「がんばるな、ニッポン。」
こんなキャッチコピーが目を引くテレビCMが、7月6日から関東圏で放送されている。
緊急事態宣言の解除後も「テレワークという選択肢を」と経営者に呼びかけるサイボウズの広告だ。
CMは、「経営者のみなさまへ」という呼びかけで始まる。
「通勤をがんばらせることは、必要ですか?」という淡々としたナレーションとともに映し出されるのは、通勤スタイルにマスクを着けて、黙々と同じ方向に向かって歩く人々の様子。品川駅などの主要駅で、6月に撮影されたものだという。
CMはわずか15秒で、「これからも、テレワークという選択肢を」というメッセージで終わるメッセージとともにに映るのは、同じ時期に撮影した東京・日本橋にあるサイボウズのオフィスの様子。広々としたオフィスにはほとんど人がいない。
同社の公式ツイッターに投稿された動画は5.8万回再生され、「うちの経営者にも見てほしい」「関西でも流して」など共感の声が上がっている。一方、「テレワークだと頑張っていないわけではない」「病院や診療所はテレワークするわけにはいかない。不愉快になる」などの意見も寄せられている。
3月には日経新聞に全面広告
実はこのCMは、サイボウズが3月6日に日経新聞に出した全面広告の別バージョン。
新型コロナウイルスの感染が広がり始め、通勤電車を心配する声が上がる中で、テレワーク導入に慎重な企業もいることから経営者に向けて発信したメッセージ広告だった。
テキストのみのこちらの広告では、メッセージはより分かりやすい。
出社や出張を頑張るのか、IT技術や発想の転換でテレワークという選択肢を増やすことを頑張るのかーー。コロナ禍で出社することを頑張るのは、本当に意味があることなのかという強烈な問いだ。
テレワークを活用できる企業が増えれば、「どうしても出社しないといけない方々の リスクを減らすこともできます」と、エッセンシャルワーカーについても言及されている。
連日感染者100人超えも、通勤時間帯の人出は増えている
新型コロナウイルスの感染拡大で4月に緊急事態宣言が発出されると、在宅ワークを導入する企業は急速に増えた。ところが、緊急事態宣言の解除後は「原則出社」と逆戻りしている企業も多い。
東京都が公表している都営地下鉄の利用者数の推移を見ると、都内では新規感染者が連日100人超えが続いているにもかかわらず、この間の人出はむしろ少しずつ増えている。
後退させてはいけない
サイボウズでCMを担当した吉原寿樹さんは「出社する働き方を否定しているわけではない」としたうえで、広告の意図についてこう説明する。
「サイボウズが一貫して提唱しているのは『100人いたら100通りの働き方』があっていいということです。出社もテレワークも強制であるべきではなく、多様な働き方の選択肢のうちの一つです」
「働き方を選択できれば、個々人の幸福度や生産性が上がる。それは社会の幸福度や生産性とも結びつきます。労働人口が減っていく日本にとって、働き方の選択肢を増やすことは、必要なこと。せっかくコロナを機にテレワークという選択肢が広がったのに、後退させてはいけない、というメッセージです」
サイボウズでは、2010年8月に在宅ワークを試験的に導入。東日本大震災を機に本格的に運用が始まった。10年間の経験をもとに、その時々に見えた課題などを特設サイトでシェアしている。