親が育てられない乳幼児を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市)に、中高生からの妊娠相談が増加している。4月は過去最多の75件に上った。同院は、「新型コロナの休校の影響で在宅の時間が増え、交際相手と性行為し、望まない妊娠をするケースが目立つ」と指摘している。
「親が家にいない間に交際相手と性行為をした。避妊できているか不安」
「検査薬で陽性反応が出た。でも彼が中絶を希望している」
「彼女の生理がこなくて、つわりの症状も出ているみたい。妊娠しているかも・・・」
休校が長引く中、同院には中高生たちから妊娠の不安を訴える声が全国から寄せられている。
同院は「こうのとりのゆりかご」を開設した2007年から、妊娠相談をフリーダイヤルとメールで24時間受け付けている。同院によると、中高生からの相談は全国の一斉休校が始まった3月から増加。4月には過去最多の75件に上り、前年比17件増という。
4月の全ての相談件数592件のうち、中高生の割合は12.7%。過去に同じくらいの割合を占めた年もあったが、例年4月は1桁台のことが多いという。
今回の75件は、病院側が中高生と特定できた場合のみ集計しているため、同院は「未成年者を含めると若年層はもっと多い」とみている。
新型コロナの感染者数がピーク時より落ち着き、学校を再開した自治体も出ている。一方で、都市部を中心に今後も休校が続く地域は多い。
相談対応に当たる蓮田真琴・新生児相談室長は、危機感を募らせる。
「これまでにも、たくさんの女子生徒が不安になって電話をかけてきました。誰にも話せず、『命を奪うことはできない』と中絶の選択もできずに臨月を迎え、やっと相談に来られた人もいます。どんな気持ちで妊娠期間を過ごしたのだろうと想像するといたたまれない。
傷つくのは女の子なのです。先のことを考えて行動してほしいし、男子生徒にも彼女のことを大事にしてもらいたい」
「大人に打ち明けることで、気持ちが楽になることもあります。保護者に自分から伝えられないのであれば、私たち病院スタッフが代わりに伝えることもできます。あなたにとって一番いい方法を、みんなで一緒に考えられる。困ったときはいつでも相談してほしい」と呼び掛けている。