菅義偉首相が野党時代、「公文書の作成は、政党の主義主張とは全く関係のない、国家運営の基本」などと記していたブログ記事をめぐり、ネットで波紋が広がっている。同じく野党時代に発刊し、10月に改訂された自著では、公文書管理の重要性を訴える記述があった章が削除されたことが問題になったばかり。SNSでは「今となっては『どの口が言うのか』ですが…」「特大ブーメラン」「ブログに書いてあることはもっとも。消さないで」といった声も上がっている。
ブログ、どんな内容だった?
ブログ記事は<議事録も作成しない「誤った政治主導」>と題し、日付は2012年1月28日となっている。東京電力福島第一原発の事故後に作られた政府の原子力災害対策本部が、議事録を残していなかったことが明らかになり、当時の民主党政権に批判が上がっていた。
菅氏のブログは、この問題をめぐる当時の政府の対応を批判する内容だ。記事では議事録を作成していなかったことを「歴史的な危機に対処していることへの民主党の意識の薄さ、国家運営への責任感のなさが如実に現れています」などと指摘。さらに、公文書に関して次のように持論を展開した。
<公文書の作成は、政党の主義主張とは全く関係のない、国家運営の基本です>
<議事録作成という基本的な義務も果たさず、「誤った政治主導」をふりかざして恣意的に国家を運営する民主党には、政権を担う資格がないのは明らかです>
自著の改訂版では削除
自民党の安倍政権では、森友・加計学園、桜を見る会で公文書の改ざんや隠蔽、桜を見る会などをめぐって公文書管理の問題が度々浮上していた。
ブログ記事が話題になっているのは、20日に発売された菅氏の自著では、改訂前にあった公文書管理の重要性を強調する記述が削除されていたためだ。
発売されたのは、首相が野党時代の2012年3月に刊行した著書「政治家の覚悟」(文芸春秋)の改訂版。<政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為であり、歴史的な危機に対処していることへの民主党政権の意識の薄さ、国家を運営しているという責任感のなさが如実に現れています>などと記していた章が、改訂版では削除されている。
こうした経緯から、ネットでは菅氏のブログ記事について「削除される前にスクショで残しておいた」などと「証拠残し」を報告する人が相次いでいる。
<ブログ全文>
菅氏が公文書管理をめぐって記したブログ記事の全文は以下のとおり。
今週、東日本大震災に対応するために立ち上げた多くの会議で議事録が作られていないというずさんな実態が、次々と明らかになりました。
歴史的な危機に対処していることへの民主党の意識の薄さ、国家運営への責任感のなさが如実に現れています。
公文書の作成は、政党の主義主張とは全く関係のない、国家運営の基本です。
公文書管理法では、記録を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とし、意思決定に至る過程の文書を作成することを義務付けています。
1000年に一度という大災害に対して、政府がどう考え、いかに対処したかを検証し、そこから教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録はその最も基本となる資料です。
それを作成していなかったのは明らかな法律違反であるとともに、国民への背信行為です。
人類が原発事故を二度と起こさないために、事故が起こった原因、被害の拡大を防げなかった理由を徹底的に究明することは、国民や世界に対し、国が果たすべき重要な責務です。
しかし、福島第一原発の事故に対処した原子力災害対策本部でも議事録は残されていませんでした。
これでは国会の事故調査委員会の検証にも支障が出るのは避けられません。
議事録のないことは昨年5月の時点で問題になって、当時の枝野官房長官は改善を約束し、野田総理もこのことを十分認識している立場にあるにもかかわらず、
その後も作成されずに、23回にわたる昨年末までの原子力災害対策本部の議事録は一切残されていません。
これでは、民主党政権のが自らの失敗を隠そうとしたと疑われるのは当然です。
総務大臣を務めた私の経験からしても、官僚は法令順守意識が高く、政治家に聞きもせずにこのように基本的な事柄を放置するとは到底考えられません。
事実、震災から1ヶ月後の4月の時点で、全省庁の官僚のトップである官房副長官が、文書の作成と保存の徹底を指示しています。
民主党は野党時代に政府の文書管理の不備を責め、情報公開を声高に叫んでいました。
しかし政権交代後、政治主導の象徴とした政務三役会議など、政策決定過程の多くは非公開で議事録も作成されず、「密室政治」となっています。
議事録作成という基本的な義務も果たさず、「誤った政治主導」をふりかざして恣意的に国家を運営する民主党には、政権を担う資格がないのは明らかです。
国会の審議で厳しく質してまいります。