任天堂が出資する「株式会社ポケモン」は6月24日、「ポケモン」シリーズの新作は中国企業テンセントとの共同開発になると発表した。
ゲーム事業に強いテンセントの影響力で中国市場を開拓する狙いなどもあるとみられるが、中国のポケモンファンからは期待の声に混じってため息も漏れる。
■ゲームに強い中国企業
6月24日夜に発表された新作は「ポケモンユナイト」。ニンテンドースイッチやスマホでプレーでき、複数プレイヤーがネット上のフィールドで「ポケモン」を操って戦う。
テンセント傘下の企業が共同開発として加わる。テンセントは中国で10億人以上が利用するチャットアプリ「WeChat」などを手がけるが、ゲーム事業での収入も多く「王者栄耀」などの大ヒットタイトルを手がけている。
テンセントは中国本土における任天堂の正式な代理店。テンセントの影響力で中国市場を開拓するほか、発売に必要な当局の検閲を通過する狙いもあるとみられる。
■ポケモンが染められた?
中国のネット空間には多くのポケモンファンが存在する。本土で発売されてこなかった過去作品も、海外版を購入したり、海賊版で入手したりするファンがおり、アニメをきっかけに知った層もいるとみられる。
彼らにとって、事前予告されていた新作発表会は注目の的。思いがけぬテンセントとの共同開発に、「やっとポケモンを操作できるなんて!」「結構好みだ」などと、配信を待ちわびる投稿が寄せられた。
一方で、手の込んだゲーマーたちの評価は対照的だ。
どうやらその理由は、ポケモンに「テンセントらしさ」を持ち込んだことにあるようだ。発表された「ユナイト」は、MOBAと呼ばれる、複数プレイヤーが参加し相手チームの陣内に攻め入る形式。これはテンセントの「王者栄耀」や、買収した企業が開発した「リーグ・オブ・レジェンド」などのように、もともとテンセントが得意としていたジャンルだ。
日本らしい「ポケモン」を期待していたところに、テンセントお得意のスタイルのゲームが発表されたことで「ポケモン栄耀じゃないか」「ポケモンの世界観を抜け出しても、残るのは魂のない抜け殻だ」などと手厳しいコメントが相次いだとみられる。
他にも「ポケモンとこうした形式のゲームはマッチしない」「驚きを通り越して笑える。中国ゲーム界暗黒の1日かも」「ダイヤモンド・パール(過去のポケモン作品)のリメイクを出してくれ」など、中国のポケモンファンの嘆きは止まない。
中国人ゲームファンの男性はハフポスト日本版の取材に対し、この騒動について「テンセントのゲームは課金が必要なものが多く、快く思っていないユーザーもいます。今回はそのテンセントに、自分たちが好きなポケモンが汚されたように感じたのではないでしょうか」と話している。