ナイキが11月末に公開した動画をめぐって論争が広がる中、海外メディアが続々とこの問題を報じている。「偏見を持っているのはナイキ」といったネット上のコメントや、ボイコットを呼びかける声などを紹介している。
デリケートな問題の議論「習慣がない」
BBCは「人種などのデリケートな問題をオープンに議論する習慣がない日本では、ナイキの広告は激しい議論を呼んだ。外国のブランドが介入すべきなのかという疑問も湧き上がっている」と掲載した。
「アジアの波に乗る 世界の新秩序の中でどう生き抜き繁栄するか」の著者スティーヴ・マクギネス氏のコメントも掲載。
「地域的な人種差別は、どんな文化でも繊細な話題だ。ナイキは、外国企業がその国の人種問題を指摘する立場にあると思うべきではない」
「ナイキは、多くの日本人が『立ち入り禁止』だと思っている場所に、露骨なスポットライトを当てた。これはナイキの大きなオウンゴールだ」
BBCは、ビジネスの視点からも言及。
人種差別に抗議するため、国歌斉唱の間にひざまずいた元NFL選手のコリン・キャパニック氏を起用したアメリカのナイキのキャンペーンで売り上げが増加した事例を挙げた。
「論争は必ずしも売上の減少につながるわけではなく、逆の効果をもたらす可能性がある」と報じている。
「偏見を持っているのはナイキ」
ロイター通信は、動画を批判するTwitterユーザーの声を取り上げた。
「今はクラスに1人や2人国籍の違う生徒はいる。仲良く通学している姿を毎日みる。偏見を持っているのはナイキ」「日本を責めるのは楽しいですか?」
ガーディアンは、テニスの大坂なおみ選手が世界を舞台に活躍する中で、「日本社会の一部で問題のある態度が明らかになった」と言及。
日清のアニメ広告の動画が、大坂選手の肌の色を白く描いたことや、お笑い芸人が大坂選手に必要なものを聞かれて「漂白剤。あの人日焼けしすぎやろ!」などと発言した問題に触れた。
ロイター通信は「日本は伝統的に、人種的に同質であることに誇りを持っているが、大坂なおみ選手のように様々な人種が混じる成功したアスリートは、そのイメージに挑戦している」と指摘している。
論争は、ある種の「啓示」
ワシントンポストは、「日本の少女たちが直面する差別を描いた広告が反発を引き起こしている」と題する記事を掲載。
「一部の日本人の国民的アイデンティティは、単一民族の国との神話に基づいている。これは、先住民族のアイヌの人々の阻害、朝鮮人や中国人、海外のルーツがある日本人や移民に対する差別をあおっている」と指摘する。
ナイキの動画への批判的なコメントとして、「人種差別の少ない日本を舞台とするCMに違和感と刷り込みを感じる」などのツイートを紹介。ナイキ製品のボイコットを呼びかける声も掲載した。
一方で同紙は、動画を前向きに受け止めるコメントも取り上げ、「ナイキを着用することへの誇りを示したり、ビデオへの反応が『この国に差別がある証拠』だとする意見もある」としている。
「議論が起こったということは、日本ではある種の『啓示』だった」と報じた。
どんな動画だった?
動画は、ナイキジャパンが11月末に公開した。
差別やいじめを受ける3人の10代の少女が、サッカーを通じてつながる。自信や楽しさを手に入れながら、悩みをそれぞれが乗り越えていくという内容だ。
動画には、在日コリアンとみられる生徒が朝鮮民族の民族衣装を着てうつむきながら街を歩くシーンや、肌の色が褐色の女子生徒が複数の生徒に囲まれて髪の毛をいじられる場面などがある。
(國崎万智・ハフポスト日本版)