大坂なおみは「声を上げてきた」アスリート。これまでの言葉の重みを振り返る

自らのプレーを通じて、世界に訴えていく。その信念をプレーの力にしていく。そんな姿が今、大坂なおみ選手にある。
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2020年の全米オープンを制した大坂なおみ選手=2020年9月12日(現地時間)
USA Today Sports / reuters

大坂なおみ選手は、全米オープンで二度目の優勝を飾った。

そして、大会中ずっと「あること」を訴えていた。ブラック・ライブズ・マター。黒人差別への抗議だ。

自らのプレーを通じて、さらに黒人に対する人種差別や警察による暴力の犠牲者の名前を書いたマスクをつけて、世界に訴えてきた。

この夏、大坂選手は、女性のスポーツ参加に対しても積極的に発言をしている。「声を上げるアスリート」である大坂選手の数々の言葉を改めて振り返りたい。

今回の全米オープンで、優勝をつかんだ直後のインタビュー。ブラック・ライブズ・マター運動をめぐり、決勝まで用意していた7通りのマスクについて聞かれると大坂選手は、逆にこう私たちに問いかけるような言葉を残した。

「あなたが受け取ったメッセージは何でしたか?メッセージをあなた方がどのように受け取ったかに興味があります。USオープン会場の外で起きていることについては詳しくないですが、より多くの人がこのことを語る(きっかけになる)といいと思います」

 

全米オープン前の8月27日。ニューヨークで行われていたウエスタン・アンド・サザン・オープンでは、大坂選手は、試合の棄権を発表した。ウィスコンシン州ケノーシャで、警察官が背後から黒人男性を銃撃した事件をきっかけに大規模な抗議デモが起きていたことを受けてだ。

バスケットボールなどでは試合のボイコットをするチームがあったが、テニス界でボイコットを表明したニュースは世界を驚かせた。

歴史的に白人が中心とされる競技であるテニスのプレーヤーとしてのメッセージだけに意味合いが大きかった。それはこんな言葉だった。

「私は明日の準決勝の試合をする予定でした。しかし、私はアスリートである前に、黒人女性です。そして、黒人女性としては、私がテニスをするのを見てもらうより、もっと大事なことがあると思っています」

「私がプレーをしないことで何かが起きるとは思いませんが、大多数の白人スポーツの中で会話を始めることができれば、正しい方向へ進む一歩になるのではないかと思っています」


これを受け、ウエスタン・アンド・サザン・オープンは、「人種の不平等と社会的な不公正への抗議」を示すため、27日の試合を中断を決定。28日にトーナメントを再開した。 

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オーストラリアオープンでボールガールと写真を撮る大坂選手(右)=2019年1月24日
Edgar Su / reuters

 

女子スポーツのエンパワーメントも

「3歳で初めてテニスラケットを手にして、私の人生は変わった」

「女の子(女性)がアクティブになろうとするときに直面する障壁について知るたび、何かしなくてはという思いを強くした」

大坂選手は8月3日、より多くの女性がスポーツに参加できるよう支援するプログラム「プレー・アカデミー WITH 大坂なおみ」を立ち上げると発表し、こう語った。

プログラムはナイキとローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団によるもの。サイトによると、日本で6〜18歳のスポーツ参加率を男女別で見ると、女子の方が2割低い。スポーツへのアクセスの難しさやプログラムの不足を理由に、10代半ばでスポーツをやめる女子は男子の約2倍という。

 

大坂選手は、 女性のエンパワーメントについてこう語っている。

「私は彼女たちに、楽しんで、自信を得て、女の子がどれだけパワフルになれるかを知ってほしいと願っていますーー誰であっても、どこの出身でも、どんな肌の色でも関係なくーー」

大坂さんは「女の子(女性)がスポーツや遊びをすることで喜びを感じ、自分たちの潜在能力に気づくことを望んでいます。そうした女の子たちが、また次の世代が目指すようなロールモデルとなれるのではないでしょうか」