安倍晋三首相の連続在職日数が歴代最長となり、安倍政権は、約7年8カ月におよぶ“最長政権”となりました。世論の反対が根強い法律を次々と成立させ、森友・加計学園問題や、「桜を見る会」をめぐる問題でもたびたび国会が紛糾しました。こうしたニュースをちょっと違った角度から見てみると、どこか遠く感じる政治も、身近に感じられるかもしれません。
ハフポスト日本版は7月28日に配信した「ハフライブ」で、新聞13紙を読み比べる時事芸人・プチ鹿島さんをゲストとして迎え、「忙しい私たちが政治を知る方法」について考えました。「下世話な好奇心が本質につながる」というプチ鹿島さんが番組で紹介した、おすすめの政治ニュースの読み方をお伝えします。
≪プチ鹿島さんに聞く、政治ニュースの読み方≫
・政策だけではなく、「人間関係」にも注目しよう
・「下世話さ」を大事にしよう
・媒体を「キャラ化」して読もう
・選挙は最高の「祭り」。参加すればもっと面白い
コロナ禍で6割が「政治への関心が強まった」
番組に合わせてハフポスト日本版が実施したアンケートでは、「新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに政治への関心が強まったと思いますか?」との問いに、全138回答のうち、61.6%(85回答)が「強まったと思う」と回答しました。
政治に多くの人の注目が集まるいまだからこそ、政治ニュースを身近に楽しく読むための、プチ鹿島さんのコツを紹介したいと思います。
政策だけではなく、「人間関係」にも注目しよう
プチ鹿島さんは、「もちろん政策で政治をみるのは大事なこと」と言います。その一方で、「人物とセットで政策を見た方が分かりやすい」と語り、ある事例を挙げました。
「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグがTwitter上で話題になり、実際に廃案となった改正案をめぐる問題では、安倍政権に近いとされる黒川弘務・東京高等検事長(当時)の定年延長が問題視されました。検察官の定年は63歳。黒川氏が63歳になる誕生日、“2月8日”が注目を集めました。
プチ鹿島さんは、この誕生日をきっかけに、黒川氏の“星占い”を調べてみたと言います。「この人、どういう星の下に生まれたんだろう?と思ったんです。そうしたら、『冒険的なみずがめ座。不可能が可能となったときに大きな快感を覚えるでしょう』って(笑)黒川さんってまさに(定年延長が閣議決定されて)不可能を可能にしてしまった人ですよね(笑)こういう話って、人に話したくなりませんか?興味のとっかかりはこういう身近なところからでいいと思うんです」。プチ鹿島さんは、身近な疑問から調べて、その背景にある問題を知ればいい、と話しました。
「下世話さ」を大事にしよう
プチ鹿島さんは、ニュースを「野次馬精神」で見ていると言います。番組でも、「桜を見る会」の問題を例に挙げ、「前夜祭で出されたとされる寿司は誰が握ったのか?」という“下世話”な疑問を深掘りすると、問題の本質が見えてくると語りました。
安倍晋三首相の後援会が主催した前夜祭は、1人5000円の会費。もしここで出されたとされる寿司が会費でまかなえないような高級寿司店のものだったとしたら――。選挙区内での寄付を禁じる公職選挙法違反にあたる可能性がある、との指摘もあります。
「“意識が高い”ことは正しいこと。でも、“バカらしいな”と思ったことにも大事なこともあるんじゃないかなと思っています」
媒体を「キャラ化」して読もう
一般紙やスポーツ紙、夕刊紙など計13紙を購読して読み比べているプチ鹿島さん。番組では、「毎日2時間くらい時間をとって目を通している」と話しましたが、日々仕事や子育てなどに追われる人には、なかなか新聞をじっくり読む余裕はありません。新聞ではなく、インターネットで記事を読むことがほとんどです。
ハフポスト日本版がアンケートで、主にニュースを読んだり見たりしている方法をたずねたところ、57.7%が「インターネット」、次いで15.3%が「SNS」で、合わせて7割以上を占めました。「新聞」は10.9%、「テレビ」8%、「ラジオ」2.9%と合わせても、2割程度でした。
新聞を毎日読み比べているプチ鹿島さんにとっても、新聞の社説などの記事は難しかったと言います。でも、新聞社ごとにキャラクター化して記事を読むようにすると、「読むのが面白くなった」と語ります。たとえば、朝日新聞は「プライドの高い“おじさん”」、産経新聞は「和服を着た“おじさん”」。新聞記事を、「知り合いの“おじさん”が言ってること」という感覚で読むと、楽しみながら読めるようになったと言います。
選挙は最高の「祭り」。参加すればもっと面白い
総務省の調査によると、2017年10月に行われた衆院選では全体の投票率は53.68%だった一方、20代は33.85%、30代が44.75%にとどまりました。投票に行く若者が相対的に少ないのは事実です。若い世代も「選挙」に関心を持つにはどうしたらいいのでしょうか?
プチ鹿島さんは番組で、「10代の頃からテレビの選挙特番が好きだったんです」と明かしました。その理由について、「生放送だし、ぴりぴりとした空気が流れている。(当選して)喜んでいる人もいれば、(落選して)肩を落としている人もいる。まさに“お祭り”なんですよ」と語りました。
プチ鹿島さんは、番組に先立って行ったハフポスト日本版とのインタビューで、「投票は『自分の考えは候補者の誰に一番近いのか』という、今の自分の気分の確認でいい」と語っています。そのうえで、「人の人生の大事な瞬間を(選挙特番で)見られる。そういう“お祭り”に参加する権利を持っているわけだから、参加すればもっと面白い。投票に行くのは、それぐらいのレベルからでいいと思っています」と言います。
選挙で各党が掲げる政策や、選挙の争点ももちろん大切です。でも一方で、選挙を“お祭り“と捉えて、楽しむ視点から入ったっていいはず。そうすれば、政治や社会問題を、もっと多くの人が「自分ごと」にできるのではないでしょうか。
番組に先立ってハフポスト日本版が行ったインタビューで、プチ鹿島さんが語った「ニュースの楽しみ方」を動画にまとめました。ぜひご覧ください。
(取材・文:竹下由佳 / 写真・動画:松原一裕)