「ベルサイユのばら」が中国の流行語に?「神獣」「颯」など世相を反映した10の言葉たち

「食べても食べても太れない、すぐ体重増える人が羨ましい!これだけ食べたのに45キロにも届かない〜」(ベルサイユ文学)
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2020年の中国の流行語トップ10がこのほど発表された

一党独裁国家らしく共産党の掲げたスローガンが入る一方で、隣国のリアルな生きづらさを反映したものもある。「3密」が流行語大賞に選ばれた日本と同じように、新型コロナウイルス関連の新語も多くノミネートされた。

「逆行者」「神獣」など、同じ漢字を使う国といってもよくわからない言葉だらけ。日本の漫画「ベルサイユのばら」を元ネタにしたものも選ばれた。詳しく見ていこう。 

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集英社の漫画「ベルサイユのばら」懸賞旗=2017年1月15日、東京・両国国技館
時事通信社

■「神獣」に悩む親たち

中国の流行語トップ10は現地文芸誌が選定しており、去年は「朝9時から夜9時まで仕事をする生活を週6日」という生活サイクルを指す『996』などが選ばれるなど、世相を反映したものになっている。

今年は新型コロナウイルス関連の新語のほか、去年に引き続き、中国社会のリアルな生きづらさを反映したものも選ばれた。

共産党関連では、習近平氏の掲げた「人民至上、生命至上」「双循環」が入った。前者は新型コロナに対する共産党の方針で、後者は中国の今後の経済政策を示すキーワード。内需拡大を基本としながら、国際社会との協調を進める「ふたつの循環」で経済発展を目指すとしている。

新型コロナウイルス関連では「逆行者」はよく報道された言葉だ。中国中で外出制限が続くなか、彼らと逆行するように職場に出勤し、仕事を続けた医療従事者らを讃える意味がある。女性の医師や看護師への尊敬の意を示す「颯」も入った。

ステイホーム関連では「神獣」がランクイン。中国でも学校は一時、登校中止となり、オンライン教育が導入されたが、子どもを学校に預けることができない親たちの疲労は増すばかり。「怪獣」よりも「神獣」と呼ぶべき子どもたちを早く学校に送り返したいという、切実な願いが詰まっている。

そのほかでは「ライブコマース」も入った。ネットの生放送と通販番組を掛け合わせたような販売手法で、ライブ形式で商品を紹介し、コメントで寄せられた質問にも答える。

中国ではステイホーム期間で通販プラットフォームの利用が増加し、従来のインフルエンサーに加え、企業の社長や従業員など幅広い層がライブコマースに参戦している。日本でも中国向けにライブコマースを実施する企業が増えつつある。

去年の「996」に加え、労働関連では「打工人」がある。通常は「アルバイト」「肉体労働者」などと訳されるが、幅広く労働者一般を指すものに変化した。いわゆるホワイトカラーなども含めて、誰もがハードな仕事に翻弄されているという自虐的なニュアンスを持つ。

日本に関連するものは「ベルサイユ文学」。池田理代子さんの人気漫画「ベルサイユのばら」が元になっていて、日本語でいうと「自虐風自慢」が近いかもしれない。

中国メディアの挙げる例でいうと「食べても食べても太れない、すぐ体重増える人が羨ましい!これだけ食べたのに45キロにも届かない〜」などがあたる。この「自慢」の部分が「ベルばら」に登場する貴族たちのような華々しさにかかっているという。

自分が不遇な立場にあると見せかけつつ、中身はしっかり自慢をしてくる「ベルサイユ文学」は、中国ネットユーザーの間で大喜利的な人気を得た。

中国の流行語には、検索最大手「百度」もネット流行語として10語を挙げている。