同性婚に賛成する人が64.8%に上り、20代〜30代では8割を占めることが、広島修道大学の河口和也教授らの研究班による調査で分かった。11月29日の報告会で、2019年の調査結果が発表された。研究班は4年前にも性的マイノリティについての意識調査を実施しており、当事者に対して抵抗感を抱く人が前回に比べて減少していることも判明した。
調査は、「性的マイノリティに対する一般市民の寛容な認識が必要である」との立場から、当事者たちに対する意識の把握を目的に行われた。
<調査の概要>
前回(2015年):20〜79歳の男女、有効回答者数1259人
今回(2019年):20〜79歳の男女、有効回答者数2632人
仲の良い友人なら「抵抗感」、40代〜50代で大幅減
仲の良い友人が同性愛者・両性愛者・性別移行をした人だと分かったら「抵抗がある」と回答した割合は、2015年の半数から3分の1に減少した。年代別では、特に40〜50代で大きく減少した。
「身近な人が同性愛者だった場合、どう思うか」を尋ねる質問では、2015年と比較し、「近所の人」「同僚」「きょうだい」「子ども」の関係別ではいずれも「いやだ」と答える割合が減少した。
一方で、「きょうだい」や「子ども」の場合は半数以上が「嫌だ」「どちらかといえば嫌だ」と回答した。
▼「いやだ」と答えた人の割合【関係別】
「近所の人」(前回39.4%→今回27.6%)
「同僚」(41.8%→28.3%)
「きょうだい」(66.9%)→(53.1%)
「子ども」(72.4%)→(61.2%)
▼今回「いやだ」と答えた人の割合【男女別】
「きょうだい」 男性60.4%(9.9ポイント減)、女性46.9%(17.1ポイント減)
「子ども」 男性67.7%(8.1ポイント減)、女性55.5%(13.9ポイント減)
男女別では、特に女性の減少幅が大きかった。
「身近な人が性別を変えた人だった場合、どう思うか」を尋ねる質問でも同様の結果が見られ、きょうだいや子どもという家族にあたる関係だと依然として半数近くが「いやだ」と感じている。
「いやだ」は拒絶だけではない
減少傾向にあるとはいえ、きょうだいや子どもという近い関係だと依然として過半数が抵抗を感じている。
研究班の国立社会保障・人口問題研究所の釜野さおり氏は、「単に『悪いもの』『やめてほしい』というよりも、分からないことと向き合わなくてはならず『どうしよう』という感覚があるのもしれません。拒絶的な気持ちだけでなく、『心配』もあると考えられます」と指摘する。
「親としてどうすれば分からないと考えたり、性的マイノリティである自分の子どもの人生を想像したときに心配という気持ちが重なったりして、否定的な選択肢を選ぶ可能性も考えられます。家族という簡単に切れない同士の関係であるがために、葛藤も大きくなるのではないでしょうか」
同性婚の賛成、20〜30代では8割に
同性婚の賛否を問う質問では、全体の64.8%が「賛成」「やや賛成」と回答し、前回より13.6ポイント増加した。
賛成派は、年代別では20〜30代では81%、40〜50代74%、60〜70代47.2%で、若年層ほど割合が高かった。
前回と比べて増加幅が最も大きいのは40〜50代で、19ポイント増だった。
いじめ禁止の法整備、賛成多数
性的マイノリティに対するいじめや差別を禁止する法律・条例の制定について、87.7%が「賛成」と答えている。
日本にはこうした法律がない中、性的指向や性自認を理由とする差別を禁止する法律を求める国際署名のキャンペーン「Equality Act Japanー日本にもLGBT平等法を」が10月からスタートしている。
法整備は海外でも進み、80か国以上が法律を制定。アメリカのジョー・バイデン次期大統領は、性的少数者を差別から保護する「平等法」の成立を最優先課題として取り組み、就任後100日以内の署名を目指すとの公約を明らかにしている。
このほか、親が育てられない子どもを、養子や里子として迎え、育てることのできる制度について全体の69.9%が賛成と回答した。
「同性愛」「両性愛」「体の性別を変えたいと望む人」のことを義務教育で教えることについて、いずれも賛成が大幅に上昇し、過半数を超えた。
置かれた環境「改善した」
性的マイノリティについての意識を尋ねる今回の調査項目は、ほぼ全ての項目で「無回答」の割合が減少した。
これについて、調査メンバーの平森大規さんは、「前回と比較して、『何を聞かれているのか、なぜ聞かれるのかが分からない、考えたことがないので答えられない』という人が少なくなった可能性がある」と見ている。
さらに、当事者への抵抗感や同性婚への賛同など、前回に比べて肯定的な意見を持つ人の割合が増加傾向にある。釜野氏は「一つの施策のみが飛び抜けて支持されているのではなく、知識や感情の部分など、全般の意識において変化があったという印象」と評価する。
「調査への回答に表れる意識も性的マイノリティの置かれた社会環境の一部であると捉えると、性的マイノリティの置かれた社会環境が『改善した』と言えるのでは、と考えられます」 としている。
調査結果の出典:
釜野さおり・石田仁・風間孝・平森大規・吉仲崇・河口和也
2020 『性的マイノリティについての意識:2019年(第2回)全国調査報告会配布資料』 JSPS科研費(18H03652)「セクシュアル・ マイノリティをめぐる意識の変容と施策に関する研究」(研究代表者 広島修道大学 河口和也)調査班編