バンライフ中断で、コロナ離婚のピンチ。原稿は書けないし、収入減…。さて、どうする?

コロナ禍で家にずっと篭っていることで、どんどん膨れ上がっていた劣等感。いつもより活動意欲が湧いている夫。やること、やるべきことは沢山あるんだけど、なかなか行動に移せなくなった自分がいた。
Open Image Modal
筆者提供
新しい“家”、バンライフ仕様にカスタマイズされたSEDONAにて

目まぐるしい変化の中にいないと、意欲が湧かない

バンライフで旅生活をはじめて、1年ちょっと。

新型コロナがやってきて、旅を休止することになった私は、魂が抜かれたかのように体内のやる気というやる気を失っていた。 もともと仕事はリモートワークをしていたので、パソコンに向かって働くことには変わりはない。

だけど、楽しみにしていた地方取材の仕事はなくなっちゃったし、新しいキャンピングカー(トヨタのハイエースをベースにバンライフ仕様にカスタマイズされたSEDONAという車)を契約しに行くのも延期にせざるを得なかった。

やること、やるべきことは沢山あるんだけど、なかなか行動に移せなくなった自分がいた。

 

言葉では説明しにくい感情。

ただただ、旅して移動し続けることが恋しくてたまらなかった。 なんでそんなに旅生活にこだわるのかって、毎日の景色が移り変わっていくことが好きなのだ。家、職場、家、職場、の行き来を繰り返していた時期はあまり良い精神状態を保つことができず、景色を変える代わりに、やたらと引越しもしていた。

頑張って貯金したお金を、全て引越し資金にドーンと使うくらい。そのたびにインテリアも全部変更する。一人暮らしはじめてから、2年以上同じ家に住んだことがない。早いときでは、たった半年で引越しも。だから、「旅生活で生きていこう」と決める前から、毎日同じ風景を見て過ごすこと、同じ場所に定住するのが苦手だったんだと思う。

「帰る家があるから落ち着くのに!引越しばかりにお金を使うのは勿体無い!」という友だちの正論に、私は全く共感できなくて、悩んでいた時期がある。

 

私の場合は、どうやら、目まぐるしい変化の中にいると、創作意欲が湧いてくるようだ。寝る場所、食べる場所、歩く場所、毎日が違うから、毎日違うものを選んで行動することが、どんなに小さいことでも「決めたことを達成する」という、自分の中でちょっとずつ成功体験として自然に積み重ねて過ごしていたのかもしれない。

 

私には何もない。劣等感がどんどん膨れ上がっていた。

Open Image Modal
筆者提供
愛犬とともに

そんな原因もあるからなのか、コロナ禍で家にずっと篭っていることで、同時に自信まで失っていった。

外に出られないから、SNSを見る機会が増えた。スマホの画面のなかに見えるみんなは高いスキルを持っていて、自分に自信があって堂々としていて、どんな状況でも楽しめる力があって、キラキラしていて…。

おっと、私には何もない。って、劣等感がどんどん膨れ上がっていた。

 

この原稿も提出期限がとっくに過ぎていて、早く書かなきゃ、早く書かなきゃ、と思うほどに、書くことに対して自信がなくなっていった。ライターを名乗っている人としては失格だ。

 

そして3ヶ月。ついに夫に怒られた。

そんなコロナの期間中、一緒に旅をお休みしている夫は、いつもよりも更に活動意欲が湧いていた。

1人でブログやYouTubeをはじめた夫。「こういう期間だからこそ、頑張るべきだ!俺は俺でやるから、恵利は恵利で好きなことを頑張って。」と、スポーツマン魂が燃えたぎっている。

そんな夫を横目で見て「私はどう過ごそうかなぁ…」と悩んでるくせに、「あつまれどうぶつの森」で島をクリエイトすることばかり頑張っていた。

夫婦の活動意欲が反比例していって、3ヶ月。ついに夫に怒られた。「お前、いい加減にしろ」と。その頃の夫はと言うと、ポータブルバッテリーに特化したブログを作りあげ、いろんな企業と新しい仕事を開拓していっていた。「恵利はこの期間、一体何をしていたの?」と聞かれて、グゥの根も出なかった。

 

だって、最低限やらなきゃいけない既存の仕事以外は、どうぶつの森しかやってなかったから…。

 

やる気が出なくて、なんて、言い訳にならない。

2人ともフリーランスで働いている夫婦なので、自分たちで仕事を作っていかないと収入は減ってしまう。

夫は夫婦のために頑張っていたのに、私は頑張れなかった。

夫婦でチャレンジしていきたいことがもっとあるから、そのためにもっと収入を増やそう!って2人で約束したはずだったのに…。

これ以上のやる気が出なくて、なんて、言い訳にならない。

 

しかも。自分の中で、もともとは海外でアドレスホッパーをしていたくらい海外が好きだったので、本当は海外で働くことを視野に入れたいという思いがある。だから、どちらかというとバンライフで田舎暮らしをするよりも都会のホテルやシェアハウスを転々とする暮らしをして都会の人と関わることの方が慣れているので、独身時代の生活方法に戻りたくなってみたり、でも夫は海外に興味がなく、都会より田舎の方が好きなので、一緒に過ごすなら、夫の隣にいてもできる仕事を探すしかない、などさまざまな葛藤が芽生え始めてしまった。

またキャリアについても、現在している仕事からさらに幅を広げるにはどうしたらいいのか、足りていない部分は何なのか悩んだ。

 

そんな弱音を夫に吐き、「そうなんだ、可哀想だね」と慰めてもらったところで、解決しないのは分かっている。

あまりに頑張れない私を見た夫から 最終的に「こんな状態が続くんだったら、離婚も視野に入れるよ。一緒にいる意味がない。」とまで言われてしまった。まさか、自分が「コロナ離婚」になるかもしれないなんて…。

予想していなかったピンチが、突然、目の前にやってきた。以前の記事にも書いた通り、私から「離れたい」と言ったことはあったけど、今まで一度も夫の口から「離婚」というワードは出たことはなかった。

それなのに、そこまで私がダメな妻になっていたとは、と、現実を突きつけられた。

私たちが結婚したときに掲げたテーマは「子供を産まない代わりに、クリエイティブに生きる。」だった。

たしかに、クリエイティブに生きる私じゃなかったら、夫は私といる意味がない。

 

 一見キラキラして見える人でも、悩みに悩みぬいている日もある。

そんな夫婦のトラブルが起こる最中、緊急事態宣言が解除された。キャンセルになっていた地方取材の声がかかり、新しく購入予定のキャンピングカーを納車前に3週間限定でお借りできることになった。そして再び、夫婦旅生活がリスタートした(※取材先は三密を避けて、人が少ないオートキャンプ場で車中泊しています)。

Open Image Modal
筆者提供

私は水を得た魚のように、活動しはじめた。移り変わる風景と、最高の車。取材の仕事は、やっぱり楽しい。そしてまさかの、自粛中にあれだけしていた「どうぶつの森」に関する記事をメディアで執筆することにもなって今書いている(笑)。

好きでやっていたことがいつかちゃんと仕事になれば、私たちフリーランス夫婦にとって、過去の時間が成仏したかような晴れやかな気持ちだ。

 

いつか私がSNSで見た「キラキラしている人」のように、私も「キラキラして見えるよ」と友だちに言われた。

ただ、今回のことでわかったことがある。一見キラキラして見える人でも、悩みに悩みぬいて、枕がビショビショになるほど泣いている夜もあるということだ。しんどくなるたびに、わざわざ「今、しんどいです!」なんて表に出している暇はない。たぶん、みんなそうなんだろう。何もできないと思っている自分と戦いながら、どうにかスキル、経験、実績、そして自信を積み重ねて、今日まで辿り着いている。

表も裏も、キラキラした生き方ってあるんだろうか。たぶん、ない。だから、少しずつ、小さな自信を身に付けていくしかないのだろう。自分には何もない、じゃなくて、ないなら作っていくしかない。

 

そのために、自分がどんな武器を持っているのか、かき集めてみる。こんなの、役に立つかな…?と思うような、どんなに小さな武器でも、使えるものは全部使う。 SNSを見れば、自分よりすごい人なんて星の数ほどいるけど、自分が生まれてから今日この日まで全く同じ経験をした人なんていないから、きっと誰でも、自分にしかできないことは必ず見つかる。そう言い聞かせて、弱い自分に負けないように、クリエイティブに生きていきたいと思う。

 

(編集:榊原すずみ)