ローソンの竹増貞信社長が6月9日夜、ハフポストのライブ番組「ハフライブ」に出演。賛否両論が起きていた同社PB(プライベートブランド)商品の新しいパッケージデザインについて、「お店で選びにくかったり探しにくかったり、色々なご不便やお手数をおかけしてしまっている」とコメントした。
「お客さんのニーズや価値観に寄り添いながらお客さんとつくっていくのがPBだ」として、「NATTO」などのローマ字で書かれ、分かりにくいとされていた「納豆」や「豆腐」を始めとした一部商品のパッケージを早くても7月には変更する方針を明らかにした。
「意見を正面から受けて、PBを作り上げていきたい」
ローソンは2020年の春以降、紙パックの飲み物や惣菜、お菓子、冷凍食品、生活雑貨など約680品目のパッケージデザインを一新。あえて派手な写真を避け、「生活の中に馴染んでいくデザイン」にこだわり、海外でも高い評価を受けるデザイナーオフィス「nendo」の佐藤オオキさんがデザインを担当した。1年前からの社長直轄のプロジェクトだった。
デザインは薄いベージュやグレーを基調としたシンプルなもので、SNSでは「可愛い」「オシャレ」など好意的な意見が寄せられる一方で、旧来のデザインと比べて商品名の表示が小さくなったことで、「わかりづらい」などの批判も起きていた。目が不自由な障害者にとっては「見づらくて不便なのではないか」という声も広がった。
三菱商事出身で、ローソン副社長から2016年に昇格した竹増氏。6月9日夜、ハフポスト日本版がTwitter上で配信しているライブ番組「ハフライブ」に出演し、反響は想像以上だったと語る。
「注目いただいていることに感謝を申し上げたいと思います」と述べ、批判があがっている点について、「お店で選びにくかったり探しにくかったり、色々なご不便やお手数をおかけしてしまっている。そのあたりは真摯に反省し、次に活かさなくてはいけないと思っています」とコメントした。
さらに、竹増氏は「意見を真摯に正面から受けて、そうした意見とともにPBを作り上げていきたい」とした。竹増氏によると、この間も店舗に直接足を運び、高齢者ら様々なお客さんの話を聞いた。さらに店舗のスタッフやネットの声などの意見もふまえ、デザインを改良していくという。
竹増氏は番組に出る以前から、ネットだけでなく、様々な意見を聞きながらプライベートブランドの変更は検討していたといい、「(NATTOとローマ字でパッケージに大きく書かれた)『納豆』、これはちょっとわかりにくいですよね。豆腐も(TOFUなどと)ローマ字で書いている、マーガリンもスプレッド(という表記)。こういったものはお声をきいても、(パッケージを見ても商品が)わからないということで、すでに着手している。来月にも新しいパッケージでお届けしていく。(デザインで)足りなかったところがあるだろうし、見直ししていくべきところは見直ししていくべきだと思います」と話した。
ユニバーサルデザインにも注目
番組で共演した、Retail Futuristの最所あさみさんらが提起したのは「ユニバーサルデザイン」に対する姿勢だ。
ユニバーサルデザインとは、「新しいバリアが生じないよう、できるだけ多くの人にとっても利用しやすいよう、あらかじめデザインする」(内閣府サイトなどより)ことを意味し、障害を持つ人や高齢者を含め、老若男女、国籍などを問わず、できるだけ「多くの人」にとって使いやすい製品やサービスを目指す姿勢だ。視覚障害者や高齢者にとって使いやすい商品は、さらに多くの人にとっても手に取りやすくなり、大量生産ではない「幅広いニーズ」に対応できるとして、近年重視されている。
竹増氏は「インフラとして、公共性のあるコンビニとして、ユニバーサルデザイン(UD)の観点から疑問を提示されれば、解決していくのは大前提だ」と語った。
さらに、今回のパッケージデザインでは、本格的に中国語、韓国語、英語の表記も導入したが、多様な国籍や文化への対応も今後より求められる。
竹増氏やローソン広報によると、新しいプライベートブランドの売り上げは他の商品と比べても好調だという。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり消費」の活性化によって、コンビニ業界では、これまで以上に食品などが売れていることもあり、「パッケージ変更が売り上げに直接繋がっているかは、まだ分からない」としている。
コンビニが社会の「インフラ」に
コンビニチェーンの新しいパッケージがここまで大きな話題となったのは、コンビニが社会の「インフラ」となっていることが大きい。「身近」である分、変更は目につく。
生活必需品を普段からそろえる人が少なくなく、震災や災害があれば生活物資を手に入れる「ライフライン」となる。今回の新型コロナの感染拡大においても、コンビニは、外食や遠出ができない在宅勤務中の働き手にとって、冷凍食品を買ったり、印刷機などオフィス機器を使ったりする場となった。さらに業界大手のセブンーイレブンは6月16日から、三井住友海上あいおい生命保険の「ガン保険」の取り扱いを全国2万店で始めるなど、従来の小売店の枠を大きく超える「多機能化」が目立つ。
竹増氏はコンビニの今後のあり方について、「昭和に生まれたローソンは、平成の間に標準化・平準化することで全国に店舗を展開して成長してきたが、同じモノ、同じ形、同じサービスで成長する時代はもう終わりだと考えている」と述べた。全国チェーンとして共通の品質は保ちつつ、地域や客層の特性によって、店ごとに個性を出していく考えを打ち出した。
たとえばスマートフォンにダウンロードしたアプリをかざせば入店でき、レジを通さなくても決済ができる無人店舗「ローソンゴー」や、高齢者が多い地域で介護相談ができる店舗などの実例を挙げ、「地域化というよりは、”個店化”に行き着くようなことをどんどんやっていきたい」と話した。
「ローソンゴー」は東京オリンピック・パラリンピックを機にお客さんが実際に使えるお店のオープンを目指そうとしていたが、新型コロナの影響で延期している。実現されれば、店員はレジ打ちなどの事務的な業務ではなく、店内を歩き回って「ひとり一人のニーズにあった接客とホスピタリティ」により集中できるという。
竹増氏はコンビニエンスストアが目指すビジョンを問われ、「ここまで公共性、インフラだと言って頂いている。皆さんに寄り添う形で成長し、チャレンジも続けていきたい」と締めくくった。
日本フランチャイズチェーン協会によると、2019年末の時点でコンビニの店舗は前年より0.2%少ない5万5620店だった。1970年代以降、店舗数は増え続け、特定の地域をねらって次々と大量出店する「ドミナント戦略」がとられた。
その結果、コンビニ各社の間で客やスタッフの奪い合いがおこり、24時間営業による過剰労働の問題もクローズアップされた。「(コンビニは)飽和している」(ファミリーマートの沢田貴司社長)という声もあがるが、地域に合った新しいビジネスやサービスを展開すれば、客単価や客数が伸びる可能性があるともいえる。セブン、ファミマ、ローソンなど大手を中心に「脱大量出店型」の次の一手が注目されている。
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