総務省は10月27日、携帯電話の契約先を乗り換える際にカードの差し替えが不要な「eSIM」機能を普及させるなどの政策を盛り込んだ『アクション・プラン』を発表した。
携帯料金の値下げは菅義偉首相率いる今の政権が目玉政策のひとつに掲げているが、各携帯電話会社が同プランに対応することで割高という声もあがっている携帯電話料金の値下げを促す狙いがある。
いったいどんなプランなのか。大きく3つに分かれている重要ポイントを詳しく解説する。
具体的に示されたのは「3つ」の柱
まず総務省は公表資料で、携帯電話について「国際的に遜色がない水準で国民・利用者にとって分かりやすく納得のできる料金・サービスの実現が必要」と説明している。
発表された『アクション・プラン』は、携帯電話市場での公正な競争環境の整備を目的としたものだ。
具体的な取り組みは、3つの柱に分けて紹介されている。順番に見ていこう。
①第1の柱
分かりやすく、納得感のある料金・サービスの実現
「第1の柱」は、利用者へのプランやサービスの説明についてだ。
「過度に複雑な料金プランやサービスは、利用者の正確な理解や適切な選択の妨げ(る)」とした上で、「公正な価格競争は、利用者が料金やサービスの内容を理解できることが前提」と記載されている。
具体的には、消費者の一層の理解を促す為にポータルサイトを年内に構築するとしている。
総務省の担当者はハフポスト日本版の取材に「ポータルサイトの構築は、利用者にとって分かりやすい手続きマニュアルのようなページを作るということです」と説明した。
プランではポータルサイトの構築のほかに、誤解を与える表記の是正や通信料金・端末代金の完全分離について触れ、「利用者の理解を助ける」ことが強調された。
② 第2の柱
事業者間の公正な競争の促進
「第2の柱」は、ネットワークの使用料(接続料など)について言及。
「ネットワークの使用料(接続料等)は、※MVNOによる料金設定を左右」するとして、「適正性の十分な確保が必要」だと説明。
※MVNO=「Mobile Virtual Network Operator」の略称。通信サービス料金の安い「格安SIM」を提供している事業者のこと。(NTTコミュニケーションズ公式サイトより)
資料ではデータ接続料について、情報通信審議会における審議状況を注視しつつ、2020年度から3年間で昨年度比で5割減を目指し、「5G時代」の接続料の算定の在り方などについて検討を行うとしている。
この検討は2020年度内にはじめ、2021年の夏を目処に一定の結論を出すとしている。
③ 第3の柱
事業者間の乗換えの円滑化
「第3の柱」は、携帯電話の乗り換えに関する項目だ。
「加入している契約に過度に縛られずに乗り換えられる環境の整備が重要」として、過度な契約期間での拘束や引き留め、固定と携帯のセット割引による過度な囲い込みなど課題があるとして、乗り換えにかかるコストを下げるための取組みが必要と説明された。
特にSIMについては、以下のような2つの提言が見られた。
・SIMロック解除の推進
・※eSIMの促進
※eSIMとは「Embedded SIM」の略で、組み込み式のSIMカードのこと
NTTコミュニケーションズ公式サイト『意外と知らない?ITトレンド用語』より
SIMロック解除については、2019年11月に行われた「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」の改正により、一定の条件を満たせば端末の購入時に解除可能だが、「利用者が十分に認知しておらず、今なお不要なSIMロックが解除されないままとなる例がある」として、解除の推進がプランに盛り込まれた。
一方、eSIMの促進については、利用者がより手軽に事業者やサービスを乗り換えることができるよう、スマートフォン向けのeSIMサービスの提供を促進するための検討を行うとした。
2020年秋以降に検討の場を設け、2021年の夏までにガイドラインを策定し公表したい考えだ。
プランで示した取り組みについて、総務省の担当者はハフポスト日本版の取材に「それぞれ示した行程のとおりに実施し、利用者により適切に携帯電話を使用して頂くための努力をして参ります」とコメントした。
菅首相が「国民に実感として味わっていただく」とまで語り意欲を示している携帯料金への値下げ。プランが円滑に遂行されるのか注目される。