『習近平氏の顔に墨汁』かけた女性、動画で現状を告発か。政府の監視下で「心が壊れてしまいそう」

「私は今、自身の自由を手に入れたいから喋ります。なんの自由かというと、仕事の自由や、友人と付き合う自由です。今は何の自由もない。すべて制限されています」

中国・上海で2018年7月、習近平国家主席の写真に墨汁をかけたとして、精神病院に入れられていた本人とみられる女性がTwitterに動画をアップし、政府の実質的な監視下に置かれている現状を告発した。

女性は現在、政府機関で仕事をしているというが「実際はただ監視下に置かれているだけ、もう耐えられない」などと語っている。

Open Image Modal
董瑤瓊さん本人とみられる女性(Twitterにアップされた動画より)
Twitterにアップされた動画より

■「もう耐えられない」

董瑤瓊(ドン・ヤオチョン)さんは2018年7月、上海市で「習主席と中国共産党の独裁、暴政に反対する」などと叫びながら、3度に渡って習氏の写真の顔に用意していた墨汁をかけた。

董さんはこの様子を自ら動画に収め、ネットで配信していた。

董さんはこのあと、中国当局により精神病院に入院する手続きを取らされ、父親も軟禁されるなどの処分に遭っていた

その後、2020年1月に退院していたことがアメリカ政府系メディア「ラジオ・フリー・アジア」によって報じられていたが、顔はむくみ「お父さん」という言葉しか発せない状態だった。

董さん本人とみられる女性が動画をあげたのは日本時間の11月30日。ツイッターで「みなさんこんにちは、私は董瑤瓊本人です。今ツイッターをしています」と呼びかけた。

その上で現状について、現地の政府機関で仕事をするよう手配されたと説明。しかし「実際はただ監視下に置かれているだけです。なぜならどこへ行こうとも制限がかかるうえ、仕事も電話をかけたりする程度だからです」とした。

そして「また精神病院に入れられてもいいし、一生出られなくてもいい。だけど私は今、自身の自由を手に入れたいから喋ります。なんの自由かというと、仕事の自由や、友人と付き合う自由です。今は何の自由もない。すべて制限されています。父親とも連絡が取らせてもらえない」と訴えた。

動画の最後では涙ぐみながら「もうこんな生活は嫌です。死んだほうがましです。常に監視されているのはもう耐えられない。心が壊れてしまいそうです。注目してくれてありがとう。今晩ツイッターで発信したことで、どんな結果があるのかは考えませんが受け入れます。私が聞きたいのは、私は何か誤ったことをしたのか、違法なことをしたのかです。もしくは、精神に何か問題があるのかです。墨汁をかける前は上海で仕事をしていました。精神に問題があるか、その時の同僚に聞けばいい」と話した。

動画には、董さんの父親と連絡を取り続けてきた人権活動家・欧彪峰(オウ・ビャオフォン)さんも引用リツイートで「自身をお大事に...」とコメントしている。

この動画は、香港・アップルデイリーラジオ・フリー・アジア、それにドイツの国際放送ドイチェ・ベレ中国語版などが報道。ドイチェ・ベレは「本人による動画だ」としている。

董さんとみられるTwitterアカウントは、ほかにも文章でツイート。「当局は国を挙げて私の自由精神を殺そうとしています。私はどこが間違えているのか。違法ならば牢屋に入るし、精神に問題があれば医者に鑑定してもらいたい。なぜ精神病院で医者は“何の薬を飲みたいですか”と聞くのか。医者は私のどこが病気が知らないのでは」などとつづった。

動画とツイートは1日夜までに削除された。