池袋暴走事故、直前に何があったのか。目撃者3人が証言。元院長は無罪主張【第2回公判】

亡くなった松永さん遺族も審理に参加。公判後、報道陣に対して飯塚幸三被告について語った。
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池袋事故/横転したごみ収集車(2019年4月)
時事通信社

東京・池袋で2019年4月、車を暴走させて母子2人を死亡させ、他9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告の第2回公判が12月3日、東京地裁であった。

時事通信が報じた起訴状の内容によると、飯塚被告は2019年4月19日、ブレーキと間違えてアクセルペダルを踏み続け加速。赤信号を無視して横断歩道に進入し、松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(同3)をはねて死亡させたほか、9人に重軽傷を負わせたとされる。

産経新聞によると、飯塚被告は10月の初公判で「アクセルペダルを踏み続けた記憶はない、車に何らかの異常が起きたと思います」と述べ、無罪を主張している。

第2回公判では、事故当時に車やバイクで現場付近を走行していた3人の目撃者に対する証人尋問があった。

3人とも、検察側の尋問に対して、事故の最中に「飯塚被告の車のブレーキランプは点灯していなかった」と証言した。

3人の証言から、事故当時や直前の様子を振り返る。

▽クリーニングの集配で車を運転していた男性

男性は、交差点を左折して事故が起きた道路に進行。前方の交差点が赤信号で停止しようと減速すると、左側から飯塚被告が運転する車に追い抜かれたという。

その時の様子を問われて「ビューとすごい音が聞こえた」「暴走車かと思った」と説明。速度については「相当出ていた」と証言した。

その後、飯塚被告の車が赤信号の交差点に進入し、横断歩道を渡っていた自転車をはねたのを目撃したという。

様子を問われると「(乗っていた人は)上に上がって、地面に叩きつけられた。自転車はどこに飛んだか分からなかった」と述べた。

その間、ブレーキランプが点灯していたかについては「一度もなかった」と答えた。

▽バイクを運転していた男性A

バイクを運転していた男性は、前述の集配車の男性の後方を走行していた。現場近くを走行中、飯塚被告の車に左側から追い抜かれ、前方に車線変更してきたという。

様子について問われると「違反して逃げているのではないかと思った」と印象を説明。自身が時速50キロ前後で走行していたと触れ、「けっこうなスピードで割り込んできた」と述べた。

飯塚被告の車が、前方の集配車をよけるため左側に車線変更した後、道路の縁石とタイヤが当たった音が聞こえたという。

その時のスピードについて問われると「縁石に当たっても速度が落ちず、アクセルを踏んでいると思った」と証言。そのまま、赤信号の交差点に進入したという。ブレーキランプの点灯については「なかった」と述べた。

男性は続いて、事故現場となった2つ目の交差点の様子についても証言。

飯塚被告の車は進行を続け、交差点内で「左側から進行してきたゴミ収集車にぶつかり、見えなくなった」と説明。男性は一つ目の交差点で停止しており、100メートルほど離れた距離からでも、事故の様子は目視で確認できたという。

▽バイクを運転していた男性B

バイクを運転していた別の男性も、同じ道路を走行中に飯塚被告の車に追い抜かれた。

「前方に割り込むような形で煽り運転のようだった。自分を止めようとしているかのような印象があった」と説明。飯塚被告の車が一つ目の交差点で自転車をはねた後、「止まる気配がなく、加速していた」と述べた。

2つ目の交差点の様子について「何かが飛んだのを見た直後、左から来たゴミ収集車とぶつかった」と語った。減速する様子やブレーキランプ点灯は「なかった」と証言した。

3人の証人尋問が終わり、この日は閉廷。次回期日では、弁護側の主張などが審理される予定。

松永さん遺族も審理参加。語った被告の印象。

亡くなった松永真菜さんの夫拓也さんらは、被害者参加制度を利用し、初公判に続いて審理に参加。公判終了後、報道陣の取材に応じた。車いすで出廷し、終始うつむき加減だった飯塚被告の様子について、次のように語った。

 「初公判で私の調書が読み上げられた時、一度も顔をあげなかったのに、(法廷内のモニターに)事件の見取り図が出た時だけ顔を上げる人なんだと思いました。おそらく自分が事故を有利になるためにはということを頭にめぐらせていたのではという印象を受けました」

松永さんの父親、上原義教さんは、証言を聞いて「娘は痛い思いをしただろう。辛かっただろう」と無念を訴えた。