ネモリズマブとは?アトピー性皮膚炎のかゆみ抑える効果を確認、実用化に期待

かゆみの程度が平均でおよそ4割改善した。かゆみは患者にとって生活の質に大きく関わる。

アトピー性皮膚炎の患者が悩まされる「かゆみ」を抑えるために開発された新たな薬「ネモリズマブ」の効果を、京都大学などの研究チームが国内の治験で確認した。

7月9日、米医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に発表。今後実用化を目指すという。

どんな薬なのか?

 

かゆみの程度が約4割改善

治験の結果を発表したのは、京都大学の椛島健治教授(皮膚科学)と製薬会社マルホ(大阪市)の研究チーム。

朝日新聞デジタルによると、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、免疫細胞がかゆみを引き起こすたんぱく質を出す。ネモリズマブは、この働きをブロックすることで、かゆみを抑えるという。

マルホの発表などによると、治験は、軟膏など従来の治療で十分な効果を得られていない中等症から重症の13歳以上の男女215人を対象に行った。143人にはネモリズマブを、残りの72人には偽薬を4週間に1度皮下注射。外用薬を併用し、16週間にわたって比較した。

ネモリズマブを注射されたグループは、かゆみの程度が平均42.8%改善。湿疹の症状にも回復が見られた。偽薬のグループでは、かゆみの程度は平均21.4%の改善だった。

論文の第一著者である椛島教授(皮膚科学)は発表で、アトピー性皮膚炎の患者がかゆみによって仕事や勉強中の集中力低下や睡眠障害などに苦しんでいると指摘。「患者さんとそのご家族の苦しみ、そしてアトピー性皮膚炎がもたらす社会的損失の軽減につながる可能性があります」 と述べている。

 

アトピー患者は増加傾向

国立成育医療センターの公式サイトなどによると、アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が、慢性的に回復と悪化を繰り返す病気。皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激などが入りやすくなり、免疫細胞と結びついてアレルギー性の炎症を引き起こす。

かゆみを感じやすい状態になることも分かっており、掻くことによってさらにバリア機能が低下するなど、悪循環に陥りやすい。

厚労省の患者調査によると、アトピー性皮膚炎の総患者数は増加。2017年には51万人余と、2008年の約35万人から16万人増加している。