アメリカのミネソタ州ミネアポリスで、警察官に膝で首を押さえつけられ黒人男性が死亡した事件を発端に、抗議デモが広がっている。亡くなったジョージ・フロイドさんは、どんな人物だったのか。
事件当時は新型コロナで職を失っていた
ジョージ・フロイドさんは、テキサス州ヒューストン出身。46歳だった。
ヒューストンではジャック・イェーツ高校に通い、アメリカンフットボールやバスケットボール選手として活躍したという。当時のクラスメイトはヒューストンでデモ行進に参加し、フロイドさんの死を悼んだ。
また、ヒューストンでは「Big Floyd(ビッグ・フロイド)」の名義でラッパーとして音楽活動もしており、DJ Screwの楽曲にも参加していたと報じられている。
BBCによると、フロイドさんは数年前にミネソタ州ミネアポリスに引っ越し、警備員として働いていた。事件当時は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で職を失っていたという。
事件後、フロイドさんの息子であるクインシー・メイソンさんと娘のコニーさんはデモに参加し、平和的な抗議をするよう訴えている。
ショーヴィン元警官と同じナイトクラブで勤務していたとの報道も
フロイトさんと、フロイトさんを路上に押さえつけて殺人罪で起訴されたデレク・ショーヴィン元警官は、同じナイトクラブで勤務していたとの報道もある。
CNNによると、ショーヴィン被告は非番警官として勤務していたという。ナイトクラブのオーナーは、「2人の間に面識があったかはわからない」と話している。
フロイドさんに何が起きたのか
事件が起きた5月25日、フロイドさんは、偽造した20ドル札を使った容疑で警察に拘束された。
現場となった食料雑貨店のCup Foodsはフロイドさんの行きつけの店だったという。NBCの取材に応じた店主は、フロイドさんが過去にトラブルを起こしたことは一度もないと話している。
店主によると、フロイドさんは男性1人、女性1人と来店。同行していた男性が会計時に20ドル札を使おうとしたが、店員は偽札を疑い、受け取るのを拒んだという。3人は店を立ち去ったが、およそ10分後に再度フロイドさんが来店。20ドルを使い、偽札を疑った従業員が警察に通報したという。
フロイドさんは拘束時、ショーヴィン被告に少なくとも約8分間にわたって首を押さえつけられ、身動きできない状態にされた。逮捕時に居合わせた人が撮影した動画には、フロイドさんが警官に何度も「動けない」「息ができない」と訴えている様子がうつっていた。
「窒息による殺人」
ミネアポリス警察は、容疑者はアルコールか薬の影響下にあり、警察に「身体的に抵抗」したと主張している。
また、ヘネピン郡ミネソタ州検視局の検視結果では、フロイドさんを押さえつけたショーヴィン被告による「外傷性窒息や絞殺の診断を裏付ける身体的所見は見つからなかった」と結論づけた。
一方で、フロイドさんの遺族の依頼で実施された検視では、結果に矛盾が生じている。
元ニューヨーク市の検視局長らは、フロイトさんの死因を「首と背中の圧迫で脳が血流不足になり、それによって引き起こされた窒息による殺人」と結論づけている。
検視を担当した医師は声明で、「(検視で確認されたもの)以外に、死の一因となるような健康上の問題は見つかりませんでした。警察は話せる状態であれば呼吸できると考えているようですが、それは間違いです」と指摘している。