安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会をめぐり、東京地検特捜部が安倍氏本人の任意の事情聴取を安倍氏側に求めたと、時事通信など複数のメディアが報じている。
何が問題になっているのか?これまでの経緯を振り返る。
「桜を見る会」とは?
「桜を見る会」とは、国の予算を使って首相が主催する花見行事。例年4月に開催される。「各界で功績や功労のあった人を招待し、慰労する」のが目的で、国会議員や各国の駐日大使のほか、タレントやスポーツ選手などが招かれていた。
今回問題になっている「桜を見る会」の前夜祭は、2013年から「安倍晋三後援会」が主催し、東京都内のホテルで開いていた。会費は1人当たり5000円。
不足分を補填、報告書に記載せず
毎日新聞によると、安倍氏側は2015年〜2019年の5年間で、総額約2300万円をホテル側に支払った。一方で、参加者から集まった会費は計約1400万円にとどまり、少なくとも800万円以上を安倍氏側が負担したとみられる。補填(ほてん)額の大半は、政治資金収支報告書に記載されていなかった。
毎日新聞によると11月24日、安倍氏周辺は一転して不足分の補填を認めた。また、ホテル側から安倍氏の資金管理団体「晋和会」宛てに領収書が渡されていたことも明らかになった。だが、領収書は見つかっておらず、廃棄された可能性が報じられている。
否定続けた前首相
前夜祭の費用の補填疑惑をめぐって、安倍氏はこれまで、国会などで「事務所が補填した事実は全くない」「収入、支出は一切なく、政治資金収支報告書への記載は必要ない」などと繰り返し否定していた。
NHKニュースは、安倍氏周辺の関係者が取材に対し、事務所の担当者が「収支報告書に会の収支を記載していなかったため、事実と異なる内容を安倍氏に答弁してもらうしかないと判断した」と説明している、と報じている。
時事通信によると、東京地検特捜部は、安倍氏の公設第1秘書が後援会の収支報告書に懇親会の収支を記載しなかったとして、政治資金規正法違反の疑いで捜査を進めているものとみられる。
これに関連し、東京地検特捜部は安倍氏からも不記載について説明を求める必要があると判断したとみられる。
一方、安倍氏は12月3日、東京地検特捜部が安倍氏本人の任意の事情聴取を要請したことについて、記者団に「聞いていない」と述べている。
「税金の私物化」と批判 ⇒ 2020年度は中止に
「桜を見る会」を巡っては、安倍氏の後援会関係者らが多数招かれていたことで「税金の私物化だ」などと批判が噴出。招待者の選考プロセスを問題視する声が相次ぎ、2020年度は中止となった。菅義偉首相は就任後初めての記者会見で、2021年以降の中止を表明した。
前夜祭をめぐる一連の問題に、与党内からも「(安倍氏が)自らの言葉で説明責任を果たすべきだ」などと指摘する声が上がっている。