10月11日は、国連が定めた「国際ガールズ・デー」。性別や年齢を理由に、差別を受ける途上国の女の子たちの問題に焦点をあて、「女の子の権利」や「女の子のエンパワーメント」の促進を、国際社会に呼びかける日だ。
そこで今回は、世界各地で生きる、10代の女の子たちの“今”を知ることができる、映画やドキュメンタリー、ドラマを紹介。Netflix等で配信中のものや、劇場で観られるものから、5作品を選んだ。
『ピリオド -羽ばたく女性たち-』
Netflixで配信中のドキュメンタリー『ピリオド -羽ばたく女性たち-』。
舞台は生理がタブー視されるインドの地方の村。冒頭、ある女性が、生理の時に男性の視線を気にし、遠く離れた場所で経血の処理しなければならず、結局学校を中退した経験を明かす。生理が理由の中退は、特段に珍しいことではないという。月経の期間、女性はお寺でお参りすることもできず、1人の男性は「生理は女性の“病気”」だと言う。
そんな環境で女性たちは、安価で衛生的な生理用ナプキンを製造・販売し、経済的・精神的な自立を目指して立ち上がる。
本作は、 第91回アカデミー賞の短編ドキュメンタリー映画賞を受賞。製作者は「生理は、教育を妨げるものではいけない」とスピーチした。生理の映画がオスカーをとるというこの快挙に、多くの女性が喜びの声をあげた。
『アンオーソドックス』
Netflixで配信中、4話完結のドラマ『アンオーソドックス』。ユダヤ教宗派の中でも、特に敬虔な超正統派(ウルトラオーソドックス)のコミュニティが、ニューヨーク・ブルックリンに存在する。本作は、このコミュニティで育った作家のデボラ・フェルドマンの実体験をもとにしている。
18歳でコミュニティ内の計らいによってほとんど強制的に結婚をした主人公エスティ。女性は禁欲的な服を身につけ、夫以外に地毛を見せることができず、髪を剃りカツラをかぶって生活をする。そして毎週金曜日には、夫との性行為を“義務”のように行わなければならない。
結婚から1年後、エスティはその生活から逃れるために1人ベルリンに向かう。新しい友人と音楽と出会って自分の人生を新たに始めるエスティ。しかしそこに、夫たちが追いかけてやってくる。
女性の権利を奪うような戒律を遵守する超正統派の人々。ただし本作ではそれを単純に“悪”にすることをせず、そこに生きる人々の困難さや葛藤にも光を当てている。
『ブックスマート』
10代の女の子をエンパワーメントする、アメリカ映画やドラマの良作はこの数年多く作られている。俳優のオリヴィア・ワイルドの監督作品『ブックスマート』は、成績優秀な女子高生2人組が、卒業前夜に繰り広げる騒動を描いたティーンコメディ。劇場公開中だ。
政治やジェンダー、環境問題に強い関心を持つこの高校生たちは“Z世代”。主人公の女の子2人はフェミニストで、部屋にはRBGことルース・ベイダー・ギンズバーグやミシェル・オバマ、作家ヴァージニア・ウルフのポスターや写真などを貼っている。1人はレズビアンで、同級生に片思いしている。
主人公2人のシスターフッドや人種的なステレオタイプを排した魅力的なキャラクター作り、そして、“スクールカースト”のない新しい学園ドラマとして高く評価された。テイラー・スウィフトもおすすめの1作。
『パピチャ 未来へのランウェイ』
「暗黒の10年」と呼ばれた1990年代のアルジェリア内戦時代を舞台にした映画『パピチャ 未来へのランウェイ』。過激派のイスラム原理主義勢力が台頭し、首都アルジェでは、女性にヒジャブの着用を強要するポスターがいたるところに張り出されていた。
本作は、その中でデザイナーを夢見て、命がけでファッションショーを開こうとする少女の視点から、性差による抑圧や解放を描いている。
日本ではあまり知られていない、“遠い国”であるアルジェリア。しかし、世界経済フォーラムが発表する、ジェンダーギャップ指数で、日本121位、アルジェリア132位と、そう遠くはない。好きな服を着て、自分のために勉強し働くことすら困難な中で、少女は悲劇にさらされ絶望し、それでも前を向く。
本作は、2019年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、フランスの映画賞でも、新人監督賞と有望若手女優賞に輝いている。一方で、同年にアルジェリア国内では政治情勢が不安定であることが理由で上映中止となり、未だ映画の公開ができていない。日本では10月30日より公開。
『COMPLETE WOMAN』
ジャーナリストの伊藤詩織さんが撮影・監督したドキュメンタリー作品『COMPLETE WOMAN Episode1-Story of Fatamata(完全な女性 エピソード1・ファタマタの物語)』が、Yahoo!のドキュメンタリー動画配信サイトで配信中だ。
西アフリカのシエラレオネ共和国で伝統として行われている「女性器切除(FGM)」。この国の約90%が、女性器を切除されるという。FGMは、主に女性の貞操を守ることを目的としており、医学的な根拠もなく行われ、時には命を落とす危険もある。
作品では、切除の儀式を受けた女性、受けなかった女性、儀式を行う女性や現地ジャーナリストなどへの取材を通して、伝統と性暴力の狭間にある葛藤や闘いを描いている。