男性育休「取得しやすくする制度を」菅義偉首相が意欲。育児の男女分担で少子化に歯止めかける狙い

識者は「大きな前進」と評価。全世代型社会保障検討会議では、不妊治療の保険適用や、保険適用が実現するまでの間の助成措置の拡充などについても議論した。
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全世代型社会保障検討会議で発言する菅義偉首相(右端)。右から2人目は西村康稔全世代型社会保障改革担当相=首相官邸
時事通信社

政府の全世代型社会保障検討会議が10月15日に行われ、菅義偉首相は産後に男性の育休取得を促す制度の導入について検討することを明らかにした。年内に最終報告をまとめる。

「出産直後の時期に、男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入を図ります」

少子化対策について話し合われた同日の会議。菅義偉首相は、不妊治療の保険適用の早急な検討や、保険適用が実現するまでの間の助成措置の拡充などについて語った後、男性育休についてこう言及した。

政府では、出産直後の一定期間を「産休期間」として、従来の育児休業よりも給付金を上乗せしたり取得手続きを簡易化したりすることが検討されている。

出産直後に男性が育休を取得して育児に関わることで、母体保護や産後うつの予防などの効果が見込まれるほか、育児の男女分担を進めて次の出産につなげやすくする狙いがある。

女性の育休取得率は83%なのに対し、男性は7.48%(2019年度)と低い水準に留まっている。政府は「25年に男性の取得率30%」を目標とするが、現状は遠く及ばない状況だ。

夫の家事・育児時間が長いほど、第2子以降の出生につながりやすいというデータもある。内閣府の「少子化社会対策白書」によると、夫の休日の家事・育児時間が「なし」の場合、第2子以降の出生は10%にとどまっているが、家事や育児に関わる時間が増えるほど、出生割合は増加している。

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全世代型社会保障検討会議の資料より
HuffPost Japan

5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」を踏まえ、厚労省の労働政策審議会ではすでに企業へ制度周知の義務化などをめぐる検討が始まっているが、有識者からは「義務化」に慎重な意見が出ていた。

全世代型社会保障検討会議では、出席した経済界の委員からは、男性の育休取得推進は経営戦略として重要だという声や、有価証券報告書への取得率記載義務付けなどを提案する声が上がったという。

会議は今後、年金や医療についても議論し、年内に最終報告を取りまとめる予定。早ければ2021年の通常国会で育児・介護休業法の改正案として提案される。


首相の発言は「大きな前進」

識者はこの発言をどうみたのか。

男性の育休義務化などについて提言を続けているワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長は首相発言について「今回、菅総理が『出産直後の時期に、男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入』を明確に指示したことは、大きな前進です」と評価している。

「産後の妻の死因の一位は自殺であり、産後の最も辛い時期を支える男性の育休は妻の命を救い、2人目以降の出生率をあげ、少子化を解決する大きな一歩となります」