イギリスの新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な状況になっている。
特に首都ロンドンでは医療現場でも感染が広がり、サディク・カーン市長は医療崩壊の危機として、1月8日に「重大インシデント宣言」を発出した。
重大インシデントとは何かや、宣言の背景などを紹介する。
重大インシデントとは?
市長室の発表によると、重大インシデントは「ひとつまたは複数の緊急対応機関による特別対応の実行が必要となる、深刻な結果を引き起こした出来事や状況」と定義されている。
「平常業務で対応できる範囲を超えている状態」を指しており、具体的には「深刻な危害や被害、破壊行為のほか、人命や福祉、必要不可欠なサービス、環境、国家の安全に対するリスクを伴う」と説明している。
さらに「重大インシデントによって引き起こされる結果の深刻度が、対応にあたる人がインシデントに対処・準備する能力を抑制・困難にさせる」と付け加えている。
ロイター通信によると、重大インシデントは通常、攻撃や重大事故の発生時に指定されるという。ロンドンで宣言されるのは、2017年に70人以上が死亡したグレンフェル・タワー火災以来。
医療崩壊の危機
重大インシデント宣言の発出は、医療崩壊の危機が背景にある。
市長室の発表で、ロンドンの感染者数が10万人あたり1000人を超え、国民保健サービス(NHS)への負担が深刻化したと、発出の経緯を説明している。
12月30日から1月6日で、ロンドンの病院への入院患者数が27%(5524人から7034人)、人工呼吸器の使用が42%(640人から908人)それぞれ増加。救急車の搬送要請も急増し、1日約8000件寄せられているという。
ロンドンではこれまでも対策を講じてきたが、新型コロナウイルスの治療や対応にあたる人たちの感染や自主隔離が相次いだ。これを踏まえて、現在の体制を改める必要があると判断した。
市長はコメントで「医師や看護師、NHSの職員は素晴らしい仕事をしていますが、感染者数の急増によって病院が対応できなくなるリスクがあります。感染拡大が劇的に収まらなければ、数週間後には患者のベッドが用意できなくなるという厳しい現実があります」と危機感を訴えた。
ブルームバーグは、この宣言によって「救急サービスと更なる協調した対応が促されるようになる」と、市長室の説明として伝えている。
ジョンズホプキンズ大学の新型コロナウイルスのサイトによると、イギリスの新型コロナ感染者数(1月9日時点)は約255万人、死者は約6万9600人に上る。
イギリスでは変異種による感染拡大が広がり、特に深刻なロンドンは12月末から事実上のロックダウン状態となっている、1月5日からは、イングランド全土で3度目のロックダウンに突入した。