コロナ禍で旗揚げし、フルリモートで演劇作品を上演してきた劇団ノーミーツが10月13日、学生を対象にした「全国学生オンライン演劇祭」を開催すると発表した。
学校現場でも多くの行事が中止・縮小されている2020年。
リモートでの作品作りは「会うより、ずっと密だった」と振り返る主宰の広屋佑規さんは、「学生にもそれを感じてほしい」と前例のない演劇祭の開催理由を説明する。
「ひとつのものを作り上げる経験は、会わなくてもできる」
劇団ノーミーツは、東京都などに緊急事態宣言が出された直後の4月9日に結成。稽古から上演まで一度も会わずに活動し、新たな表現の可能性を探ってSNSへの演劇作品投稿、長編リモート演劇の公演をオンラインで行ってきた。
オンライン演劇祭開催のきっかけは、学生から「文化祭が中止になってしまった」「行事がなくなっている中で、ノーミーツの活動が励みになる」などと聞いたことだった。
「僕たちは会わずに作ることをコンセプトにやってきましたが、その中で『会うより、ずっと密だ』と感じたんです。それを学生の方にも感じてほしいと思いました」
オンラインでの演劇というのは、コロナ禍以前は事例がなかった。集まったノーミーツのメンバーたちは夜な夜な、どう作品を作るかzoomなどで会議を続けた。稽古もずっとオンライン。休憩時間のおしゃべりも、帰り道でふらっと一緒にご飯に行くということもない。
そうした中で、何が起こったか。
「会えないからこそ、コミュニケーションを丁寧にしよう、どうやったら伝わりやすいか考えよう、積極的に話す機会を持とう、という動きが出てきたんです。そういう意味で、普通に会って稽古していた時よりも密だと感じましたし、仲良くもなれたと感じました」
「みんなでひとつのものを作り上げる経験は、会わなくてもできる。いろんな行事が中止になる中で、学生たちが経験できる場を作りたいと思ったんです」
「学生の想像力に期待」
応募資格があるのは中学生から大学生まで。1〜30分の、参加者が一度も会わずに作られたオンライン演劇作品が対象だ。作品の作り方の例も、公式サイトで公開している。
11月1日から2021年1月31日まで作品を募集。動画として提出した作品を劇団ノーミーツが予選として審査し、3月末の決勝大会では生配信を行うという。
決勝大会の審査員はCMディレクターの中島信也さんや、劇団「柿喰う客」代表の中屋敷法仁さんらがつとめる。優勝者は、劇団ノーミーツとの作品制作ができる。
「ぜひ、新しい経験を面白がってほしい。いろんなタイプの作品が出てくるのではないかと楽しみです。学生たちの想像力に期待しています」