逃亡を続けている指名手配された容疑者たちは、いまどんな姿になっているのか。
ヤフーなどデジタル3社は9月30日、警察庁と連携した特設サイト「TEHAI」を開設し、AIが予測した指名手配容疑者の「今の姿」を公開している。
画像が公開されたのは、警察庁が指定する重要指名手配容疑者で、次の5人。
▽見立真一(41)六本木クラブ内殺人事件の主犯格(2012年)
▽小暮洋史(51)群馬県高崎市一家3人殺害事件(1998年)
▽小原勝幸(40)岩手県宮古市女性殺害事件(2008年)
▽上地恵栄(64)三鷹市男性強盗殺人事件(2005年)
▽宮内雄大(45)山梨市強盗致傷事件(2013年)
※年齢は2020年11月1日時点
ABC3パターンのAIを用いて、それぞれ痩せ、普通、太らせたバージョンを予測・表現。容疑者ごとに計9パターンを公開した。
過去写真などを元に、AIが予測した指名手配容疑者の今はどんな姿なのか。見立真一容疑者の画像を例に紹介する。
Aパターン(加齢変化)
Aパターンでは、加齢変化を得意とするAIを用いている。「TEHAI」プロジェクトチーム(ヤフー、電通デジタル、パーティーの3社)によると、性別や年齢が様々な数万人の画像データを元に、それぞれの年齢に応じた顔の特徴などを読み取って、人がどのように老化するのかを学ばせた。
そうして得られた「老化の推移」を見立容疑者の顔写真に組み込んで、今の姿を予測した。
担当者は「年齢がこのぐらい変わったら、人はこう変化するという特徴を表しているAIです。この年齢になると、目元はこうなっていくだろうというような予測をAIが立てています」と説明する。
Bパターン(肌の質感、状態)
Bパターンでは、同じ年代の人の肌の質感を容疑者に当てはめるAI・技術を用いた。
こちらも性別や年齢が様々な数万人の画像データを元に、AIがしみやしわといった年齢に応じた肌の質感や状態に関する情報を抽出・学習。見立容疑者の顔写真に組み込んで、今の姿を予測しているという。
例えば、容疑者が現在50歳だった場合、データや学習で得られた「50歳の人の皮膚の質感」を当てはめているという。
Cパターン(老化前後の大量比較)
パターンCは、老化前後のペア画像から特徴を抽出して変換するAIを用いた。
元データとして、同一人物の若い頃と歳をとった後のペア写真を1万3000人分用意。大量の画像比較によって、老化前後の顔の違いを学習させ、容疑者の画像に適用させている。
ABCいずれのパターンも、各容疑者の予測画像を生成する前に、実在する人物の若い頃の写真を元に生成した予測画像と、その人のいまの写真を比較し、「AIによる老化加工」の確からしさを検証したという。
ABC比較(ふつう)
次に、AIごとの特徴の違いを見比べるために、見立容疑者の手配写真とABCの画像を比較してみる。左上から時計回りに、手配写真、ABCの順で並べた。手配写真の要素を残しつつ、それぞれ顔の特徴や老化の程度などが異なるのが分かる。
プロジェクトチームは発表で「AIが持つ特⻑から複数のAIを採用し、容疑者1人あたり9つのパターンを公開することで、 予測の幅を広げることにチャレンジしています」と意図を説明。
ハフポスト日本版の取材に対して、担当者は「AIは、ABCどのパターンも最先端の技術を取り入れています。画像の生成方法や特徴の取り出し方といったAIの仕組み自体が、今までの方法と比べて新しい形を使用しています」と話している。
情報提供しやすいつくりに
「TEHAI」上にある情報提供ボタンから、各事件の捜査を担う県警や警察署宛ての入力フォームや電話番号といった情報に飛ぶことができる。有力な情報提供には、容疑者に応じて上限100〜600万円の報奨金が支払われる。
プロジェクトチームによると、特設サイトは見た目の分かりやすさに加えて、通報や情報提供しやすいつくりにこだわったという。
「TEHAI」は、警察庁が毎年11月に実施する指名手配被疑者捜査強化月間に先立って公開され、期間は12月31日まで。ヤフーのサイト内のほか、SNS上などでの周知・展開も検討している。
警察庁の重松弘教刑事企画課⻑は、次のようにコメントしている。
「全国の指名手配被疑者は約630人で(8月末日現在)、3割弱が手配から10年以上経過しています。手配写真が古いため、より効果的な広報活動の在り方について検討する過程で、AIで現在の姿を予測するシステムの提案をもらいました。みなさまから情報を広く提供していただくことで、一日でも早く被疑者を検挙できればと期待しています」