2月12日に春節(旧正月)を迎える中国では、帰省ラッシュに伴う新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されている。2021年は帰省するのを止めて、働き先の都市に留まってもらおうと、各地方都市が現金支給プランなどを次々に準備している。
■各地方が「ニンジン」用意
中国では毎年、春節前後が年末年始休暇となり、多くの人が帰省したり、海外旅行に行ったりするなど「大移動」が起きる。
中国では一時期、新型コロナの感染拡大をほぼ抑え込んだが、黒竜江省や吉林省などの東北部で連日、新規感染者がみつかっているほか、北京市ではイギリスで確認された変異株の感染者も出たことがわかっている。
中国政府の発表によると、今年の春節前後の期間は延べ17億人が国内を移動すると予測される。新型コロナが流行する前の2019年と比べて4割ほど少ない。
中国共産党機関紙「人民日報」によると、「高リスク地区」に指定された地域の住民は移動できないが、「低リスク」の場合は呼びかけにとどまる。そこで、地方都市は現金支給などのプランを用意して引き止めを図っている。
例えば浙江省の杭州市では、地元の戸籍を持たない労働者に対し、企業を通じて1000元(約1万6000円)の現金を配る。湖南省長沙市の一部地域では「お年玉」名目に生活補助などを加えて計1000元を、福建省の一部地域では200元(約3200円)を域外出身の人に支給する。
広西省は通販プラットフォームと連携し、プラットフォーム上で使える「消費券」を配るため6億元(約96億円)の予算を計上した。
また北京市では、域外出身の労働者に対し、年越し直後の3日間に働いた人には通常の3倍の給料を支払うよう企業に求めるほか、違法に労働契約を解除させないようにする。
湖南省の一部地域では、帰省をやめた人を対象に、スマホの通信料を30ギガバイトまで地元政府が負担するといった変わり種もある。
こうした施策が次々と発表される背景には、中国政府が春節に対し神経をとがらせていることがあるとみられる。
2020年の春節に伴う人の移動が、新型コロナを広げた要因の一つとの批判も根強い。最初に感染が爆発的に広まった武漢市が都市封鎖されたのは1月23日で、去年の春節(1月25日)の2日前。移動ラッシュが始まった後で、この時点ですでに500万人以上の市民が国内外に散っていた。
また、帰省をした人に対しても14日間の在宅での健康確認を求めるなどの防疫対策を実施する方針だ。