中国政府は6月7日、新型コロナウイルスに対する政府見解をまとめた白書を公表した。白書では中国もウイルスの被害に遭ったとの立場を改めて強調し、「いかなる損害賠償も受け付けない」と従来の主張を繰り返した。
■一党独裁を賛美
中国政府の新聞弁公室が公表したのは「新型コロナウイルスに対する中国の行動」と題された白書。感染が拡大した過程や中国政府のとった対応、それに海外からの指摘に対する立場などがまとめられている。
白書では、14億の国民が団結しウイルスと戦ったとし、医療従事者や都市封鎖を受けた湖北省・武漢市の住民らを讃える文言が並ぶ。一方で、「中国の人民がさらに深く認識したのは、中国共産党の指導がもっとも重要な保障で、頼れるということだ」と一党独裁の支配体制を正当化した。
■戦狼外交の発露?
また、国際社会の評価に対して敏感なことも読み取れる。
「中華民族は受けた恩を忘れず、力の限り国際社会に感染対策の協力をしてきた」「団結と協力がウイルスに勝つもっとも有力な武器だ」などと、中国が医療物資や医療従事者を派遣してきた実績を強調した。
一方で、中国が感染の拡大を隠蔽した結果、世界の対応が遅れたという指摘もある。
さらにウイルスの発生源をめぐっては、アメリカのトランプ大統領が、武漢の研究所が発祥とする証拠を「見た」と発言したほか、オーストラリアも独立した調査を求めるなど、中国に透明性のある情報公開を求める声が上がっている。
これに対し白書は「ウイルスは人類共通の敵」「ウイルスを利用して汚名を着せることや政治問題化することに反対」などとし、「中国は感染の被害者であり、世界に貢献してきた。公正に評価されるべきで批判されるいわれはない」と反論。さらに「責任転嫁をして自身の問題を隠そうとするのは、無責任かつ非道徳的で、中国はいかなる賠償請求も絶対に受け付けない」と牽制した。
白書は最後に「太陽の光は風雨の後に現れるもの。目標を一致させ、団結し前進すれば困難に打ち勝てるし、さらに繁栄した美しい世界を築けるはずだ」と結んでいる。
中国の一連の強気な外交姿勢は、中国で流行ったアクション映画から「戦狼外交」と呼ばれている。