村上春樹さんの言葉で逮捕に抗議。香港の民主派議員「私は必ず卵の側に立つ」

実はこのスピーチ、香港民主派には馴染みの深いものだった。

香港メディアは8月26日、警察が民主派議員2人を含む16人を逮捕したと伝えた。

このうち1人は村上春樹さんの2009年のスピーチを引用し、政治的な圧力に引き続き抵抗するとSNSで意思表明した。

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逮捕された許智峯氏。写真は2020年6月に行われた集会で警察に拘束された時のもの (Photo by Anthony WALLACE / AFP) (Photo by ANTHONY WALLACE/AFP via Getty Images)
ANTHONY WALLACE via Getty Images

香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、逮捕された16人は、暴動に参加した疑いや、不正な目的を持ってコンピューターにアクセスした疑いなどが持たれている。

民主派政党・民主党は、逮捕された16人のなかに、所属議員の林卓廷氏と許智峯氏の2人が含まれていると発表している。

このうち、許智峯氏は弁護士を通じて自身のフェイスブックでコメントを発表し「政治的な圧力に屈することなく、正義の為に戦い続ける」などと意思表明。村上春樹さんのスピーチを引用し「高くて固い壁と、ぶつかって割れてしまう卵があるとき、私は必ず卵の側に立つ」と綴った。

■香港民主派に知られるフレーズ

これは村上さんが2009年にイスラエルの文学賞「エルサレム賞」に選ばれ、エルサレム市内でスピーチをした時のものだ。

朝日新聞デジタルによると、当時、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの侵攻があり、村上さんには受賞を拒否するよう勧める声もあったという。

これに対し村上さんは、エルサレムに来て話すことを選んだとスピーチの中で明らかにし、人々を卵、体制を壁にたとえ「どんなに壁が正しく、卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」と訴えたのだ。

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2009年2月、イスラエルの文学賞「エルサレム賞」の受賞スピーチを行う作家の村上春樹さん(エルサレム
時事通信社

このスピーチは、村上さんが2014年に当時の「雨傘運動」のデモ参加者を激励したこともあって、香港の民主派の間で知られている。日本で知名度の高い民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんも2019年10月にこの言葉を引用し、香港政府に抵抗する意思を示していた。