日本でビジネスを始めたのは、19歳のときでした。
私はサッカー選手のマネジメント事業と、「サッカーのあるライフスタイルを創造する」をコンセプトに東京の千駄ヶ谷と表参道ヒルズ、大阪、名古屋、福岡のほかオンラインでアパレルショップを展開する株式会社バランススタイル代表取締役をしています。
バランススタイルで、インターネットもオンラインショップ事業を立ち上げた2010年は、日本でFacebookが流行り始めた頃でした。まだガラケーを使用していた人も多かったし、もちろん、YouTuberもいなかった。今のような多様な生き方や、新しい仕事、働き方は受け入れられにくい状況だったと思います。私がビジネスを始めた10年前は、19歳の女性が会社で事業を立ち上げるという概念自体が希薄だったのかもしれません。そして、私は今年30歳を迎えます。ビジネスを始めて10年経ちました。
自業自得な部分もありましたが…
精一杯、目一杯走ってきた10年でした。今は代表取締役という肩書きがあるけれど、仕事を始めた当初は人と名刺交換をするときも、ただの「バランススタイルの奥谷(旧姓)です」と自己紹介するだけでした。私は何者でもありませんでした。
若さゆえ、ビジネスシーンのマナーがなかったこともあったと思います。それに加えて、当時はまだ結婚前で、交際中の夫がビジネスパートナーであったことも大きく影響していたのでしょう、周囲に真剣味を疑われていたこともあったかもしれません。それは、ある意味で自業自得な部分もあったと、今振り返ると思います。
アメリカに留学していたこともあって、日本語がうまく出てこなかったり、言葉が出てきてもニュアンスが少し違ったりすることもあって、頭が悪いと思われたのだろうと思います。いわゆる日本の学歴では中卒なのに、英語が喋れることに対しての嫉妬も多少あったのかもしれませんが、これまでビジネスシーンでバカにされているように感じることが多かったです。
私の20代を支えてくれた言葉
日本人の多くは、初めて会う人に「何のお仕事をしてますか?」と聞くことが多くないですか? それが日本のビジネスカルチャーの一部とも言えるのかもしれませんが。
私がアメリカにいたころ、先生に言われたのか、誰に言われたのかは、はっきりを覚えていませんが、こんなことを言われたことがあります。
「初対面の人に、何の仕事をしているかを聞いてはいけない。なぜなら、相手のことをその職種の人として色眼鏡でみてしまうから」。
これはつまり、職業を聞いてしまうと、その人の本質が見えなくなる、ということです。
この言葉を私は、今でも大切にしています。
そして、その言葉は、私のこの20代を大きく支えてくれました。
でも、日本ではどうでしょう?
20代の前半は、とにかく年齢とかバックグラウンドを聞かれて、そこから会話がスタートすることが多かったです。
そもそも「この子と会話をすることに意味があるのか?」と話す前から判断されるような感覚もありました。(30代間直近の今は、年齢を聞いてくる人もいなくなりましたけどね!)
でも20代前半で海外取引を始めた時に、日本で感じていたような年齢、性別、バックグラウンドでは判断されないことに気づきました。
大切なのは、ビジネス上で信頼できる人間か。もちろん、どんな人間かは見られるけれど、そこに女だから、若いからは関係ない。やる気があるかどうかを見てくれていました。そして提案しているビジネスが面白いか、成立するかどうかで判断してくれていました。それが、日本との大きな違いでした。
私に対して、真っ二つに分かれる態度
ところが日本では、ビジネスにしても、友人関係においても、周囲の人の私に対する態度は真っ二つにわかれていました。
その1 眼中にない。なぜなら彼らのビジネスや友人関係において私はメリットがなく、付き合っても無意味だと判断する
その2 きちんと1人の人間として見てくれる。なぜなら、その人が年齢や性別に関係なく、人間として面白いか、魅力的かどうかを重視しているから
たとえばその1は…
・相手が女性だと上から喋り、男性だとしっかりと向き合うけれど、真摯に向き合おうとしない人
・自分に落ち度がない時は、女性の態度が気に入らないと物申し、自分に落ち度があった瞬間、女性に頼る人
その1のような態度をする人に会うと、私はただただ、人として見られたいと思っていました。一人の人間としてみてほしいと。だって、私は1人の人間ですから。
この世に、1人の人間でない人はいません。性別や年齢にかかわらず、1人の人間としてみられることは当たり前のこと。だから当時の私は、「年齢は若いかもしれないけど、魂年齢は高い」と周囲に言い放っていたと思います(笑)。
男性と年上は、いつも正しいのか?
女性が男性に何か言うと、男性はそれに対し「女性なのに」と言う。
男性が女性に何か言い、それに女性が答えたり、言い返したりすると、男性はどんなことにも「自分は男性だから」と言う。
女性は許されず、男性は当たり前とされることの多い、日本の今の世の中。
そんななかで、多くの女性たちは歯を食いしばって働いています。
そして私は、「年上はいつも正しい」という概念も好きではありません。
もちろん経験値では、先輩方には勝てないと思います。
だけど、経験が少ないからこそ、面白いアイデアや、新しいアイデアも生まれる可能性だってある。
単純に年上の人が偉いという方程式で物事を考えていては、今の日本は何も変わらないし、私はそんな社会は嫌です。今の日本で、それだけ若い人たたちの中から、多様なビジネスが生まれていることか…。それを、みなさん一度考えてみてください。
最近では、女性もビジネスで活躍しやすい世の中になってきているとは言え、まだまだ女性が置かれている状況は厳しい。「女だから」と実は心の底で思っている人はまだまだ多いのではないでしょうか。
なぜなら、女性が男性と同じ努力をしていたとしても、同じ評価はされないことはたくさんあるから。
信じて働く。信じて生きる。
でも、たとえ今は評価されなくても、いつかは評価される日が来る。自分自身で努力して身につけたバワーや知識、経験は、絶対に自分を裏切らない。
そう信じています。
悔しい思いをすることが多い女性だからこそ、奥底にある信念の強さや、忍耐力、辛抱強さを多いに発揮できると思います。
そう信じています。
私は、そう信じて。
今日も一生懸命、働きます。生きます。
(編集:榊原すずみ)