする」話をどう作り上げるのか楽しみです。主人公の息子に学習障害があって、これもドラマではあまり描かれていないテーマですよね。

 クドカン・長瀬さんがタッグを組んだ『タイガー&ドラゴン』(2005年、TBS系)が本当に好きなので、胸熱すぎる・・・。

今作は、社会問題をドラマに取り込んでいく「具合」が絶妙だなと思います。世の中には本当に色々な社会問題があって、人によって直面しているものは様々。その中で、介護という多くの人が向き合っている・今後向き合うであろうテーマを選んだことで、「分かちやすい」ものになった。

ただ、下半身に麻痺がある父親の体を洗う場面などもあって、いままさに介護に携わっている当事者の中には、見るのがしんどいと感じる方もいるかも…。年齢を重ねたクドカンが、そういった部分も含めてどう描いていくのか注目しています!

小笠原 第1話を見て、私、両親と連絡をとったんですよ。ちょうど両親もリアルタイムで見ていたらしく、親も色々と思うところがあったのか、「いつかこういうタイミングがくるかもしれないよね」とフランクに介護についての話が始まりました。これまでしたことが正直なかったので...会話のきっかけになりました。クドカンの脚本は会話劇としても面白いですよね。家族で食卓を囲むシーンの掛け合い芝居、好きです。

学校常駐の警察官を藤原竜也さんが演じる『青のSP』(カンテレ・フジ系、火曜21:00)も見応えがあるなと思っています。あんなに事件ばかり起こる学校、正直あり得ないなと若干思いつつ...例えば第2話では、女性教師への「マタハラ」をリアルに描いていました。SNSやドラッグなど、毎話で社会問題に踏み込んでいる点が推せる理由です。

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宮藤官九郎さん
時事通信社

毛谷村 朝ドラ『ひよっこ』などで知られる岡田惠和さんが脚本を手がけるにじいろカルテ(テレ朝系、木曜21:00)が一押し。

高畑充希さん演じる内科医が、自身の難病を隠して過疎の村の診療所で働き始める話。それぞれがままならない事情を抱えながらも、居場所を見つけていく様と登場人物の優しさと誠実さが、つながりを意識せずにはいられないコロナ禍のいまだからこそ琴線に触れ、ずっと泣いていられます(断言)。北村匠海さんもハマり役ですし、井浦新さんや水野美紀さんら実力のある役者さんが揃っていて、安定感もすごいです。

 

『オー!マイ・ボス!』編集長の問いかけが心に響いた

 私はオー!マイ・ボス!恋は別冊で(TBS系、火曜22:00)も完走予定。「鬼編集長」(菜々緒さん)の下で奔走する「雑用係」(上白石萌音さん)の恋と仕事を描いている。時代も自分も変わって、消費への考え方は変化したけれど、ファッション誌が舞台のドラマって今でもワクワクします。

小笠原 第1話の終盤で「人並みでいい」という仕事観を持つ主人公に対して、編集長が「人並み」の意味について深く問いかけるシーンがあったんですが、的を射ている感じがしてセリフがグサっと心に響きました。2人の関係がどう深くなっていくのか、今後の展開に期待してます。

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菜々緒さん
ASSOCIATED PRESS

若田 主人公が「感じのいい、みんなが応援したくなる“ヒロイン”」じゃなくて、最初は、夢を持って一生懸命働く同僚に対して距離感があって、ちょっとひねくれたところもあるのかな?と思わせる感じなのも興味深い。“朝ドラ的”ではないというか…。

ただ、TBS火曜ドラマは、前作の『この恋あたためますか』に続き、「イケメン推し」強めなのが気になる。1年前の『恋はつづくよどこまでも』がヒットしてから、「『イケメン』と『あか抜けない女子』シリーズ」「少女漫画路線」にシフトしているのを感じる。「イケメン仕草」「イケメン台詞」的なものが繰り返されていて、それを主人公の目線で見る恋愛シミュレーションゲームみたいだなと思う時が…。小笠原さんと一緒で、恋愛部分より、菜々緒さんと上白石さんが演じる女性2人の関係のほうが気になりますね。

毛谷村 ドラマは視聴率とセットで語られてきました。佐藤健さんの『恋つづ』が成功して、作り手は数字に引き寄せられて、「このフォーマットに当てはめる」みたいなことをしているのかもしれないですね。

 TBSの火曜ドラマ枠は「働く女性」に向けたものというイメージだったけど、10代にテレビを見てもらうため、想定視聴者層を変え始めたのかもしれませんね。

 

豪華キャスト『天国と地獄』 高橋一生さんが殺人鬼役

毛谷村 出版業界を扱っているドラマとしてはウチの娘は、彼氏が出来ない!!(日テレ系、水曜22:00)もありますね。文芸の若手編集者が出てくるんですけど、出版出身者としては「ああいう(雰囲気の)編集者いる…」と二度見しました。[Alexandros]のボーカル川上洋平さんが演じていますが、これを機に峯田和伸さんのように俳優としても才能を開花させるのか注目です。

綾瀬はるかさん主演の天国と地獄 ~サイコな2人~(TBS系、日曜21:00)はどうですか? 高橋一生さんがサイコパスな殺人鬼役で、本領発揮という感じです(笑)。

若田 出演者がすごく豪華で、それだけでも楽しいですよね! 

女性と男性が入れ替わる設定についてはアニメ映画『君の名は。』を見た時も考えたのですが、異性の体になることで発生するハプニング的なものの描き方に、どうしてもモヤモヤしてしまいました。一方で、警察組織が男性優位であることも示唆的に描いているので、それがどう今後の物語にいきてくるのか気になっています。

小笠原 主人公に「セクハラ」と影で呼ばれている、捜査のためなら手段を選ばない刑事を演じる北村一輝さんの演技は、改めて「いい助演だなぁ」と目が止まります。まさに、ぴったりな役で。主人公以外にも物語にスパイスを加えてくれる名脇役がいるドラマは、見ていて楽しいですね。

 

2020年度、どのドラマが面白かった?

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『岸辺露伴は動かない』も話題となった高橋一生さん
時事通信社

<ドラマの制作現場も新型コロナの影響を受けた2020年。ここからは、2020年春以降に放送されたドラマを振り返っていきます>

安藤 実は2020年は、10年ぶりぐらいにドラマをしっかり見た年だったんですよ。娘が生まれて、朝から夜まで仕事と育児で忙しく、娘が寝た後の夜9時ぐらいからやっと少し時間ができて、夫婦でドラマを見るのが癒しだった。外出もしづらい中、「家族の絆」的な意味でもドラマって大切だと思いました。

2020年で記憶に残っているのは危険なビーナス(TBS系)。推理ものとして純粋に楽しめました。年末に放送された荒木飛呂彦原作岸辺露伴は動かない(NHK)も、脚本を特撮出身の小林靖子さんが手がけていて、見る価値のある作品だと思いました。高橋一生さん演じる主人公が怪しかったなあ(笑)。

何より、育休期間に再放送で初めて見た逃げるは恥だが役に立つは、社会問題もうまく取り込んでいて感動しました。だからこそ、新春SPでコロナ禍で育休を返上する展開がもったいなく感じてしまって、ブログを書きました

 

『逃げ恥SP』の情報量に「背負っているものの重さを感じた」

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『逃げ恥』は2021年も話題となった。出演者の星野源さんと新垣結衣さん
時事通信社

生田 コロナ、育休、ホモソーシャルな職場環境、選択的夫婦別姓…SPは2時間強に社会課題を詰め込んだ印象はありましたね。同じ野木亜紀子さん脚本の『アンナチュラル』(2018年、TBS系)はもう少しさりげなかった印象。逃げ恥は、もともと海野つなみさんの原作自体に社会問題が多く盛り込まれていますが、今の野木さんに「描かなければいけない」という焦燥感があるのではないか、とも想像しました。

若田 情報量が多かったかもとは思うけど、社会問題にぶち当たり続ける人生もあるわけで。私は、自分の想像力が広がるのを感じました。新垣結衣さん、星野源さんというスター2人をキャスティングして、考えるきっかけをドラマが提供していること自体がすごい。星野さんは、インスタやラジオなどでもさりげなく社会問題に言及していて、こういう方が日本にもいることが本当に嬉しいです。

 逃げ恥SPは録画していたので、テーマの多さから、途中で何度も止めて、休憩をはさんで考えながら見ました。日本ドラマ界で、野木さんが背負っているものの重さを感じましたね。同じ野木さん脚本だと、綾野剛さん星野さんW主演で夏に放送された刑事ドラマMIU404(TBS系)は、コメディっぽさとシリアスさのバランスが良くて見やすかったです。新たな野木さんファンも増え、結果として社会の暗部や課題への関心を持つ人が増えたのではないかなと思います。

毛谷村 MIUで綾野さんの魅力に目覚めました。走る姿がかっこいい…。

みなさんに同意で、ドラマ界で野木さんの背負っているものの大きさは感じますね。逃げ恥SPは、Twitterで呟きながら見る人が多いのは事前に想定され、目の肥えた視聴者に「現実を正しく反映した内容」を提供しなければ、という面があったと思う。それが、社会課題を多く盛り込むことにつながったのかなと想像しました。

 

“キャラを推す”という形のドラマ視聴『半沢直樹』

 Twitterで話題になったといえば、こちらも夏から放送された日曜劇場半沢直樹(TBS系)。小笠原さんは最終話に出演されてましたね!

小笠原 出たと言って良いのか分からないですが、はい...実は(笑)。家宅捜索する検察側の1人として、ほんの一瞬でしたが。にもかかわらず、気づいてくれた方もいたようで、放送後は久しぶりにLINEがめっちゃ来ました(笑)。

『半沢』は「推し」の役を決めて、Twitterで応援しながら見ている視聴者が多かったですよね。役名がTwitterでトレンドになることもあったし、“キャラを推す”という形のドラマ視聴は興味深かったですね。相撲で言うと、半沢と大和田という“横綱”だけでなく、“大関”としての脇役たちも際立っていた作品なので、「推し視聴」との相性の良さを感じました。例えば、大臣役で注目された江口のりこさんはもともと素敵な役者さんですが、半沢での人気を経て、さらに出演作が増えている印象があります。

『半沢』に対しては、結構乱暴なセリフがあったり、「芝居がプロレスだ」とか「現代版の時代劇だ」という評価もありましたが、見た後はやっぱりスカッとできるのか、「また月曜から頑張れる!」と思う人も多かった気がします。

安藤 僕は前作(2013年)の方が面白かったと正直思いましたね。見ている瞬間は面白いけど、放送が終わると内容が薄れてしまう感じ。前回の方がハラハラが持続して楽しかった。

生田 私も前の方が全然面白かったと思ったけど、それでもやっぱり2020年も半沢は面白かった。女性の描き方が若干アップデートされたのもよかった。女性大臣が政権の不正を見逃せず立ち上がる展開に、今の時代にあったものを感じて胸熱だった。

 新型コロナの影響で途中で放送が延期になり、出演者たちによる特番を放送したのも“今”っぽかったね。視聴者を信じて正直に伝える広報戦略にも感心しました。

 

コロナの影響…“ドラマのこれから”はどうなる?

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『#リモラブ』に主演した波瑠さん
Sports Nippon via Getty Images

 “コロナ禍のドラマ”といえば、コロナ対策に奔走する産業医が主人公の#リモラブ ~普通の恋は邪道~(日テレ系)もありましたね。10月からの放送が始まった時は、「社会の今を早く反映していてすごい」と思う一方、「コロナ禍も来年には落ち着くだろうし、こんなにマスクが出てきたら、未来の人が見たら不思議に思うんじゃない?」なんて思った。でも、今年に入ってもコロナがおさまる気配がなく…「ドラマでもマスクをしている方が普通になっていくの?」と混乱しながらテレビを見ています。

若田 海外ドラマも見てますけど、日本のドラマはコロナ禍を反映させるスピードが早い印象があります。一方で、コロナ前に撮られた映画を見ていたら、ファミレスでカップルが喋るシーンがあって。「こういう何気ない日常が、今の社会ではできないんだよね」と切なくなりました。俳優さんらにとっては、マスクだと顔を覚えてもらいにくかったり、お芝居にも制限がかかってしまったりという問題もあるでしょう。しばらく制作側は、「『マスクあり設定』を選ぶか、選ばないか」という選択を迫られることになりそうですね。