性行為に同意する能力があるとみなされる「性交同意年齢(性的同意年齢)」。日本ではその下限は13歳となっていますが、海外と比べると低く、性暴力被害者の支援団体などは年齢の引き上げを求めています。
最近では、韓国が性犯罪に関わる法律を厳しく取り締まるよう改正し、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられました。
性交同意年齢をめぐる現状について解説します。
「性交同意年齢」とは?
「性交同意年齢」とは、性行為をするか否かを自ら判断できるとみなされる年齢の下限のこと。
この年齢に達しない子どもと性行為を行った場合は、同意の有無を問わず処罰の対象となります。
日本では、「13歳」を同意年齢としています。
つまり、13歳以上への性的暴行は、強制性交等罪などの要件となっている「暴行や脅迫」があったことや、被害者が抵抗したことが立証できなければ、加害者を罪に問うことはできません。
▼日本の現行法
第176条(強制わいせつ) 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6か月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第177条(強制性交等) 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
日本では2017年、約110年前に作られた刑法性犯罪が大幅に改正されましたが、性交同意年齢の引き上げは実現しませんでした。同意年齢は明治時代に制定されたまま、変わっていません。
この時の法改正で、保護者など監護者による18歳未満の子どもへのわいせつ行為・性交等は、同意の有無を問わず犯罪となりました。しかしその範囲は狭く、教師や上司、コーチといった指導者などからの加害行為には対応できていないという課題が残っています。
世界では年齢引き上げが進む 韓国でも16歳に引き上げ
世界では、性交同意年齢の引き上げが進んでいます。
G7や先進国など、世界各国の同意年齢は以下の通り。
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《世界各国の性交同意年齢(※)》
16〜18歳 アメリカ
16歳 カナダ、イギリス、スペイン、ロシア、フィンランド、韓国
15歳 フランス、スウェーデン
14歳 ドイツ、イタリア
13歳 日本
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先進国の中でも、日本と同じく「13歳」を性交同意年齢としていた韓国は、2020年5月に同意年齢を引き上げることを決定しました。
法改正の議論は近年から進んでいましたが、決定打となったのは韓国の「n番部屋事件」。
チャットツールで発生した性犯罪事件で、犯人グループは未成年を含む多数の女性をだまして裸の写真を入手。それを元に女性を脅迫し、さらなる性的搾取画像や映像を送らせました。画像などは会員26万人(重複含む)が見ていたとされ、韓国社会を震撼とさせました。
この事件をきっかけに、韓国政府は性犯罪の処罰を強化する、いわゆる「n番部屋防止法」を施行。
未成年者擬制強姦罪(法定強姦。性的同意年齢未満の子供に対する性行為をした罪)の基準年齢が既存の13歳から16歳に引き上げられました。
これによって、韓国では16歳未満の未成年者と性的な関係を持った場合、相手側の同意があったかどうかに関係なく処罰を受けることになります。
なお、被害者が13歳以上16歳未満の場合には、加害者が19歳以上の成人である場合のみ、処罰の対象となります。
(※参考記事:「German Criminal Code」/「15歳未満との性行為は全て強姦罪。フランスで厳罰化の動き」ハフポスト /「Canada’s age of consent raised by 2 years」CBC News /「フランス、性行為の同意年齢を15歳に 15歳未満相手は強姦扱い」BBC / 「Fact check: No evidence of any attempt to lower the age of consent to 4」Reuters)
日本でも年齢引き上げを 高まる声
日本では現在、法務省の検討会で性犯罪の刑法見直しが議論されており、同意年齢の引き上げを求める声が高まっています。
被害当事者団体や支援団体、人権団体などは、強制性交等罪の「暴行・脅迫」要件の撤廃などとあわせて、同意年齢を13歳から義務教育を終えた年齢である「16歳」に引き上げるべきだと提言。なお、人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が6月に発表した改正案では、16歳未満の性交等については「18歳未満同士で年齢差が2年以内」の場合は処罰の対象外としています。
また、オンライン署名サイト「Change.org」でも同意年齢の引き上げを求めるキャンペーンがスタートし、これまでに4万人以上の署名が集まっています。