新型コロナは「移動」の未来を変える?公共交通機関に頼らない生活は可能か。新型電動バイクに乗って確かめた

コロナ禍で公共交通機関の利用を前提にした従来の「移動」を見直し始めた人たちが注目する新たな「乗り物」がある。
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新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な産業の構造を一変させるほどの影響をもたらしている。モビリティ(Mobility)─すなわち、私たちの未来の「移動」にも、変化が訪れるのかもしれない。

スマートモビリティを展開する和歌山県和歌山市のglafitは5月28日、電動バイクの新商品「X-Scooter LOM」(クロススクーターロム)を発表し、クラウドファンディングの国内大手・Makuakeで先行販売を始めた。

利用者が同プロジェクトに共感し購入したことを示す応援金額は、6月上旬時点で目標の400万円を大きく上回る6500万円を記録。コロナ禍で公共交通機関の利用を前提にした従来の「移動」を見直し始めた人の心をしっかりと掴んでいる。

今回は筆者が実際に新型の電動バイクに試乗し、その可能性を探った。

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電動バイク「X-Scooter LOM」に試乗してみた
HARUKA OGASAWARA

■新型の電動バイク「X-Scooter LOM」とは?

 glafitが発売した新しい電動バイク「X-Scooter LOM」は、充電式のスクーターだ。ステップにまたがり、“⽴ち乗り”で運転する。

その見た目や形から「電動キックボード」に似ているとみられがちだが、そうではない。

「第一種原動機付⾃転⾞」にあたり、自動車の運転免許があれば、誰でも公道を走ることができる。

最高時速は25km/hほどで、1回の充電で40kmの走行が可能。電動式のため排気ガスを出すこともなく、環境にも優しい。現在の販売価格は10万5千円だ。

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折りたたんで、手持ちすることも可能なほどにコンパクトだ
glafit提供

glafitは2017年5月にも、自転車とバイクの要素を掛け合わせた折り畳み式電動バイクを開発し、Makuakeで販売。応援購入の総額は1億2800万円を超え、当時の支援販売額の日本記録を打ち立てた

約3年ぶりとなる新たな電動バイクは、構想から2年で完成に至ったという。

glafitの代表取締役社長・鳴海禎造さんに話を聞いた。

「元々コロナ以前から、個人に向けた、よりパーソナルな移動手段の開発を目指してきた」と鳴海さんはいう。“人々の生活にFITする新しい乗り物を届ける”というのが、企業として掲げるビジョンでもある。

販売に向けた準備を進める中、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は変わった。

「コロナ禍で公共交通機関の利用を避ける人が出てきた。海外では『電動キックボード』が流行り急速に普及していますが、プライベートでも仕事でも、短い距離の移動であればコンパクトな乗り物を選ぶシーンが今後は日本でも増えていく可能性がある。そこには、大きな期待を寄せています」と話す。

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glafit 株式会社の代表取締役社長・鳴海禎造さん
HARUKA OGASAWARA

■乗り心地は?筆者が実際に乗ってみた

販売が始まった新しい電動バイク「X-Scooter LOM」。乗り心地を確かめるため、運転操作のレクチャーを受け、筆者が実際に公道を走ってみた。

走行速度は「High:25km/h 以上」「Mid:約 25km/h 時」「Eco:約 10km/時」の3つの段階があるが、今回は安全を考慮し最も遅い速度レベルを選択。ヘルメットを着用した上で通勤途中をイメージし、リュックを背負いながら走った。

動画はこちら。(※今回は密な場所を避け、かつ交通量が少なく安全な場所・時間帯で走行の模様をリポートをしました。撮影日は、首都圏の緊急事態宣言が解除された後の5月27日)

スクーターの運転方法と同様に、ハンドルのアクセルグリップを握るだけで、勝手に進んでいく。ブレーキも自転車やスクーターと同じだ。

結論、ペダルを踏むことさえ要らないため、力感なく立っているだけでとても楽に移動が出来た。走行中は電気自動車のように音も静かで、騒音もない。

プライベートのちょっとした移動や、これまでは電車を利用していたビジネスシーンでの“一駅分の移動”などに特に適しているかもしれない。

公道を走れる移動手段にも関わらず、コンパクトに折り畳めるため、自宅などに収納できる点も新しい。“コロナ以後”のパーソナルな移動に可能性を感じた。

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glafit株式会社・代表取締役社長の鳴海禎造さん。バイクは折りたたんで手でも運べる
HARUKA OGASAWARA

■「公共交通機関に頼らない」という生活。日本での可能性は?

「X-Scooter LOM」のような、公共交通機関に頼らないパーソナルな移動手段を選ぶ人は、今後日本で増えていくのか。

海外では今、パーソナルな移動手段として電動キックボードのシェアリングサービスが人気だ。

アメリカのBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の調査データによると、世界での市場規模は2025年までに400億~500億ドルに上るとみられている。

電動キックボードがアメリカや欧州で急速に普及している背景には、「Last one mile」(ラストワンマイル)と称される0.5kmから4kmの移動に適したモビリティとして利用者の高い評価を得ていることがある。

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電動キックボードのシェアリングの世界市場規模は2025年には400億~500億ドルにのぼると見込まれている
ボストン・コンサルティング・グループ

筆者が2019年9月にスイスの交通事情を取材した際にも、アメリカ発のシェアリングサービス『Lime』などの電動キックボードは、街のいたるところで目に留まった。

だが、とても快適で便利な一方、電動キックボードは近年事故も多発している。アメリカの調査では、2014年から2018年の間に、電動キックボードで事故で入院した人は約3300人に上った

こうしたことから急速な普及から一転、規制に乗り出す国も出てきている。

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アメリカ発の電動キックボードのシェアリング『Lime』はスイスでも人気だった
HARUKA OGASAWARA

電動キックボードは、日本では道路運送車両法における「原動機付き⾃転⾞」に当たるため、シェアリングサービスの実現はまだ実証実験の段階だ。

また、現在国内で乗られている電動キックボードの多くは保安基準を満たしていないなど違法なものが多いという現状もある。

glafitの鳴海さんは「だからこそ、電動キックボードを無理やり日本の法令に合わせることを目指すという道を歩むのではなく、代わりに電動キックボードのように気軽で、かつ基準を満たしているから安全して乗れる“新しいモビリティ”を生み出す道を選択しました。市販できる段階にならないと、モビリティのポジティブな変化は起こらないと思った」と話す。

その思いが「X-Scooter LOM」という、法律での走行可能な条件を満たした新たな電動バイクの形となった。

glafitは今後、当面はこの新たな電動バイクの普及を目指すという。

厚労省が打ち出した“コロナ以後”の「新たな生活様式」には、公共交通機関の利用への言及がある

私たちの「移動」の未来は、それらに頼らず、より快適かつパーソナルなものになっていくのかもしれない。

【「X-Scooter LOM」】の詳細は、こちら

なんとなく受け入れてきた日常の中のできごと。本当はモヤモヤ、イライラしている…ということはありませんか?「お盆にパートナーの実家に帰る?帰らない?」「満員電車に乗ってまで出社する必要って?」「東京に住み続ける意味あるのかな?」今日の小さな気づきから、新しい明日が生まれるはず。日頃思っていたことを「#Rethinkしよう」で声に出してみませんか。