新型コロナウイルス関連の倒産は、5月15日午前11時時点で149件となり、3月末の28件から5倍以上へと増えている。
帝国データバンク東京支社情報部の赤間裕弥部長が5月15日、日本記者クラブで会見をし、明らかにした。
会見は、新型コロナウイルス感染拡大の企業活動への影響について説明するもので、テレビ会議システムを使用しオンラインで行われた。
赤間部長の説明によると、新型コロナウイルス関連の倒産は2月末で2件、3月末では28件だったが、4月末には123件まで増え、最新の5月15日時点では149件となった。
都道府県別の数字(5月13日午前11時時点)は、東京都31件、北海道14件、大阪府12件の順に多い。
愛知に「着目すべき」
なお、大都市圏の中では愛知が4件に留まっていることについて、赤間部長は「少ないのはなぜかということも、今後行うべき方策・対策の一つのヒントになる」と言及した。
大手自動車メーカーを念頭に置いた自身の分析として、「製造業は愛知県のお家芸。これまで若干少しマイナスに捉えられていた『系列』という考え方が、今回非常に功を奏したのではないか。『従業員を守る』にプラスして、今こそ共存共栄といったところで、下請けさんおよび関連する仕入れ先さんに関しても『頑張ろうよ』という『系列』の考え方」が愛知県の状況に影響している可能性があるとして、「着目すべきと考えます」と指摘した。
業界別の動向は
業界別では、下記の順番で倒産件数が多く、この4業種で90パーセントを占めるという。
・サービス業 53件(うち「ホテル・旅館」34件)
・小売業 41件(うち「飲食店」17件、「アパレル・雑貨小売店」14件)
・卸売業 20件(うち「食品卸」6件)
・製造業14件(うち「食品製造」8件)
負債額が多い倒産企業の中には、リゾートホテル事業、アミューズメント施設運営、雑貨小売、パチンコホール経営などが含まれている。
個別の事情としては、下記の事象などが経営状態に影響を及ぼした。
・イベント自粛
・プロスポーツの開幕延期
・得意先の海外工場の操業停止
・仕入れ先が、従業員の新型コロナ感染により生産活動を一時停止
・取引先である小中学校の休校
景気動向指数の落下幅は過去最大
4月の景気動向指数(DI)の落下幅はリーマン・ショックや東日本大震災を上回り、過去最大となっている。赤間部長は「見通しが立たないという状況です。多くの施策が実行に移されておりますが、今後この景況感の歯止め、どこで右肩上がりになるか、あるいは水平になるのか非常に課題視される状況にあります」と話した。
また景気DIから分析すると、今後の倒産リスクが高くなる可能性がある業種として「旅館・ホテル」「飲食店」「娯楽サービス」「繊維・繊維製品・服飾品卸売」などを挙げた。
中小企業の事業継続のために
今後については、倒産に加え「廃業」も増加し、雇用情勢に大きな影響が出ることを予想した。
そして、中小企業の事業継続のために、下記の5つポイントを挙げた。
①各種支援策の活用
②金融機関へのリスケジュール要請
③従業員に対する心身・金銭面でのサポート・説明
④事務所・店舗維持のための大家との交渉が優先事項
⑤取引先の状況把握、自社の現状・意向の説明に注力すべき
赤間部長は、各種支援策の活用検討の際には、1社で考えるのではなく、感染防止に気をつけながらも複数社で一緒に考えてみてほしいと呼びかけた。