先日、Twitter上で「メールのフレーズ」が話題になっていた。曰く、「メールで『特定の言葉』を使う方は、めんどくさいことがあるよね」というような議論だ。
最初に断っておくと、どんな言葉をメールで使うかは、差別用語や誹謗中傷、ハラスメントなどではない限り自由だと思うし、言葉と性格や仕事の仕方が常に一致するなんてことはないだろう。また、「ビジネスマナー」なるものは業界・企業によって違う部分もあると思うので、「正解」や「不正解」もないと思う。
ただ、この話題で思い出すことがあって笑ってしまった。
でも笑っていたら、様々な業界・会社で働いた経験があるハフポスト日本版のスタッフたちから、様々な「社内メール慣例」「社内連絡ルール」の体験談が寄せら、思いがけず考え込むこととなった。
「拝さんって、珍しいお名前ですね」と聞いた私
ネットで話題になっていたフレーズの中には「小生 」「老婆心ながら」「貴兄」などがあった。そして「◯◯拝」…これは私もほろ苦い思い出が。
20代前半の頃、社内の先輩から来たメールの末尾に「田中 拝」(仮名です)と書かれていた。私は、この用法を知らなかったんですよ。
隣の席の別の先輩に「田中さんの下のお名前、珍しいですね。何て読むんでしょうね?」と聞いてしまった。先輩は笑う訳でもなく、淡々と「『拝』は、メールの最後、自分の名前の後につけることがある言葉だよ。尊敬を込めた感じのニュアンスだね」と教えてくれました。
ちょうど同じ頃、年上の男性からいただいたメールの冒頭に「湊姉」と書いてあって、「名前間違ってるよ。いや、なにかの打ち間違えだろうか」と、心の中で突っ込んだこともあった(これは少し考えて気がついた。口に出さなくてよかった)。
その後、私自身が「◯◯拝」「貴兄」「貴姉」を使いこなす日は来ないまま、10年ほどの時を経て、それらがネットで話題になっていたことに、思い出し笑いをした訳だ。
という話をハフポスト日本版の同僚たちにしていたら、思いがけず様々な「社内メール文化」や「社内連絡ルール」の目撃談が寄せられた。
様?殿? 「社内メール慣例」(一覧)
ハフポスト日本版では、報道関係に限らず、流通や広告、ネット、エンタメ、アパレルなど様々な職種を経験してきたスタッフが働いている。スタッフたちから寄せられた「体験談」を報告します。
【「お世話になっております」の使い方】
勤めていた会社では、社内のメールの挨拶も「お世話になっております」が一般的だった。
外部向けの定型挨拶文言だと思っていましたが、社内で使っている会社もあるんですね。
【「〜殿」と社内メールにつける】
以前勤めた会社では、「〜殿」と社内メールにつけるのが慣例でした。加えて、必ず役職をつけてメールしないといけないので、「〜主任殿」「〜部長殿」となります。
役職を間違えると怒られるので、メールを作る際は毎回、社内ネット上の名簿を確認せねばならず、大変でした。数万人いる社員を検索するだけでもしんどかったです。
これは大変そうです…。
ハフポスト日本版では普段の連絡は主にSlackを使っています。文字で説明しづらい話の時は携帯電話にかけます。
このエピソードを寄せたスタッフは、携帯にかけるのは相手の状況が分からず心理的ハードルが高く、かと言って、Slack上の情報は追いきれないこともあるので「アナログですが、社内の連絡は内線が便利だと今も思います。スピーディーに連絡が取れますし」と主張。内線電話最強説が浮上しました。
【まさかの「メールほとんど使わない」】
「小さい会社」に勤めていたというスタッフの証言です。
社内でメールのやりとりをするということがほとんどなかった…!内線か携帯を鳴らしていました。
ほぼ全員顔が分かる小さい会社だったためか、メールを使う場合には、普段呼び合っているまま、「さん」付けor愛称or呼び捨て、をしていました。
【メールを社内連絡で使ったことないかも】
複数社での勤務経験があるスタッフも、社内メール文化に触れたことがないとのこと。
前の会社はSlack、その前の会社はChatworkを使っていて、社内の人とメールでやりとりしたこと、一回もないかもしれません…。
でも、前の会社はSlackでも毎回「お疲れ様です」などとわざわざ付けていて、付けなくてもいいのでは…と思ってました。
Slackの使い方も企業によって違うんですね。
ハフポストのSlackでは🙏マークが多用されています。「お願いします」「ありがとう」「ごめんなさい」みたいなニュアンスです。
【SNS使って、総務に怒られた】
社内連絡用にLINEやメッセンジャーのグループを作ったら、総務から「メール、電話以外で連絡をとってはいけません」というお達しが出て、怒られた。
これは、顧客情報保護の観点などから徹底している企業も多そうですよね。でも、SNSのグループは確かに便利です。
【「課長様」はNG。「課長殿」はOK】
この話題を、別業界に勤める友人たちに振ってみたあるスタッフ。社内メール文化について、以下のような声が寄せられました。
・役職者には「◯◯部長」などと肩書をつける。たまに気分で「◯◯課長様」と「様」を加えることも。平社員宛には「様」をつける
・課長様はNG。課長殿と「殿」を使う
・(私の場合は)社内は「さん」、社外は「さま」にしている。外国の方とのやりとりも多く、「様」にすると、中国の王さんに送るときに「王様」になってしまい、「さま」に統一することにした
外では呼び捨てなのに、なんで「様」?
さて、私が耳が痛かったのが、20代スタッフのこの指摘だ。
「前職の社内メールでは、全ての人に『様』をつける慣習だった。クライアントと会う時は、身内のことを呼び捨てにしなきゃいけないのに、なんでメールでは様つけてるの?と、思いました」
私も社内メールでは全ての人に「苗字+様」で統一し、外部の人の前では社内の人を「呼び捨て」にしている一人。この考えに触れて、「一理あるな」と考えこみました。
また、会話で自社以外の企業名に「〜さん」とつける一般的な慣習について、「企業・組織の権威づけであり、個人より企業が前に出てくるみたいに感じるところがある。違和感がある」と意見するスタッフも。
個人より組織を優先するような考えが社会や企業にあるのではないだろうか…という議論に。こちらもまた、じっくり考えてみたいです。