女性議員の割合が世界166位の日本。女性議員を増やすには?石破茂氏、菅義偉氏、岸田文雄氏の回答は

「世界で日本のジェンダーギャップ指数は121位。先進国ではダントツの最下位です。その理由は、政治分野が足を引っ張っているのは周知の事実です。それを変えるために、女性議員の候補者の発掘、支援など、女性議員を増やすためにいかなる方策が必要か所見を伺います」。公開討論会で出た質問に対する3氏の回答を比較しました。
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自民党青年局・女性局主催の討論会に臨む(左から)岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官、石破茂元幹事長=9月9日、東京・永田町
時事通信社

自民党総裁選に立候補した石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長は9月9日、党青年局・女性局主催の公開討論会に出席した。

最初の質問は、青森県連の女性局からが女性議員の増やし方についてだった。

 

ジェンダーギャップ121位「政治分野が足を引っ張っている」

列国議会同盟(本部ジュネーブ)によると、日本の国会議員(衆院議員)の女性割合は9.9%で、2020年8月時点で世界193カ国中166位。世界の平均は24.9%となっている。

女性の政治参画をめぐっては、2018年に男女の候補者の数ができるかぎり均等になるよう政党に努力を求める政治分野における男女共同参画推進法が施行したが、2019年7月に行われた参院選では自民党の女性候補者は14.6%。公明党に次ぐ低さとなっていた。

こうした背景を踏まえて、自民党の青森県連女性局長の櫛引ユキ子県議が、都道府県連からの代表質問として尋ねた。

「世界で日本のジェンダーギャップ指数は121位。先進国ではダントツの最下位です。その理由は、政治分野が足を引っ張っているのは周知の事実です」と危機感を示しながら、「それを変えるために、女性議員の候補者の発掘、支援など、女性議員を増やすためにいかなる方策が必要か所見を伺います」と問うた。

*石破氏、菅氏、岸田氏の3人の回答した内容全文は記事の最後に紹介しています。

 

女性の政治参加を阻むのは? 

 

女性の候補者をどう増やすかは、自民党にとっても大きな課題だが、3氏の回答を比較すると、何が女性の政治参画を阻んでいるのかについての認識は少しずつ異なるようだ。

男女の家事負担の差が大きいことを挙げたのは、石破氏。公開討論会中、決意表明や女性活躍について語った際にも男性の家事負担率の低さについて言及した。

岸田氏は「政治の世界はまだまだ典型的な男社会であると感じている」と述べ、「女性のみなさんのハンディは、大変大きいものがあると思います」と政治の世界の特殊性と男性優位な空気感を指摘した。

菅氏は「地方議員の中で、どうしても自民党は他の政党と比べて女性が少ない」と課題を挙げ、特に子育て世代の女性が議員になるチャンスが少ない点を問題視した。

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「女性議員を増やすための方策は?」という質問に対する3氏の回答内容
自民党総裁選公開討論会の発言内容より

女性議員を増やすためにどうするか。

述べられた具体策からも3氏の違いが浮き彫りになった。

「どうやって夫と妻と2人で協力して家事を分担するか」が問題だと指摘した石破氏は、問題点や解決方法について女性の声を聞きたいと訴える。

「女性の知恵と力を最大限にいかす。そうしないとこの国はよくならない」と強調し、女性議員が増えない理由について「何が問題か教えてください。実現に向けて最大限努力します」と呼び掛けた。

岸田氏は「これからの時代は多様性を大事にする」と強調。女性活躍をめぐる社会の期待感を底上げすることで、「政治の世界の雰囲気を変えていく」ことと同時に、数値目標の設定など女性の政治参加を促す仕組みの必要性についても訴えた。

一方、菅氏は「子育てを支援する政策が大事」だと指摘。安倍政権下で行われた幼稚園や保育園の無償化や、待機児童対策などを引き継ぐとした。

 

3氏の回答全文は以下の通り。(実際の回答順)

<石破茂氏>

私が幹事長の時も努力しました。実現しませんでした。
理由があるはずです。

 

政治家は24時間365日労働だ。
先ほど申し上げたように、男性の家事負担率が*18%しかない。
政治家の家に限りませんが、どうやって夫と妻と2人で協力して家事を分担するかということです。
政治家の家においては尚更です。

 

私の場合も妻に大変な負担をかけてきた。
奥様が出られる場合も旦那さんに負担があるのでしょう。

 

我が自由民主党として、女性の知恵と力を最大限にいかす。
そうしないと、この国はよくならない。

 

個々の問題ではない。
我が党として、我が党から地方議員に出たい、国会議員に出たい、そういう人たちが出れるような環境をどう作れるかです。

 

ですから、何が問題か教えてください。
こういうことだから出られないんだ、ということを教えてください。
実現に向けて最大限努力します。

 

(*編集部注:2020年度男女共同参画白書によると、6歳未満の子どもを持つ共働き世帯で夫の家事・育児関連に費やす時間(1日当たり)は84分、妻は370分。専業主婦世帯では夫75分と妻565分。夫の家事負担率は、共働き世帯で18.5%、専業主婦世帯で11.7%%となっている)

<菅義偉氏>

私も市議会議員を経験してます。

地方議員の中で、どうしても自民党、他の政党と比べて女性が少ないわけであります。
そういう中で、いろんな要因があるんだろうと思いますけれども、やはり子育て世代の人というのがほとんど議員になるチャンスができないと思います。

ですから、やはり保育、そうした子育てを支援する政策がものすごく大事だと思っています。

そういう意味で、安倍政権として昨年、消費税2兆円を引き上げさせていただいた時に、幼稚園や保育園を無償化し、また、保育所や幼稚園の定員を大幅に増やすことによって、そうした支援をしていきたいと思っています。

<岸田文雄氏>

多様性を大事にする社会において、女性の議員のみなさんが増えること、大事だと思います。

現在、女性局においても三原局長の下で「女性未来塾」、政治を志す女性の方を応援する取組をしていること、敬意を表し申し上げます。

 

政治の世界、まだまだ典型的な男社会であると感じています。
女性のみなさんのハンディ、大変大きいものがあると思います。

 

まずは、これからの時代は多様性を大事にする。

 

そして、女性の感覚、活躍こそ期待されているんだという社会の期待感。こういったものをみんなでしっかり押し上げることによって、政治の世界の雰囲気を変えていく。

 

さらには、数値目標等、さまざまな環境整備を行うことによって、女性の皆さんの政治への参加、これをしっかりと後押ししていく。

 

これが大事なことではないかと思っています。

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。