新型コロナの影響で、海水浴ができない2020年の夏。しかし茨城県の大洗サンビーチでは、これまでビーチを訪れなかった人たちまで海を楽しんでいる。
理由は、地元の大洗観光協会が行っている「砂浜図書館」。平日でも人気の場所は満席になるほどだという。
夏以外は人が来ないという課題が発端
そもそもの発端は、「ビーチには海水浴の季節以外、人が来ない」というかねてからの課題だった。観光協会が若手を中心に対策を練っていたところ、コロナ禍で海水浴場の設置が中止に。「これまで縁のなかった人も呼び込もう」と、砂浜を図書館にしようと決めた。
しかし場所は砂浜。地域の図書館に本を貸し出してもらえないか頼んだが、「使用環境が厳しい」ということで断られてしまう。廃棄処分される予定の本ならば提供してもらえることになり、観光協会で新しく購入したものや関係者が持ち寄ったもの、寄贈されたものなどで800冊ほどを用意した。
津波避難施設の1階に、農家の人が使っていた木製の「リンゴ箱」を棚にして本を並べる。このリンゴ箱はお洒落な雰囲気作りに一役買っているのだが、観光協会事務局長の鬼澤保之さんは「安く手に入ったので…」と裏事情を明かしてくれた。
「20年ぶりに海に来ました」
利用は無料。暑い時間を避け、午後3時から6時まで運営している。新型コロナ対策で、連絡先の登録などが必要だ。
施設の近くの砂浜には、タープを10張、パラソルが10本出されて日陰が作られており、それぞれに椅子が2脚ずつ置かれている。席は先着順で、好きな本を選んだら思い思いに時間を過ごす。
暑い日が続いているため気温が気になるところだが、絶えず海からの風が吹いているため、曇っていると寒いくらいだという。晴れていても、日陰ならば午後4時以降は涼しいそう。タープの席は人気で、平日でも満席になるほどだ。
「予想以上の反響です」と鬼澤さん。「20年ぶりに海に来ました、という人もいました。みなさん2時間ぐらい平気でいらっしゃいます」と話す。
海水浴は苦手でも、海辺でゆっくり過ごしたいという人の心を掴んだようだ。
砂浜図書館は8月23日まで。