安藤優子さんに寄せられた批判から考える。過酷で危険な状況での中継レポートはどこまで必要か?

8月19日の「直撃LIVEグッディ!」の放送には「観るに堪えない」「そこまでさせて伝える意味あるの?」など批判や疑問の声が続々。番組側の危機管理にも及ぶ問題だ。
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フジテレビ系の情報番組「直撃LIVEグッディ!」でキャスターを務める安藤優子さんに、ネット上で一部批判の声が寄せられている。


8月19日の放送で、京都市から中継していたリポーターが暑さから体調不良を訴えたうえ、言葉がうまく出なくなるなど熱中症と疑われる症状が出たにも関わらず、安藤キャスターが中継を続けるよう指示した、というものだ。

私はかつて民放の放送局のアナウンサーとして、暑い場所や台風が近づく現場などからリポートをした経験がある。今回の場合、身の安全を考慮する必要もあったのではないかと考える。

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フジテレビ系『直撃LIVEグッディ!』
フジテレビ公式サイト

番組で京都市からの中継が始まったのは、午後2時すぎ。豊田綾子ディレクターが京都市の桂川にかかる渡月橋から暑さを伝えるものだった。

豊田ディレクターは冒頭、「かなり暑くて、頭がふらふらしてきますね」とコメント。その上で、手元の温度計を示し「40℃(表記は40.1℃)、40℃となっています」などと伝えた。

続いて「皆さんいろんな対策をしております。日焼け止めを塗るという方ももちろんなんですけれども、あとはですね、ペットボトルを凍らせて、そこにキュウリ凍らせて入れてきたりだとか」などと話したところで、異変が生じる。

「あとはですね...何だっけな、すみません。暑すぎて頭がボケっとしているんですね。ごめんなさい、(スタジオに)お返ししておきますね」と中継を自ら切り上げようとした。

スタジオの出演者からは心配の声も聞かれたが、メーンキャスターの安藤優子さんは戸惑う様子を見せ、「もう一度(中継に)返していいですか?」と豊田さんに中継を続けるように促した。

それに応じ、豊田ディレクターは「返しちゃいますよね。そうですよね。あのですね...」と中継を続行。

豊田ディレクターが「ちょっと暑くてですね、対策としては日焼け止めというものをしております」とリポートを続けていたところで、倉田大誠アナウンサーが「豊田さん、ありがとうございました。一旦こちらで引き取ります」と切り上げた。

この放送を観た人からは、「あんな状況になってまで続けさせようとしているのはおかしい」「そこまでさせて伝える意味はあるのか」など厳しい批判や疑問の声が上がっていた。

酷暑や台風など...危険な状態での中継レポートはどこまで必要か?

筆者はかつて、民放の放送局のアナウンサーとして、台風接近時や豪雨災害、夏の暑い海水浴場での熱中症の危険性などを現地から中継で伝えた経験がある。

雨風の強さや時間の経過による状況の変化、過酷な暑さなど、現地からのリポートは、放送局のスタジオでのニュース解説などからは分かりにくいリアルな情報が伝わる貴重なものだ。

無論、観る人にとって重要な情報を伝えるのがキャスターやアナウンサー・リポーターの役割だ。特に災害時などは、その情報が避難や警戒につながるものもある。今回の豊田ディレクターも、その役割を果たそうとしていた。

しかし、リポーター自ら危険な状態を訴えたにも関わらず、中継を続けることに意味はあったのか。疑問を感じざるを得ない。

なにより、リポーター自身が危険な状態に晒されているその状況が生じている時点で十分に過酷な暑さは伝わっていて、一つの重要な情報になっていたのだから。

安藤キャスターは再度リポーターに返すことなく、むしろ率先して直ちに中継自体をやめるべきよう努めるべきではなかったか。

だが、批判の声が安藤キャスターに向かうだけでは今後の改善には繋がらない。批判の声は番組の報道姿勢にこそ向けられるべきだ。

事実、Twitterなどネット上では、安藤キャスターへの批判だけでなく、危険な状況における中継リポートそのものについての疑問の声も多かった。

「暑さとか台風の時とか、リポーターが危険を晒してまで、伝えることの方が大事なのかっていつも思う」「こういう時(リポーターが危険な状態にある時)はリポーターかわいそうだなという感情がまず先に来るから、その時点で情報があまり入ってこないんだよね」「伝える側も人間。その身の安全は、きちんと守られるべき」などという意見も寄せられた。

緊急時や非常時、報じる側は「命を守る行動を」と訴える。ならば、番組に出演する者の身の安全を考慮するのも、報道する側の責務と言えるのではないだろうか。