性的同意アベマ番組に批判「女性が気をつければいいだけ」などの発言

専門家不在で議論され、「性暴力の被害者をよりいっそう追い詰めるような発言」などの声が上がっている。
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ABEMA的ニュースショー
ABEMA公式サイトより

ABEMAの番組「ABEMA的ニュースショー」で11月15日に放送された「“性的同意”こんなに違う男女の認識」で、詳しい専門家がいないまま、被害者の視点など多様な議論がされずに展開され、批判が集まっている。 

 

キスしても、家に泊まっても、性的同意ではない

番組は、MCを千原ジュニアさん、進行をテレビ朝日の三谷紬アナウンサーが担当。このコーナーには、ジャーナリストの山路徹さん、文筆家の古谷経衡さん、タレントの菊地亜美さん、お笑い芸人の木本武宏さん、「週刊SPA!」副編集長の田辺健二さんが出演した。

日本学術会議が出した「同意のない性行は犯罪とすべき」などという提言を取り上げ、京都市男女共同参画推進協会作成の、性的同意にはならない行為のチェックリストを紹介。「キスをしたら、性行為をしてもいい」「家に泊まるのは、性行為をしてもいいというサインだ」など10項目があると解説した。

現行の強制性交等罪は「暴行・脅迫」が成立要件となっており、性被害に遭っても犯罪の成立要件を満たさず、罪に問えないケースが問題となっている。法務省は3月、弁護士や検事、被害者などでつくる検討会を設置し、要件の見直しや、同意のない性交を罰する不同意性交罪新設の是非などを議論している最中だ。

2019年3月に相次いだ4件の性暴力事件の無罪判決をきっかけに、性暴力に抗議するフラワーデモが広がり、性的同意に関する関心が高まっている。 

朝日新聞によると、ドイツやスウェーデンなど、同意のない性行為をレイプ罪と法律で規定する国は増加している。

番組ではVTRで弁護士の話として、学術会議の提言の根幹は「今救いきれていない類型を犯罪として処罰することができるんじゃないかといったところ」だと説明。活動団体が作成した、具体的に同意を取る方法を紹介した動画を流した。

「しかし、現実はどうなのか」とし、街頭インタビューから男女間で意識に差があることが分かると解説。カナダ出身の男性タレントはVTRで「No means No.」「NoはNoです」「最初Yesでも、途中でNoになったらNoになります」などと話した。

 

専門家が不在の中、議論が進む

画面がスタジオに切り替わり、千原ジュニアさんは「NoはNoというのはね、あれすごく分かりやすくて」とカナダの例を称賛。しかしこの後、スタジオに性的同意に詳しい専門家はいない状態で議論が進む。

出演者が自ら行ったチェックリストを紹介し合う中では、古谷経衡さんは全ての項目にチェックを入れ、さらに「『嫌』だったらNoなんですけど、『ダメ』っていう子がいるんですけどそれはいい」などと発言。その後も持論を展開し、三谷アナウンサーが「人生を改めてほしい」と返すと笑いが起こっていた。

その後山路徹さんは「(家に来たとしても)実際そういう行為に及ぼうとした時に相手がやめてと言ったらそこでやめるべき」とコメント。菊地亜美さんは家に行くことなどは性的同意になりかねないと感じるとしつつも、「本当にそういうつもりで行ってないのに、断れなかったから違うよっていう人も多分いると思うので、NoはNoってことですね」とまとめた。

 

女性が気をつければいいだけ?額面通りNOって受け取るとチャンスを逃す?

しかし、この後三谷アナウンサーは「そもそもリスクがあることをちゃんと分かった上で女性は動かなきゃいけないと思うんですよ。全部が男性が悪いってなってること自体がおかしいと思う」「女性が気をつければいいだけの話」などとコメント。

また、「週刊SPA!」副編集長の田辺健二さんは「恋愛テクニシャンの人は雰囲気でいける」などとした上で、こう話した。

「OKという意味での『イヤ』っていうのは確かにあるらしいんですよ。SPAでもそういうテクニシャンな女の子が出てくるんですけど」

「何でもかんでも厳密に同意を取りましょうという時代になったら、実はチャンスなのに、そのイヤは実はOKなのに、額面通りNOっていう風に受け取ってしまってチャンスを逃すっていうパターンが出てくる。だから、非常に恋愛弱者とってはむちゃくちゃ生きづらい時代になるとは思うんですね」

 そして、再び三谷さんが「私はですね、女性がリテラシーを高く持てばいいだけの話だと思うんですこれは。何に対してもリスクがあるんだから、家に行かなければいい話だし、2人で飲みに行かなければいいだけの話じゃないですか。その人としたくないんだったら。だからこんなチェックリストを作っているだけでバカバカしいなって思ってしまいますね」とコメントしていた。

 

「性暴力の被害者をよりいっそう追い詰めるような発言」

番組内では「No means No」という考え方やチェックリストなどを紹介はしたものの、額面通りに受け取ることはチャンスを逃すといった意見や、被害に遭わないよう気をつければ済むという、被害者に落ち度があるかのような意見などが明確に否定されることはなかった。

こうした議論についてツイッターでは、「性暴力の被害者をよりいっそう追い詰めるような発言」と批判が高まっている。他にも「絶句した」「不勉強すぎ」「恋愛関係になりたい人としか飲みにも行けないのか」などといった声がある。

一つでも当てはまるなら、“性的同意”は取れていないチェックリスト(京都市男女共同参画推進協会作成のガイドブックより)

 

1. 二人きりでデートに行くことは、性行為を前提としている

2. キスをしたら、性行為をしてもいい

3. 相手がイヤと言っていても、「イヤよ、イヤよ、も好きのうち」なので、性行為をしていい

4. 相手がイヤと言ってなかったら、性行為もOKのサインである

5. 酔った勢いで、性行為に及ぶのはしかたがない

6. 互いに成人していれば、性行為の際に同意を求める必要はない

7. 家に泊まるのは、性行為をしてもいいというサインだ

8. 付き合っていれば、性行為をするのは当たり前だ

9. 同じ相手に、毎回、性行為の同意を取る必要はない

10. ナイトクラブに来る人は出会いや性的交遊を求めてくる人が多いので、同意を取る必要はない