NHK、不適切動画の削除で改めて謝罪。「人権や多様性に対する認識が甘かった」黒人の描き方が批判受け

人種差別に対する抗議活動「Black Lives Matter」が拡がる中、「誤ったステレオタイプを広めてしまう」などと批判を受けていた。

NHKの国際ニュース番組『これでわかった!世界のいま』の公式Twitterに掲載された動画に対し、「表現が不適切だ」などと批判が集まり謝罪した問題で、NHKは公式サイトに改めてお詫びを掲載した

批判を受けた黒人の描き方について「人権や多様性に対する認識が甘かったと思います。その結果、尊厳を傷つけてしまうことになりました」と謝罪した。

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NHK『これでわかった!世界のいま』
NHK公式サイト

▪︎批判が殺到した動画の内容は?

批判を受けたのは、同番組の放送からCGアニメの部分を切り出す形で、公式Twitterが6月7日に投稿した動画だ。番組のキャラクターの「Mr.シップ」が、白人と黒人の格差について説明するもので、「#抗議デモ」というハッシュタグが付きで投稿された。

白いタンクトップを身につけた筋肉質の黒人男性が、およそ1分20秒にわたり、「俺たち黒人と白人の貧富の格差があるんだ」などと話していたほか、動画では、白人の平均資産が黒人の7倍にのぼることや、新型コロナウイルスの影響で多くの黒人が失業したり、労働時間が削られたりしたことを挙げ「こんな怒りがあちこちで噴き出したんだ」と締めくくられた。

アメリカをはじめ世界各国では今、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警察官に首を抑え付けられ死亡したことをきっかけに、人種差別に対する抗議活動「Black Lives Matter」(黒人の命は大切だ、黒人の命を守れ)が行われているが、動画ではこの抗議活動については一切触れていなかった。

これに対し、「お金の問題か」「この動画こそ人種差別になる」「誤ったステレオタイプを広めてしまう」などといった批判が数多く寄せられたほか、アメリカの駐日米国臨時代理大使のジョセフ・M・ヤング氏は9日、「侮辱的で無神経な描かれ方をしています」などと自身の公式Twitterで批判した

批判を受けたNHKは9日、「掲載にあたっての配慮が欠け、不快な思いをされた方にお詫びいたします」と謝罪し、動画を削除していた

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NHK『これでわかった!世界のいま』の番組公式Twitter
NHK

お詫びを改めて掲載 「人権や多様性に対する認識が甘かった」

その後、NHKは同番組の公式サイトに報道局国際部長の名でお詫びを改めて掲載した。

お詫びでは、投稿動画に「不適切な内容が含まれていた」と認めた上で、「国内外の差別や偏見に苦しむ人たちを傷つけ、また、多くの方に不快な思いをさせてしまった」と謝罪。

投稿されたアニメ動画について、「黒人の屈強な男性などが経済への不満から暴れているかのように描かれ、黒人の人たちに対する誤った印象を与えるものでした」と釈明した上で、「放送当時、デモは、平和的なものがほとんどで、様々な人種の人たちが参加していましたが、アニメはこうした状況を反映していませんでした」とした。

その上で、「今回、私たちが問われたのは、人種差別の問題を取り上げるにあたって、人権や多様性に対する意識を持って制作したかという点でした」とし、編集責任者らが確認しながら制作したものの、「黒人の人たちの描き方については、人権や多様性に対する認識が甘かったと思います。その結果、尊厳を傷つけてしまうことになりました」と原因を分析した。

今後は取材・制作者への「研修」を改めて行うとした上で「人権に対する意識を徹底していきます。また、あらゆるテーマについて、多角的な視点を持って、いっそう丁寧に議論しながら取材・制作にあたってまいります」とした。