「外国人に10万円渡すな」に分断の恐怖。 外国籍の人に支援情報届ける、ペルー出身「one visa」社長の思い。

JALやセブン&アイ・ホールディングスなどで働く外国人にも。支援金情報届けるポータルサイトが誕生した。
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日本で働く外国籍の人向けに、新型コロナウイルス感染症に関わる支援情報を届けるポータルサイト「#日本から国境をなくす」が5月18日、誕生した。

制作を手掛けるのは外国籍人材の採用をサポートする「one visa」など。同社の岡村アルベルト社長は「特別定額給付金の詳細が決まる前、ネット上では『外国人に10万円渡すな』という意見も出ていた。新型コロナで、僕たちの社会に分断が広がっていくという恐怖が濃くなった」と、サービスを始めた動機を語る。 

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取材にこたえる岡村アルベルト社長
Zoom画面より

 失業・不安…外国籍の人々の今

日本に住む在留外国人の数は282万人(2019年6月時点)。新型コロナの影響で休業する企業が相次ぎ、失業する外国籍の人々も日本人と同様に増えている。 

結局、10万円の特別定額給付金は外国籍の人も対象にはなった。一方で、給付金を含む支援の情報全般は十分に届いていないという問題も残されている。

「one visa」社は、外国籍の従業員を雇用したい日本の企業向けに、ビザ取得や生活環境全般にまつわるサポートを提供するのがメインの業務だ。 

外国籍の人からの相談を各国語で受ける同社の「コンシェルジュ」サービスを、顧客企業以外の一般の人にも解放したところ、「家賃を払ってくれる制度(住居確保給付金)があると聞いたが、必要な書類がよくわからない」「契約社員の期間が終わってしまった、年金はどうすればいい?」「勤務先のレストランが廃業しそうで5月で失業するかもしれない。ビザはどうすればいいか」など、多くの質問が寄せられているという。

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イメージ写真
Klaus Vedfelt via Getty Images

一方、不安を抱えているのは仕事を失った人だけではないともいう。

就業を継続できている人からも「病気になったらどうすればいい?」「人事部の人が役所での手続きに同行できず電話のみのサポートになった」「頼っていた人が忙しそうで頼みづらい」など、新型コロナの影響で、日本で働くためのセーフティネットから切り離されてしまい、不安を抱えている外国籍の人は多いという。

「外国籍の人々も日本で同じように働き、納税して社会に貢献している仲間。受けられる支援もあるのに、彼らに届かないのは残念だと思いました。私が事業を通して伝えたいのは、国籍は生まれた場所の違いでしかないということ。人と人とが同じ社会で生きている仲間だということ。その延長線上に今回のサイトもあります」。岡村さんはそう話している。

 

大勢の外国籍の人が働く企業に

サイトは同社とウェブサイト多言語化サービス「Wovn Technologies」の共同プロジェクト。これから、ジャパンショッピングツーリズム協会を通じてJALやセブン&アイ・ホールディングスなどの会員企業150社で働く外国籍の人々や、人材紹介会社「グローバルパワー」に登録する4万人らに案内するという。今後も協力企業を募ったり、口コミなどで失業中の人々にも届けたいとしている。

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「#日本から国境をなくす」サイトより

サイトでは英語・中国語・韓国語・やさしい日本語の4つの表記で、新型コロナを疑う症状が出た場合の問い合わせ方法や、収入減少に対応して生活資金を無利子・無保証人で借りられる「緊急小口資金」の申請方法、10万円の給付金の受け取り方法などが紹介されている。

また、読んでもわからない場合には、同社の「コンシェルジュ」がチャットで問い合わせを受け付ける。岡村さんは「知り合いで日本語を読むのが難しい人がいたらぜひ紹介してほしい」としている。