子どもの「精神的幸福度」37位の、日本。救いの手が差し伸べられる日は来るのか

「精神的幸福度」は38カ国中37位の日本の子供たち。なぜこの国は、子どもたちの声をもっと取り上げないんだろう。
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日本の子どもたちは、不幸だ。 

ユニセフからこんな悲報が届いたのはつい先日のこと。『レポートカード16』によると、日本の子どもたちの「身体的健康」は、映えある第1位。それにも関わらず、「精神的幸福度」は38カ国中37位。下から2番目なのだ。

 

「日本の子どもたちは健康なのに不幸」。

この調査からは、残念ながらそう読み取れる。

 

いったいなぜこんな結果になったのだろう。わたしはこの疑問に対し、「大人が子どもの幸福に無関心だから」と答えたい。

 

なぜこの国は、子どもたちに対してもっと本気にならないのだろう?

ステイホーム期間、多くの芸能人がYouTubeチャンネルを開設した。そのなかでもゲーム実況はとくに人気があるジャンルで、狩野英孝さんがTwitterのトレンド入りを果たしているくらいだ。

その一方で、香川県では3月18日、18歳未満を対象にしたネット・ゲーム依存症対策条例が可決された。。大人たちが毎晩のように数時間楽しそうにゲームをやっているのを見て、香川県の子どもたちはいったいなにを感じたのだろう。

 

それだけじゃない。修学旅行や遠足が自粛されるなか、Go To トラベルという国の施策を見て、子どもたちはなにを思うのか。

もちろん、大人と子どもでは事情がちがう。少人数の個人旅行と大規模な修学旅行もまたちがう。それでもやはり、納得いかないところはあるだろう。 

コロナ禍によって収入が減った人、観光・航空・飲食など売り上げが激減した業種。これらに対しての救済処置は早い段階から求められ、実際、(十分だったかは別として)国や自治体は救済にある程度積極的だった。

 

一方、休校や休講によって授業を受けられない子どもたちの存在は「注目」はされたが、それだけだ。

各校が特別処置を実施したり給付金制度を立ち上げたりはしたものの、十分とは言い難く、遠隔授業の整備もうやむやになり、受験や就活への影響に至ってはメディアではたいした話題にすらなっていない。

 

9月15日付の文部科学省からの通達を見てみると、

「各専門学校等における 本年度後期等の授業等の教育活動の実施に当たっても,引き続き,創意工夫を図りつつ適切 に御対応いただきますよう」

「新しい生活様式」の実践に御留意いただきつつ,生徒か“納得”できる学修機会を確保するための取組を講じるよう努めてください」

「新入生をはじめとする学生生活に不安を抱えた生徒 の把握に努め,カウンセラーや医師等の専門家とも連携してきめ細かく御対応ください」

というように、現場任せ感、放任感は否めない。

 

もちろん、全員を完璧に救うことなんてできない。大人たちだって自分のことで精一杯だ。それでも、「なぜこの国は子どもたちに対してもっと本気にならないのだろう?」「なぜ子どもたちの声をもっと取り上げないんだろう?」とは思う。

 

「不幸な世代」に救いの手が差し伸べられる日が来るのか

1991年、わたしが生まれたちょうどそのころ、日本には「就職氷河期」が訪れたそうだ。有名大学を卒業したのに派遣社員になったり、就職できずフリーターとして食いつないだり……という話がめずらしくなかったらしい。 

その約20年後、氷河期世代は「中年の引きこもり」「自立できず実家暮らし」「老後の備えがない非正規のアラフォー」などといったフレーズとともに、社会問題として取り上げられることになる。

 

そういえば去年、兵庫県の宝塚市が氷河期世代を対象に、正規職員として採用すると発表した。募集は3人だったが、応募者は1800人を超えたそうだ。

当時を知らないわたしがいうのもおこがましいかもしれないけれど、「不幸な世代」に対する救済が不十分だったからこそ、そのツケが20年後にまわってきたんじゃないかと思う。

 

2008年のリーマンショックのときもそうだった。当時のわたしは高校生で、部活のOB・OGの先輩からは「内定を取り消されてどうしたらいいかわからない」「就活留年する」という話をチラホラと聞いた。 

2010年大学入学のわたしたち世代が就活するころにはもう落ち着いていて、同級生のほとんどが内定をもらって就職していった。しかし売り手市場になったからといって、リーマンショック直撃世代が再びチャンスをもらえるわけではない。

 

しかたのない理由で選択肢を大きく減らされた「不幸な世代」。かれらはいったい、いつ「救済」されるのだろう。

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子どもたちが政治に興味を持たないのは、政治家が子どもに興味がないから

よく「子どもたちが政治に興味をもたない」とか、「若者が投票に行かない」といった嘆きを聞くけれど、では政治は、国は、大人たちは、どれだけ子どもや若者に目を向けているんだろう?

次世代を担う若者、そのさらに未来を背負う子どもたちから目をそらしておいて、「国を憂いて政治に参加せよ」とは都合が良すぎるのではないだろうか?

 

今後、コロナの影響で十分な教育を受けられなかったり、学費が払えず退学したり、就活できずにフリーターになったり……といった子どもたちが増えるだろう。

就職氷河期やリーマンショックといった経済的打撃とはまた違うかたちではあるが、やむを得ない理由で大きな不利益を被った世代である。

 

半年後、3年後、5年後。

社会が落ち着きを取り戻したとしても、そのときには「現役世代」がいる。就職氷河期世代やリーマンショック世代と同じように、現在のコロナ世代の救済は後回しにされるだろう。

 

そうやって「しょうがないから我慢して」と黙らせられた子どもたちが、将来、国のために立ち上がってくれるだろうか。大人たちから無視された世代が、選挙で国を変えようという気概をもってくれるだろうか。

政治家をはじめとした大人たちが子どもに興味をもたなければ、子どもが政治に興味をもつことはないだろうと思う。

 

「子どもが幸せを感じられる国」について、もっと話し合いませんか

就職氷河期のときもなにかしらの処置はあっただろうし、リーマンショックのときも既卒3年ルールが追加された。現在だって、現場で走り回ってくれている教育関係者の方たちがいることもわかっている。

ただ、もう少し、もう少しだけ、社会全体が、子どもたちを取り巻く環境に注目してもいいんじゃないかとは思う。

 

ただでさえ、#ブラック校則というタグが存在し、公園でボール遊びが禁止になる国なのだ。この非常事態で子どもたちへの救済があまりにずさんであれば、将来子どもを産みたい人も減るだろうし、いまの子どもたちが大人になったとき、この国で子どもを育てたいと思わなくなるかもしれない。

コロナ禍という非常事態のなかだからこそ、わたしたちはいま、5年、10年、さらにその先の未来を背負っていく子どもたちを大切にしていく姿勢が問われているのだと思う。

 

9月16日に発足した菅内閣の平均年齢は、60.38歳。国の舵を取っている人たちが描く風景と、現在の子育て世代が見ている景色は、大きくちがうだろう。 

政治体制が変わりひとつの節目を迎えるいま、「子どもが幸せを感じられる国」についての議論がもっと活発になってほしいと思う。

 

政治は国の未来を良くする役割を担っており、国の未来はいまの子どもたちが背負っているのだから。

 

(編集:榊原すずみ)